希望/要がみる世界
―いそがなければ.....っ
詩は、初等部方面を目指し、走っていた。
先ほど、式神を介して蜜柑が中等部生に追いかけられているのが見えた。
そこにはなぜかベアも一緒にいて.....
異様な感じだった。
すぐさまあたりの式神から情報を収集して、状況を把握する。
またあいつが姑息な手を使っていた。
考えなくてもわかることだった。
初校長が関わってることくらい。
何か大変なことが起こる前に、なんとかしなければ。
あいつの手の内で踊らされるわけにはいかない。
あいつの思い通りにはさせない。
けれど、このままじゃ間に合わないかもしれない。
まあ、なんでか知らないけどベアがいるから少しの間は大丈夫だと思うけど。
蜜柑、無事でいてくれ.....
「みんな大変だよっ
中等部の間で蜜柑ちゃんの〝盗みのアリス〟について変な噂が流れてて、
よく分かんないけど噂に踊らされた中等部生が蜜柑ちゃんを狙ってるんだ。
蜜柑ちゃん今、追われて行方がわかんなくなって......
助けに行かなきゃ....っ」
......蜜柑は、必死に中等部生から逃げていた。
今まで逃げ延びれたのは、誰でもない、ベアのおかげ。
ベアが追ってくる中等部生に、パンチなどをお見舞いしてくれた。
ベアは、蜜柑に盗みのアリスで自分に宿っている要のアリスをとってほしいらしいが、蜜柑にその気なんてあるわけない。
「ウチはアリス盗みなんてしーひんよ。
何で分かってくれへんの。
そんなことしたって要先輩がよろこばへんって、詩先輩もゆうてたやろ?
要先輩の悲しむ方向でばかり頑張ってどーすんのっ」
しかし何度言っても、ベアは蜜柑についてくるのだった。
「―みつけた!
みんな、ここにいるぞ!」
蜜柑は、はっとする。
逃げなければ!
すぐに蜜柑は立ち上がった。
しかし、ぐいっと手を掴まれる。
「つかまえ....」
―ドゴっ....
ベアだ。
蜜柑の腕をつかんだ中等部生に、ベアはキックをお見舞いしていた。
シュッ....と、何かがあたりの空気を裂いた。
「てめーら、何してんだよ」
聞き覚えのある声が、頭の上で聞こえた。
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