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希望/要がみる世界



部屋に戻った詩は、髪を乾かし服を着替えた。

それから薄暗い部屋で電気もつけずにただ窓の外をぼーっと眺めていた。

雨はまだ降り続いている。

晴れだったら、まだこの部屋も日が差して明るかっただろう。

でも、今の詩にはこのくらいがちょうどよかった。










今日、要の見舞いにいった。

忙しくて、あまり行ってなかったというのはきっと言い訳。

要のあんな姿は見たくなかった。

あの姿をみると、どうしても自分と重ねずにはいられない。

あの、一定の機械音の鳴り響く部屋。

白くて殺風景な部屋。

弱弱しい要の、青白い肌。

すべてが自分と重なった。

ここにくると、いつもそれを思い出してしまい、その幻を振り払うのに必死になる。

そんな自分が嫌だった。







しかも、今日きたのがいけなかった。

もっと前にくれば、少しでも要と話せただろう。

翼にも、要が俺に会いたがってることは何度も聞いた。

俺だって、要と話したいことはたくさんあった。

でも、どうしても行けずにいる自分がいた。

それでも、今日は行こう、行かなければ、と決心したのに。

今日に限って要の容態はいつもより悪く、面会も許されない状況だった。

病室で横たわる要をみたとき、やりきれなさでいっぱいになった。

どん、とガラスのしきりを叩いた。

俺は、要のために何ができるのだろう。

こればかりは、どうしたらいいかわからなかった。

自分のアリスを使っても、どうにもならないことだった。

でも、ベアのしてることは違うと言える。

あんなことして、要が悲しむだけだ。

じゃあ、どうすればいいのか。

それがわかれば何も悩む事なんかない。








「要....」

ガラスのしきりで、聞こえるはずないが、呼びかけるように囁いた。

いつか、俺もこんなふうになるのか?

それが、怖かった。

体が震えた。

死んでしまえば、守りたいものも守れなくなる。

それが1番怖かった。

まだ、自分のやりたいことの半分もできていない気がする。

でも、残された時間の中でそれをどれくらいできるかなんて、たかがしれてる。

自分には時間がない。





「くそっ.....」

悔しくて悔しくてたまらなかった。

結局、今日は弱弱しい要の横顔を見て病院を去った。






「要、また来る」

届かないけど、そう言って。











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