決意の刻印/蝕まれる身体
詩は、鳴海の家に向かっていた。
―ナルのやつ.....
ふぅ、と溜息をつきながら前を向くと、ちょうど岬が鳴海の家に勢いよく入っていくところだった。
よほど急いでいたのか岬はこちらに気づいていなかった。
というより、あの様子だと自分と同じ理由できたのだろう。
先客に入られてしまったので、しばらく家の前で待っていることにした。
―バタン
しばらくして、背後で扉が開いて中から人が出てきたのがわかる。
「あっ岬せんせー、
お話終わりましたか?」
詩はくるりと振り向き、何気ない様子で言う。
「東雲....」
岬は驚いてる様子。
「...お前も、ナルに?」
「そうだけど.....
きっと言いたいことは先に全部言われちゃったかな」
少し笑いながら、詩は言う。
「まあでも、きくようなやつじゃないよね」
「....ああ、そうだったな。
でも、言わなきゃ気が済まなかった」
岬はため息交じりに答えた。
「俺もまだ何言うか決めてないけど、きっと感情的になっちゃうんだろうな」
詩は苦笑いする。
「東雲、あとは頼む」
岬はなんとも言えない表情で言い、その場を去った。
詩はその後姿を見送り、中へと入っていった。
―岬先生の気持ちは、きっとナルにちゃんと届いてる。
ナルを心配していたのが自分だけじゃないことも、なんだかほっとした。
ナルは自分と同じ決意をもっているからこそ、その考えていることが手に取るようにわかってしまう。
気持ちがわかるからこそ、お互いをとめることはできないしそれがまたお互いイラつくのだろう。
でも岬先生は、冷静にナルを見てくれている。
俺なんかよりもちゃんと、ブレーキを踏んでくれるはずだ。
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