逆境
蜜柑をはじめとした皆は、控え所にいた。
「それにしても、思った以上に噂信じる奴多いのな....」
殿がふぅ、と溜息をつく。
先ほど心読みアンテナで、事故の〝蜜柑による自演説〟がすごい勢いで広がっていることがわかったのだ。
「まあ、今回はみんな応援合戦勝ちに行ってたし、事故のせいで無効試合になった事への不満とか、
ちょっと前の体育祭練習中の騒動が結構悪い方に尾をひいてるんだろうな。
あと、詩が危力系総代表として蜜柑を監視することになった事実も結構痛いな」
殿は今の状況をさらっと口にする。
「噂を信じる奴の大半が蜜柑をよく知らない奴らで、
対して詩はこの学園の影響力大きい奴だから仕方ねーけど、
メインの騎馬戦を前にして、この士気だだ下がり状態は正直キツイな」
「みんな....ごめんなさい」
蜜柑は俯きがちに謝る。
「バッカ、何もお前のせいじゃねーって」
翼は殿を黙らせながら言う。
「そうだよ、お前のせいじゃねーよ」
すっといつのまにかいたのは、詩。
「詩....」
殿や、秀一、昴、##NAME1##をはじめとした皆は驚いた顔をする。
「ごめんな、
俺は蜜柑が何もしてないことくらいわかってる。
もちろん、監視なんて名前ばかりのものだよ」
皆がぱっと顔をあげる。
「詩先輩.....」
蜜柑は、先ほどの目を合わせようとしない詩が気になっていたから、安心したように呟く。
「俺も蜜柑も、今までどおりに競技を楽しむだけ。
第一監視なんてめんどくさいこと、俺がするわけないじゃん?」
ははっと詩は笑い飛ばし、皆も詩の性格はそうだったと思い直し笑う。
「そうだったな、お前は総代表の仕事という仕事のほとんどをすっぽかしてたな」
極めつけは、昴がメガネをあげながら言ったこの言葉だった。
詩は「そこは言うなよー」と罰が悪そうにいうが、また皆の中に笑いが起きていた。
蜜柑も笑顔だった。
その後の蛍の心配にも、そんな心配を吹き飛ばすくらいに笑っていた。
##NAME1##はそっと思う。
―蜜柑ちゃんは、詩に似てる。
何があっても、どんな苦しいことや辛いことがあっても、それを笑顔に変えて、周りをも笑顔にする。
元気付けようと思っても、逆にこちらが元気付けられる。
だけど、そんな人をみると心配になる。
何かひとりで抱え込んでるんじゃないか....って。
詩、また何かひとつ背負うものが増えたような、そんな顔をしてる。
隠そうとしてもわかる。
詩の力になりたい。
そんなに私は、足手まといなの?
##NAME1##は、そんな思いで詩を見つめるのだった。
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