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障害物競走



「蜜柑、そんなに落ち込むな」

ぽんっと詩は蜜柑の背中を押す。

「へ」

ぼーっとしていたところに話しかけられたので、つい間抜けな声をだしてしまう。

「お前が何か抱えてんの、話せない事情があんなら今は話せなくともさ、

今日はややこしいこと忘れて楽しもうぜ」

詩はいつものようにニカっと笑う。

先ほど、棗と少しいざこざがあって落ち込み気味だった蜜柑。

だけど、詩の言葉と笑顔、それと翼のことも思い出して蜜柑は何かすっきりした様子。

「紅はみんな仲間だし、味方だ!

ほら、お前もいつもの調子に戻れよ」

「....せやな、ありがとう、詩先輩!」

蜜柑はもう、いつもの笑顔に戻っていた。

そして、皆のもとへ駆け出していった。







詩にはそれが少し、眩しく感じるのだった。










「―詩、今回の体育祭、白にきてよ。

私、白なの」

月の部屋に呼ばれ、何かと思えば体育祭の話題。

「.....」

詩は俯く。

「どーなの?」

月は早く返事をと、せかす。

「すいません、月先輩。

俺、今年も紅にいきます」

「言うと思ったわ」

はぁ、と溜息をつく月。

「日向棗も白よ?」

それは知っていた。

けど.....

「今回だけは、すいません」

「そう、別にいいけど。

でも私は待たないわよ。

あなたの力がなくても私はやることをやるわ」

月は意味ありげな言葉を発する。

「あの娘が私のアドバイスを無視するようなことがあれば.....」

詩は奥歯を噛みしめる。

「それは詩、あんたも同じ。

この間言ったこと、よーく覚えておくことね。

私がせっかく教えてあげたんだから」

「はい....」














―今日くらい、今日くらい皆と一緒に思いっきり笑いたい。


今日が終われば、


この体育祭が、終われば......









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