準備運動
「ちょっとしたアドバイスをしただけよ」
月は貼り付けたような笑みを浮かべる。
「蜜柑に何を言ったんですか?!」
すかさず詩が問う。
「.....らない」
「気に入らない!
あんたが好かれている事も、それ以上にあの女の子供がみんなに好かれてチヤホヤされていることも!」
月の形相が変わる。
「あなたも覚えておくことね。
〝だまること〟と〝でしゃばらないこと〟!」
キッと、月は詩を睨みつける。
寒気がした。
―この人は、本気だ......
過去のことへ異様な執着もみえた。
「あなたも校長に言われた事だけをただしていればいい。
それが一番利口よ」
それだけ言って、月は詩より先に行ってしまった。
「おーい
蛍ねーさーん
棗にルカぴょん~
何急いでんだー?」
そう呼びかけられ、3人は一旦とまる。
「カゲ...」
「ハゲ....」
「まげ....」
「えっと....いつのまに俺の呼び名、語尾に〝ゲ〟がつくルールになったのかな」
少し沈み込む翼だった。
―後輩にナメられる俺って......
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