準備運動
皆の視線が詩へと集まる。
小泉月の口の端が不気味につりあがる。
そして、詩に向ける目は否定はさせないと言った威圧感。
もちろんそれは、対峙している詩にしかわからない。
「....ああ、いいよ
大丈夫か?」
詩はそう言って、月に手をかす。
「ナル、じゃあ行ってくる」
「うん」
ナルが頷くと、皆の視線が集まる中、詩は月と並んで蜜柑に背を向けるのだった。
これには、皆も驚く。
「詩先輩が小泉さんについているってことは、やっぱり蜜柑ちゃんが悪いの?」
「小泉さんと詩先輩って今日が始めてだよね?」
「なんで小泉さん、詩先輩に頼んだんだろ」
「詩先輩も断らなかったし...」
そんな声を背に聞きながら、詩は何も言わず月を連れてその場を離れるのだった。
そんなやり取りの中、蜜柑は風紀隊に連れて行かれた。
「驚いたわね、詩。
あなたがあんなに皆に好かれているなんて」
2人きりになったところで、月の態度が様変わりする。
「私がいた頃は少なくとも、好かれるようなタイプじゃないと思ってたわ」
皮肉っぽく月は続ける。
「私と同じだと思ってたのに、少し残念」
月は初等部の子達に向けていた目とはまるで違う、冷め切った目を向ける。
「ま、あなたが味方だとやりやすいってことはわかったわ。
そこらへんは良かったというべきね」
「......蜜柑に何をしたんですか」
詩は静かに言う。
「フッ....言うと思った.....聞きたい?」
月は意味ありげな笑みを浮かべる。
詩は、無言の肯定を示す。
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