準備運動
「―この騒動をおこしたのはお前かと聞いている」
神野がそう問いただしているのは、蜜柑。
蜜柑がクラスの念力系の子をそそのかし、騒動をおこしてそれに乗じて小泉月にいじめをはたらいたと、疑われているのだ。
そんなの、でたらめに決まっている。
第一に、月が体育倉庫に連れ込まれたのではなく、蜜柑が体育倉庫に連れ込まれたのである。
詩はそれをちゃんと見ていた。
しかし、
「―詩、君が私に反抗しても何もいいことはない。
安藤翼を、特力に戻したいんだろう?」
罰則終わりの詩に久遠寺は囁いた。
「君はこれまで通り私のそばにいて、これまで通り言う事をきいていればいい。
君の働き次第で、望んでいることが叶うのだからね」
「詩、今回君にやってもらうことは簡単なこと。
月の援護だ.......」
詩は、珍しく蜜柑を助けるか迷っていた。
そうしているうちに、話はどんどん進んでいく。
もちろん蜜柑は否定すると思われたが、途中で弁解も途切れる。
一瞬だが、蜜柑が視界に捉えたのは小泉月。
蜜柑は黙り込む。
明らかに様子がおかしい。
―倉庫で、何があった?
そう思ったとき、神野の声が響く。
「佐倉蜜柑を風紀隊へ引き渡せ」
皆、はっとする。
「何も答えようとしないのがこいつの答えだろう」
神野はそう、一言いう。
「まてよ....それは」
それはまずいと、詩が初めて反論しようとしたときだった。
「詩先輩、保健室まで付き添ってくれませんか?」
目の前には、明らかに演技だと分かる小泉月_________
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