銃口の先/望まぬ再会
ブーッブーッ.....
学園本部内に、けたたましく緊急ブザーが響き渡った。
『全教員、全本部職員に緊急連絡。たった今、学園内に侵入者2名の情報あり_____』
詩はすっと立ち上がる。
『共にアリス。うち1名は例の女性である模様。進入経路は一切不明。
現在護送車付近に逃走中とのことから、Zのメンバーの可能性大』
―間違いない.....
今回のアリス紛失事件を、アリスが起こしたとするならば、それを可能とするのは、俺が知っている限り1人しかいない。
「うまく、やらねーとな」
そう、言い聞かせるように呟いた。
同行者のテレポートによって、ものの数秒で護送車付近に到着した。
そしてそこはすでに、学園の中とは思えないくらい戦場と化していた。
あちこちで銃声が響き、爆音が鳴り響く。
ところどころに見える、流血した学園側の人たち。
その喧噪を縫って、詩の目は、ある一点をとらえていた。
―見つけた.....
変わってないように見えるのは、ここが学園の中だからだろうか.....
まさかこんな形で再会するなんて、誰が考えただろうか。
「詩、早く加勢してくれ!
なんとしてでも、逃がすな!!」
爆音の間をぬって、大きな声が響いた。
そのとき、
―ヒュッ.....
ドゴンッ
近くの護送車が、爆発炎上した。
反射的に低く身をかがめ、式神たちで壁をつくったおかげで、その爆発には巻き込まれずにすんだ。
そして今の大量の式神で、あちらも詩の存在を認識したようだ。
―久しぶりの再会なのにこんなの、全然嬉しくない。
しかし感傷にひたっている暇などない。
詩は動く。
自分でもびっくりするくらいには、頭が冷静だった。
立ち上がった詩の、体全体から白い竜巻が起こる。
よく見れば、それは式神の大群。
式神たちはものすごいスピードで詩のまわりをまわる。
近づいて皮膚に触れれば、一瞬にして引き裂かれるであろうスピード。
近くにいたアリス制圧部隊の人たちでさえも、その勢いにひるんでいるのがわかった。
同じ仲間でさえも距離をとられる、化け物の力。
そんな式神たちに合図をおくる。
一瞬で、式神たちはスピードをおとすことなく、一点を目指した。
侵入者2名と、容疑者のもとへ。
皮肉にも、相手の結界のおかげでアリスが使いやすく、コントロールがしやすい。
なぜ...
こんなことをしなければならないのだろう...
俺は、こんなことのために強くなったんじゃない...
あなたたちに、このアリスは向けたくなかったよ。
.