脅し/初校長のもと
「離せ!」
いきなり、詩は大きな声を出す。
その口調で誰もがわかる。
詩は、怒っている。
迫力に押され、2人の男の、詩を抑えていた力がゆるむ。
その隙に詩はするりとそれを抜け、足を引きずりながら久遠寺のもとへ向かう。
他の黒スーツの男達が詩を取り押さえようとするが、詩のまわりに式神が舞う。
男達はなかなか近づけない。
「詩、なんのつもりだ?」
険しい表情で久遠寺は言う。
それでも詩は歩みをとめない。
「八雲、ルイ、颯。詩をとめろ」
冷たく久遠寺は言う。
しかし3人とも、動かない。
動けるはずがなかった。
「いつか絶対、お前は俺の手で.....っ」
詩の目は、本気だった。
皆、寒気がしただろう。
いつもの詩からは想像できないような表情と、殺気。
―ぶわっ
―ドサッ
急に詩が倒れる。
「ごくろう、鳴海先生」
久遠寺はそう、鳴海に視線を向ける。
鳴海がアリスを使ったのだった。
「つれていけ」
そう指示をすると詩は部屋から運び出された。
変な緊張感がまた、部屋を包み込む。
「さて、君も少しは話す気になっただろう。
心配しなくても、君に詩のような仕打ちはしない。
しかし、君に直接害が及ばなくても.......わかっているね?」
詩が久遠寺を毛嫌いする理由は今ので十分わかった。
人の弱みにつけこみ、自分の思い通りにあやつろうとするところだ。
殿は奥歯を噛み締めた。
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