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銃口の先/望まぬ再会



「まさか、また学園から紛失者が出るとはね」

はぁっと息を漏らす詩。

その少し後ろを歩くのは、学園総代表、櫻野秀一と、副代表の今井昴。

3人は、本部の廊下を歩いていた。






「情報が早いね」

櫻野が、少し呆れ気味に言う。

「まぁ、これくらいのことなら自然と耳に入ってくるよ」

詩は得意げにはにかむ。

「これから2人が、高校長のところにいくこともね」




「なぜそれを...」

昴の驚きと険しさが入り混じったような顔。



「そんな顔すんなって」

前を歩くのに、2人の表情を察したらしい詩。

「知ってるの俺だけだから。安心して」

詩はこんな時でもいつもと変わりなく、緊張感のない表情。





「詩....お前どこまで.....」

探るように見つめる櫻野の目。

“直感”のアリスを使ってるのだろうか。





「大丈夫だよ。

俺は俺で、うまくやるから」

答えになっていないその言葉には煮え切らない。



「とりあえず、“あとは”任せてほしい」




困ったような櫻野の顔。

戸惑う、昴の顔。




何も、言えなかった____




僕らが声を大にして、何にもとらわれずに、言いたいことを言い合える日は、戻って来るのだろうか。




その笑顔を見るたびに、言い表せない安心感に包まれ言葉を呑み込んでしまう。

名ばかりの学園代表という肩書きが、うっとうしく感じる瞬間だ。




しかしこれも、僕が、僕たちが選んだ道なのだ。

詩と同じようには戦えないと気づいたときから、気づかされた時から...

僕らはあえて、君の隣を歩くことをやめたんだ......





「それじゃ、俺はここで」

詩は、2人とは違う方へ向かうらしく、曲がり角で手をふる。

「...ああ」

頷き、2人で詩の背中を見送った。

何度この背中をこうやって見送ってきただろうか。

同じ環境で歳を重ねたはずなのに、高等部になった今でも、詩は遠い存在のように感じる。

櫻野と昴は、なんとなく、お互いが同じようなことを思っていることはわかっていた。

お互い何か言うわけでもなく、向かう先へと急いだ。









指定された部屋で待つ詩____



その時は迫っていた。

じきに、〝護送車〟が学園へ来る時間だ。





今回のアリス紛失事件に関与していると思われる組織、〝Z〟の一員が捕まり、その取り調べが、学園で行われることとなったのだ。

そのため、詩は万が一のために本部待機を命じられていた。

そして詩は今日、その万が一が起こる事を知っている。






―12年、経つのかな。2人と会うのは.....






詩は懐かしさと、これから起こることへの不安が混ざる複雑な心情で窓の外を眺めた。




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