バレンタイン
「―なんだ、##NAME1##か.....驚かせんなよ」
詩はほっと、安堵の表情を浮かべ、また座り直す。
「ごめんごめん。こんなとこにいたんだね、詩」
##NAME1##もまさか会えるとは思っていなかったらしい。
「ああ。てかそれ...」
詩は##NAME1##の肩に式神がのっているのに気づく。
「あ、これ詩のアリス...。
じゃあ、詩も意識してなかったんだ。
毎年見つからないからあきらめてたけど、今回も詩を探してたらこの式神が案内してくれて。
ついて行ってみたら、詩がほんとにいた」
肩にのっている式神は##NAME1##を気に入っているらしく、ふわふわな茶色い髪の間を通り抜けたり、周りを飛び回ったりしていた。
「気に入ったっぽいね」
詩は笑う。
ある程度自由な指示を出している式神は、自我が芽生え始めているものもいる。
もちろん、詩の意に反したことはやらない。
「この子、かわいいね」
##NAME1##にそういわれるのは、なんだかくすぐったい感じがした。
「##NAME1##の結界が相性いいんだよ、きっと」
「そうだね、詩のアリスは結界と相性いいもんね」
「うん、でも##NAME1##の結界はなんだか落ち着くよ。
結界っていっても、人によって感じが違うんだよなあ」
「え、そうなの?」
##NAME1##は興味深そうにいう。
「うん、今までいろんな結界師と仕事したけど、みんな少しずつちがうんだ」
「そうなんだ」
「信じてないだろ」
「そんなことないって」
くすっと##NAME1##は笑った。
「はいこれ、今年は渡せた」
##NAME1##は、手に持っていた小さな包みを詩の前に差し出す。
「あっ!薬なんか入ってないから」
詩が疑ってると思ったのか、##NAME1##は慌てる。
「別に##NAME1##のこと疑ってねーから。
そうゆうタイプじゃねーだろ」
詩はハハっと笑い、ありがとうと、受け取った。
「なんか悪かったな。
毎年探されてるの知らなかったよ」
罰がわるそうに詩は言った。
「ううん、謝らないで。
詩のほうが大変だから無理もないよ。
今日、渡せたんだからいいの」
また、##NAME1##はふわりと笑う。
「いや、##NAME1##からのチョコだったらほしかった」
言って、少し後悔した。
絶対今、変なこと言ったよな、俺。
##NAME1##も少し間をおいた。
「もう、今さらそんなこと言わないで」
少し困ったように##NAME1##は笑った。
「これ食べていい?」
詩は今もらった包みを示す。
「朝から何も食ってねーんだよ。
腹減って死にそー」
詩は大袈裟にリアクションをとる。
##NAME1##はクスクス笑いながら、
「いいよ、食べて」
と答えた。
「うまい!
天才かよ!
バレンタインでまともなの貰ったの久しぶりすぎて泣けてくる」
詩はおいしそうに食べる。
「もう、大げさだよ。
ありがとう」
##NAME1##も嬉しそうに微笑む。
その横顔は、詩を愛しそうに見つめるのだった。
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