バレンタイン
―バレンタインデー当日
詩は早朝に寮を出て、隠れ場所を探していた。
今日はある意味、1年で最も恐ろしい日。
殿に見せてもらったブラックリストには、やはり一面を使って自分の名前と写真が載っていた。
殿には、「生還を祈る」との激励の言葉も貰った。
まったく勘弁して欲しい。
追跡は年々ヒドくなっていってるのだから。
仕方なくこの日は公に式神を使っている。
そうでもしないと、追っ手を振り切れない。
学園にいる全員が敵に見える日でもある。
詩は校舎からなるべく離れることにした______
―そして、多くの生徒が動き出す時間帯.......
詩は今のところ無事だった。
木によりかかり、式神を手で操り暇をつぶしていた。
暇だが追われるよりだったらまだマシだ。
そんなこと思っているときだった。
―ガサッ......
―っ!
かすかだが、何か音がした。
もう、来たのか?
思ったより早い。
1人に見つかればもう終わり。
学園内の情報網はあなどれない。
詩は静かに立ち、音をしたほうから後ずさりを始める。
「―詩」
それは聞き覚えのある声だった______
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