このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

アリス紛失事件/特力の教室



「そっか....蜜柑て棗のパートナー....」

ふいに考え込むように、殿が言った。

「てことは、お手つきかあ.....」

殿の残念そうな声が本気にもとれて、皆が白い目を向けているが、別段本人は気にしていない様子。

「あいつ手ぇ早そうだし、やられちゃってるよなー」

その言葉に殴りかかろうとするのは翼だ。

美咲は、蜜柑が汚れないようにと、避難させている。

そうやって大事にされている蜜柑をみるのは、なんだか微笑ましく、懐かしいような気がした詩だった。






蜜柑のほうは、先ほどの詩の言葉が気になっていた。

「―そういや棗ってば.....

あいつ、体だいじょうぶなの?」

「え....体?」

気の抜けた返事をする蜜柑。

「最近病院通いしてるってきいたからさー.....」

その詩の言葉に、蜜柑はどこか引っかかる。

「え.....ウチ何も知らん....」

―棗が病院通い......?

もしかして、また過労.....?





―命を縮めるアリス......





なぜか、要先輩の顔が浮かんできた。





―まさか、ね......棗に限ってなー....






そう、言い聞かせている自分がいた____







「そーいや殿先輩、詩先輩、〝アリス紛失事件〟の話何か知ってる?」

蜜柑は話題を変えようと話をふる。

この話題には皆、かなり興味があるようだ。

「ああそれ....俺もそのせいで急きょ仕事キャンセルさせられたんだよなー」

「同じく俺も」

殿の言葉に、詩も同調する。

「....中等部に紛失者が出たって噂は本当?」

この噂は、詩も耳にしていた。

けれど、翼たちがこんなに元気であれば、聞く必要などないと思っていた。

しかし___




のだっちが詩と殿だけに見えるように、口止めを示すジェスチャーをしている_____

それはつまり......



「.....んなわけねーじゃん」

殿は自分の言葉を取り繕う。

その途端、皆は安堵の表情に戻るのだった。






「じゃあこの事件、学園内は安全ってことか?」

翼がたずねる。

「んーまあ、俺も殿もこの件に関してはそこまで事情知ってるワケじゃねーからなー」

知ってる事は多少あれど、変な事を口走らないために言っておく。

その後、のだっちのウイルスの線は薄いという話を聞き流しながら、詩自身もこの〝アリス紛失事件〟について考えていた。





蜜柑が現れたこのタイミングで.....

胸騒ぎがして、一瞬にしてあの頃の記憶が走馬灯として駆け巡った。

向き合う時が、来たのかもしれない。

俺たちも、“あなた”も....




「まあ、事件が落ち着くまではしばらく学園にいるよ」

詩のその一言に、みんなの表情はゆるむのだった。







.
3/3ページ
スキ