何でも屋のおはなしまとめ
シャネルとデルフィーのおはなし1
(アス主要素あり)
柔らかく、暖かな日差しが何でも屋へと降り注ぐ午後。何でも屋に預けられているプクリポの少女・シャネルは二階の外に設置をされている来客用の椅子に座り、目の前の丸テーブルの上にと雑誌を広げていた。
プクリポの少女向けの衣類がずらりと並ぶ紙面を興味深そうに眺めるシャネルだったが、やがて下層より聞き慣れた少女の声を捉えた。両の丸い耳を小さく揺らし、シャネルは椅子から立ち上がると下層をそっと覗き込む。シャネルの予想通り、下層には何でも屋の店長であるフルーリが居た。フルーリはゆったりとした歩調で歩いていたが、程無くしてシャネルから背を向ける形で長椅子へと腰を下ろした。まるで誰かと話しているかの様な口調で朗らかな声を響かせているフルーリにシャネルは疑問を覚え、眉を潜めながらも顔を揺らす。そして捉えたのは――フルーリの膝に座る白い物体だった。
「まーた来てるよ……」
白い物体が何なのか。瞬時に悟ったシャネルは肩をすくめながら呟いた。白い物体とは白いドラキーへと化けたフルーリの恋人だ。ゼクレス魔導国の魔王・アスバル……彼は時折、いや頻繁に城を抜け出しては何でも屋へと顔を出していた。いつの間にかゼクレス魔導国と何でも屋が通じる道を魔法で創り出し、そこから行き来をしている……そうまでして何でも屋へとやってくる理由はフルーリに会う為だ。
「相変わらずフルーリちゃんの事が大好きだよねぇ」
傍から見ても分かる程、アスバルはフルーリの事を溺愛している。その愛は些か行き過ぎている事も感じるが、そんな彼からの愛をフルーリは受け入れ、幸せそうな笑みを浮かべる。フルーリが幸せならそれはそれで構わないとはシャネルは思うが、自身がフルーリの立場であったら……などと思わずにはいられない。
「あれ、おれちょこちゃん。こんな所に居たんですね」
不意に二階の扉が開かれ、少年の声がシャネルを呼ぶ。シャネルがその声に背後を振り返ると、立っていたのは何でも屋で働くエルフの少年・デルフィーだった。
「フィーくんじゃん、今日お仕事無かったっけ?」
「先程終わらせてきたところですよ。なので店長に報告をと思ったんですが……アスバルさん来てますよね?」
「うん。ほら、あそこに二人で居るよ。今日も二人の世界に入ってるから、しばらくは無理なんじゃない?」
「ですよねぇ。まぁ特に問題なく終わったので後回しでも良いか」
シャネルに促され、デルフィーは下層を覗き込むと苦笑いを浮かべる。紅と桃を混ぜた様な両の瞳にフルーリと、フルーリの膝の上で遠目でも分かる程に上機嫌な白いドラキーを映し出しながら。
「ここからでも分かる程に幸せオーラ全開ですよね」
「フィーくんもだいぶ空気が読める様になってきたよね。案外記憶を失う前は空気が読める男の子だったりして」
「う~ん、それはどうですかね?アパ先生のおかげかもしれませんよ。先生は僕に色々教えてくれてるので」
「アパくんを先生って言うのはフィーくんくらいだよ……」
今頃厨房でフルーリの為にと菓子作りに精を出しているプライベートコンシェルジュのプクリポを思い浮かべながらシャネルは呟く。悪い人ではないのだが少々癖のある青年、というのがシャネルの評価だ。
「フィーくん、今暇だよね?わたしの暇つぶしに付き合ってよ。どーせあの二人、しばらくあんな感じだよ」
再び椅子へと座り、シャネルは言う。そして小さな手で雑誌をとんとんと示すと、デルフィーは少し考えた後に頷いた。
「そうですね、せっかくのお誘いですし」
ちらり、と一瞬だけデルフィーはフルーリとアスバルへと視線を注いだが、やがてシャネルが座る椅子の向かいの椅子へと腰を下ろした。
素直な反応を示したデルフィーにシャネルは満足気な様子を浮かべると、彼にも見える様にと広げている雑誌の位置をずらす。そして二人は言葉を交わしながらも、雑誌へと目を通していくのだった。
(アス主要素あり)
柔らかく、暖かな日差しが何でも屋へと降り注ぐ午後。何でも屋に預けられているプクリポの少女・シャネルは二階の外に設置をされている来客用の椅子に座り、目の前の丸テーブルの上にと雑誌を広げていた。
プクリポの少女向けの衣類がずらりと並ぶ紙面を興味深そうに眺めるシャネルだったが、やがて下層より聞き慣れた少女の声を捉えた。両の丸い耳を小さく揺らし、シャネルは椅子から立ち上がると下層をそっと覗き込む。シャネルの予想通り、下層には何でも屋の店長であるフルーリが居た。フルーリはゆったりとした歩調で歩いていたが、程無くしてシャネルから背を向ける形で長椅子へと腰を下ろした。まるで誰かと話しているかの様な口調で朗らかな声を響かせているフルーリにシャネルは疑問を覚え、眉を潜めながらも顔を揺らす。そして捉えたのは――フルーリの膝に座る白い物体だった。
「まーた来てるよ……」
白い物体が何なのか。瞬時に悟ったシャネルは肩をすくめながら呟いた。白い物体とは白いドラキーへと化けたフルーリの恋人だ。ゼクレス魔導国の魔王・アスバル……彼は時折、いや頻繁に城を抜け出しては何でも屋へと顔を出していた。いつの間にかゼクレス魔導国と何でも屋が通じる道を魔法で創り出し、そこから行き来をしている……そうまでして何でも屋へとやってくる理由はフルーリに会う為だ。
「相変わらずフルーリちゃんの事が大好きだよねぇ」
傍から見ても分かる程、アスバルはフルーリの事を溺愛している。その愛は些か行き過ぎている事も感じるが、そんな彼からの愛をフルーリは受け入れ、幸せそうな笑みを浮かべる。フルーリが幸せならそれはそれで構わないとはシャネルは思うが、自身がフルーリの立場であったら……などと思わずにはいられない。
「あれ、おれちょこちゃん。こんな所に居たんですね」
不意に二階の扉が開かれ、少年の声がシャネルを呼ぶ。シャネルがその声に背後を振り返ると、立っていたのは何でも屋で働くエルフの少年・デルフィーだった。
「フィーくんじゃん、今日お仕事無かったっけ?」
「先程終わらせてきたところですよ。なので店長に報告をと思ったんですが……アスバルさん来てますよね?」
「うん。ほら、あそこに二人で居るよ。今日も二人の世界に入ってるから、しばらくは無理なんじゃない?」
「ですよねぇ。まぁ特に問題なく終わったので後回しでも良いか」
シャネルに促され、デルフィーは下層を覗き込むと苦笑いを浮かべる。紅と桃を混ぜた様な両の瞳にフルーリと、フルーリの膝の上で遠目でも分かる程に上機嫌な白いドラキーを映し出しながら。
「ここからでも分かる程に幸せオーラ全開ですよね」
「フィーくんもだいぶ空気が読める様になってきたよね。案外記憶を失う前は空気が読める男の子だったりして」
「う~ん、それはどうですかね?アパ先生のおかげかもしれませんよ。先生は僕に色々教えてくれてるので」
「アパくんを先生って言うのはフィーくんくらいだよ……」
今頃厨房でフルーリの為にと菓子作りに精を出しているプライベートコンシェルジュのプクリポを思い浮かべながらシャネルは呟く。悪い人ではないのだが少々癖のある青年、というのがシャネルの評価だ。
「フィーくん、今暇だよね?わたしの暇つぶしに付き合ってよ。どーせあの二人、しばらくあんな感じだよ」
再び椅子へと座り、シャネルは言う。そして小さな手で雑誌をとんとんと示すと、デルフィーは少し考えた後に頷いた。
「そうですね、せっかくのお誘いですし」
ちらり、と一瞬だけデルフィーはフルーリとアスバルへと視線を注いだが、やがてシャネルが座る椅子の向かいの椅子へと腰を下ろした。
素直な反応を示したデルフィーにシャネルは満足気な様子を浮かべると、彼にも見える様にと広げている雑誌の位置をずらす。そして二人は言葉を交わしながらも、雑誌へと目を通していくのだった。