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閉じ込められた状態でモニターを見ていると、爆発が起こった事が分かった。
すぐに殺せんせーがトランシーバーで烏間に連絡を取る。
「モニターを見ていたら爆発したように映りましたが大丈夫ですか!? イリーナ先生も!」
『俺はいいがあいつは瓦礫の下敷きだ』
ため息交じりの答えが返って来た瞬間、衝撃が走る。
しかし、烏間ならイリーナを助けるだろう。皆がそう思ったが、烏間の出した答えは予想と真逆のものだった。
『だが構っている暇はない。道を塞ぐ瓦礫をどかして死神を追う』
「ダメ! どうして助けないの、烏間先生!?」
倉橋が声を荒げる。
一人前のプロなら自己責任なので、責めもしないし助けもしない。
淡々と告げる烏間の声を聞いても倉橋は諦めなかった。
「プロだとかどーでもいーよ! 十五の私がなんだけど、ビッチ先生まだ二十歳だよ!?」
「うん。経験豊富な大人なのに、ちょいちょい私達より子供っぽいよね」
「多分、安心のない場所で育ったから。ビッチ先生はさ、大人になる途中で大人のカケラをいくつか拾い忘れたんだよ」
「助けてあげて、烏間先生。私達生徒が間違えても許してくれるように、ビッチ先生の事も」
特にイリーナと仲良くしていた倉橋と矢田の説得を聞いて烏間は一瞬思案するが、どうしても引っかかる事があるため決心できなかった。
「時間のロスで君らが死ぬぞ」
その事実を突きつける。
しかし、返って来たのは明るい返事だった。
「大丈夫! 死神は多分目的を果たせずに戻ってきます。だから、烏間先生はそこにいて」
*
殺せんせーがトランシーバーを切るとすぐに皆が準備に取り掛かる。
イリーナが投げつけた首輪型の爆弾をイトナが確認し、乱暴に外しても起爆しないし敵にもバレない事が分かった。
監視カメラに映らないように気をつけながら、殺せんせーに首輪と手錠を外してもらう。
岡島が、カメラで正確に見えない場所を割り出す。
菅谷が超体操着に暗殺迷彩を施し、岡島が割り出した場所の壁と同化。
殺せんせーは保護色になり、生徒達の隙間を自然に埋める。
これで監視カメラを覗いた死神からは、全員が脱出したかのように見える。
少し経つと爆発音が聞こえた。
部屋の中央に集めておいた首輪が爆発したのだ。首輪を隠すためにかぶせていた暗殺迷彩を施された超体操着が宙を舞う。
首輪が爆発したという事は死神が映像を見たのだろう。
どれだけ息を潜めて壁と同化していたのだろうか。
実際は数分間だけなのだろうが、皆には何時間にも感じられた。
なにかが水に落ちる音が、しばらく続いていた沈黙を破った。
殺せんせーがズーム目で確認する。
「上からの立坑ですね。そして……」
死神はもう監視カメラを見ていないと分かり、皆が壁に同化するのをやめた。
「死神がナイフを……あっ違う。次はワイヤーだ!! 烏間先生これを……おおスゴイ。避けざまに返しの肘っ……あっダメだ。ナイフを盾に。それを見て同時に蹴りに変えたけど、えーとえーと、同時!! なんか……なんかスゴイ闘いだー!!」
殺せんせーが実況をしてくれたが、かなり下手くそだった。
あとで浄玻璃鏡で確認しようと菜々が決めていると、ブーイングが起こっていた。
「心配せずともそう簡単に烏間先生は殺られません」
励ました後、死神はまだ何か隠し持っているだろうと言ってから、殺せんせーはトマトジュースを取り出した。
一本の触手を檻から出し、ポンプのようにどこかに送っている。
何が起こったのかはよく分からなかったが、烏間が戻ってきた事から、自分達が勝ったのだと生徒達は理解した。
烏間に牢屋から出してもらい、捕らえられた死神を見て話していると、小さな音が聞こえた。
全員が一斉に振り返る。
忍び足で移動していたらしいイリーナが固まっていた。
しばらくイリーナは微動だにしなかったが、また歩き出す。
「てめー、ビッチ!!」
「なに逃げようとしてんだコラ!!」
そう怒鳴りながら追いかけられ、すぐにイリーナは捕まった。
喚いているイリーナに向かって、寺坂が乱暴に告げる。
「いーから普段通り来いよ、学校。何日もバッくれてねーでよ」
「続き気になっていたんだよね。アラブの王族たぶらかして戦争寸前まで行った話」
「来なかったら先生に借りた花男のフランス語版借りパクしちゃうよ」
口々にそう言われたが、イリーナは渋った。
生徒達を殺しそうになったし、過去に色々やってきたからだ。
しかし、彼女の心配は笑い飛ばされる。
「何か問題でも? 裏切ったりヤバいことしたりそれでこそのビッチじゃないか」
「たかがビッチと学校楽しめないで、うちら何のために殺し屋兼中学生やってんのよ」
「そういう事だ」
烏間は死神を倒した時に手に入れた花を差し出す。
「その花は生徒達からの借り物じゃない。俺の意思で敵を倒して得たものだ。誕生日はそれなら良いか?」
「……はい」
そう答えたイリーナは頬を赤らめて微笑んでいた。
殺せんせーはその様子を一通りメモし終わった後、烏間に告げる。
「ただし烏間先生。いやらしい展開に入る前に一言あります」
「断じて入らんが言ってみろ」
「今後、このような危険に生徒達を巻き込みたくない。安心して殺し殺される事が出来る環境作りを、防衛省に強く要求します」
その後、生徒を巻き添えにして暗殺に成功しても賞金は支払われない事が決まった。
*
次の日。菜々は会議に出るために地獄に向かった。
閻魔庁に着くとすぐ、閻魔に謝られた。
死神の件を伝えなかったのは他の国に圧力をかけられたかららしい。
「私に何も伝えなかったのは正しい判断だったと思いますよ。見ての通り私はクラスに馴染んでますし、殺せんせーが殺されるのを邪魔する可能性がある」
そう閻魔に伝えていると、鬼灯が現れた。
「鬼灯さん。これ烏頭さんと蓬さんに渡しておいて貰えませんか?」
そう言って菜々は鬼灯に分厚い書類を差し出した。
彼らも忙しいのか、なかなか会う機会がない。
唯一会うのは会議中だが、会議が終わるとすぐに姿をくらますので話す機会がない。
菜々は避けられているのではないかと感じることが多々ある。理由はなんとなく予想がつく。
受け取った書類を机に置き、執務室に入って鍵をかけると鬼灯は話し出す。
「これからも今回のような事があると思います。自力でなんとかしてください。それと、全てが終わった時の話ですがーー」
会議が終わり、菜々は閻魔殿の長い廊下を歩いていた。
会議の前に鬼灯に言われた事を反芻していると、ふとイリーナの言葉を思い出す。
――私の何が分かるのよ。
――考えた事無かったのよ、自分がこんなフツーの世界で暮らせるなんて。弟や妹みたいな子と楽しくしたり、恋愛の事で悩んだり。そんなの違う。私の世界はそんな眩しい世界じゃない。
彼も初めは同じ気持ちだったのだろうか。
死ぬ事だけを望まれ、絶望しながら第一の人生を終えてすぐ、烏頭や蓬に会う前。
どんなに分かりたいと思っても、彼の気持ちを分かる事は出来ない。
イリーナに対して感じた事と同じ事を菜々は感じていた。
閻魔殿から出ると、ムワッとした熱気に襲われる。
今日も刑場で業火が唸りを上げているのが聞こえてくる。
「分かりたいって気持ちだけじゃダメかな」
誰に対してでもなく呟いた言葉は空気に溶けていった。
ずっしりと重みのあるカバンを握りしめる。
あの世がまだ黄泉と呼ばれていた頃。神代について書かれた、会議が始まる前に寄った図書室で借りた本が何冊も入っている。
大昔から生きている知り合いから何度も当時の話を聞いた。
当時の事が書かれた本だって片っ端から読み漁った。
もしも自分にもチャンスがあるのなら、彼の隣を歩けるようになりたい。彼に寄り添いたい。彼の力になりたい。
日本地獄の実質ナンバーワンとただの中学生。
天と地ほどの差があるが、彼の背中を見て走り続けたい。
――それくらいなら思っても良いよね。
心の中で呟くと、一歩踏み出す。
亡者の断末魔が薄暗い空に響き渡っていた。
*
十一月になり、進路相談が始まった。
菜々は正直に獄卒と書くわけにも行かなかったので、官僚と書いておいた。
「菜々さんは官僚ですか」
殺せんせーは彼女が書いた進路希望用紙を見た。
「それよりどうしたんですか、それ?」
菜々は殺せんせーの顔を見ていた。
むくれており、頭からは棘が生えて、謎の模様が施されていた。
「奥田さんの濃硫酸を飲んだ後、原さんの塩分多めの弁当を食べ、狭間さんに呪われ、菅谷君に落書きされました」
菜々はカルマと中村が奥田の毒に、ゴキブリとカマキリの卵を入れていた事を思い出したが、何も言わないことにした。
マッハで元どおりの顔に戻し、殺せんせーは教え子に向き合う。
「ずっと官僚になるって決めてたんです。厳しい道のりだと思いますけど、追いつきたい人もいるし」
照れたようにはにかみながら夢を語る菜々に、殺せんせーは疑問をぶつけた。
「それは、私に頼んだ事と何か関係があるんですか?」
一瞬菜々の目の色が変わった。しかし、すぐに元の表情に戻り口を開く。
「その理由は一年後に話すって言ったじゃないですか」
彼女が指定したのは、地球が滅んでいるかもしれない時。
地球が滅んでいなかったとしたら殺せんせーは殺されていることになる。
おかしな話だが深くは突っ込まないことにして、今の時点で進学を希望している高校の話を始める事にした。
「都立永田町高校。公立ですか。理由を聞いても?」
「一番の理由は学費です。中学受験をする時に塾に通わせてもらって、椚ヶ丘中学校の授業料を払ってもらって。親には迷惑をかけました。学費が安い公立なら親孝行出来るかなって」
そんな事があって数日後。渚の母親が来た。
殺せんせーが烏間に変装した状態で、ズラだとカミングアウトした日から少し経ち、十一月の中旬。
学園祭が始まった。
*
賑やかな声が聞こえてくる。
文化祭である事を考えるとそれは全然おかしいことではないのだが、その中に怒鳴り声もあるとなると話は別だ。
喧嘩が始まったせいでそれなりにいた客は帰ってしまい、残っているのは殺し屋達だけ。
このまま行くと警察沙汰になる可能性もある。
「誰かストッパー……加藤呼んで来い!」
「さっきから姿が見えないよ!」
前原が叫ぶが、茅野がそう告げる。
「チッ、逃げたか」
「ほんと、どーすんだよ、コレ」
杉野がため息をつきながら見たのは、いい歳して喧嘩している二人の男だった。
話は数時間前に遡る。
「おーい、いるか渚―!! 来てやったぞー!!」
元気な声が聞こえる。呼ばれた渚が振り返ってみると、声の主がさくらだと分かった。
「苗子ちゃんも来てくれたんだ」
渚のすぐ近くにいた菜々が、小学生の頃からの友人に声をかける。
「桜子は後で来るって」
三池はさくらとすっかり仲良くなったらしく、わかばパークの人達と一緒に来ていた。
「で、なんでこんなに刑事さんがいるの?」
席は結構埋まっている。
しかも、よくよく見てみるとほとんどの客が人相が悪い。
彼らが刑事だという事を、何度か事件に巻き込まれている三池は知っていた。
「私が呼んだ。結構食べてってくれるよ、あの人達」
よく見れば工藤一家もいる。
「優作さんと有希子さんがいるってネットで拡散しといたから、後でお客さんがたくさん来ると思うよ」
そんな事を話していると、桜子が到着した。
「このメンバーって……事件起きたりしないよね?」
「大丈夫! 昨日殺人事件に巻き込まれたばっかりだから!」
コイツ呪われてるんじゃね?
彼女達の話を聞いていた者の心の声が一致した。
「じゃあ、そろそろ私調理室に戻るね」
知り合い達を席に案内した後、菜々はそう告げた。
「なんで調理室?」
一部始終話を聞いていた一人の刑事が尋ねる。
「えっいや、なんでって……。料理するためですけど」
その答えを聞いた瞬間、刑事達が凍りついた。
「料理が出来る……だと!?」
「マジか……。女子力ゼロだとばかり思ってたのに」
「でも、菜々って試食目当てとはいえ、毎年バレンタインに私達のチョコ作り手伝ってくれてますよ」
三池の言葉を聞いて、刑事達は雷に打たれたような錯覚に陥った。
小さい頃から善業を積んでおいて地獄行きを避けようという目論見があったため、菜々は昔から家の手伝いをよくしていたので料理もできる。
鬼になり、死後の裁判を受けなくてもよくなった途端、手伝いをする回数がめっきり減った事から、彼女の性格がよく分かる。
「何言ってるの。菜々ちゃんもちゃんとした女子だよ。あっ、君可愛いねー。彼氏いる? もっと大きくなったら僕のところ来てね。遊んであげるよ」
自分を弁解する声が聞こえたので菜々が振り返ってみると、ヘラヘラと笑っている男が目に映った。
突然現れた白澤にナンパされた神崎は、困ったような笑みを浮かべている。
ほんとにこの子男運ないなと思いながら、菜々は杉野を呼んだ。
神崎は他の男子の事が気になっているようだが、少しは点数を稼げるだろう。
杉野によって連れていかれた神崎を見送った後、白澤は菜々の隣にいた渚に向き直る。
「初めまして。菜々ちゃんの知り合いの白澤神です。君可愛いよね。男なのが残念だなー」
「えっと、潮田渚です。あの……」
渚が言いたい事を察して、代わりに菜々が質問する。
「ずっと気になってたんですけど、何ですか? その服装」
「えっダメ? 結構イケてると思うんだけど。変?」
「違和感があります。見た目若いのに服装が老人っぽい」
「そうか。若い子にはウケないのか。まだ中学生だもんね」
取り敢えず、何でいるんだという視線を送りながら、菜々は席に案内した。
ちょうど工藤一家が帰るところだったので見送った後、旧校舎に入る。
「ソラ、なんか知らない?」
人目につかない場所でいつも一緒にいる狐に尋ねてみたが、何も分からないという事だった。
鬼灯に詳しい事情を聞こうと地獄から支給されている携帯電話を取り出した時、渚が中村にズボンを脱がされていた。
好奇心が勝ち、携帯をしまって菜々は彼らの元に向かう。
夏休みに訪れた南の島で、女装していた渚に惚れてしまったユウジが来たらしい。
カルマや中村達と一緒に渚を観察していると、次々と暗殺者が現れた。
殺せんせーを殺しそこねた殺し屋達だ。ターゲット本人が呼んだとの事だ。
危機感を感じたので、菜々は後ろ髪引かれる思いでその場を離れ、知り合いの刑事達を半強制的に帰らせた。
刑事を全員帰らせてから戻ると、ユウジは帰ってしまっていた。
「菜々ちゃん、これ五番テーブルに運んでー」
倉橋に呼ばれたので料理を受け取り、五番テーブルを探す。白澤の席だった。
箸が全然進んでいない事を考えると、女性を口説くのに忙しかったのだろう。その証拠に彼はイリーナを口説いていた。
料理を運んだついでに何でいるのか尋ねようと思っていたが、さすがにイリーナの前で問い詰めるわけにもいかず、後で鬼灯に尋ねようと決める。
「から揚げにレモン汁かけますか?」
そう尋ねながら注文されたキジ肉のから揚げを置く。
「うん、お願い」
色々な料理を少しずつ頼んでいるようだ。
女子か、と内心で突っ込みながら菜々はレモンを取ろうとしたが、皿にのっていなかった。
盛り付け忘れだろうかと思う前に、白澤の悲鳴が聞こえる。
彼は目を抑えていた。
「何すんだよ!」
「レモン汁かけるって言ったじゃないですか」
「目にじゃねーよ! てかなんでいるんだ、お前!」
レモン汁を白澤の目にかけた張本人を見て、菜々はため息をついた。
イリーナはいつのまにか逃げていた。めんどくさい事になると気がついたのだろう。
白澤が目を洗いに旧校舎に行っているうちに、菜々は先ほどの事件の犯人である鬼灯に尋ねた。
「何でいるんですか、あの人?」
「あいつも超破壊生物の今後について一枚噛んでいるんです。あれでも一応知識の神ですから。殺せんせーを日本地獄で雇っても問題ないか、確かめに来たんでしょう」
「イテテ……。ほんと何なの、お前」
旧校舎から帰ってきた白澤が愚痴る。
「えっいや、あなたの姿を見かけたのでつい」
「いいか!? やって良い事と悪い事があるからな! つい、じゃねーよ!」
「よく言いますね。あなただって見境なく女性を口説いているでしょう。それと同じです」
「少しは年長者を敬えよ。それにお前の理不尽な暴力と僕の行動は同じじゃない。全然違う」
「うるさいですね。だいたいこんなところに来て、店の方はどうしたんですか?」
「関係ないだろ、お前には。ちゃんと桃タロー君に任せてあるし」
よし、逃げよう。しりあげ足とりを始めた二人を見て、菜々はそう結論づけた。
この先どうなるのかは気になるが、浄玻璃鏡で見れば良いだけの話だ。
ここで冒頭に戻る。
「うっせー、この闇鬼神!」
「はい、負け」
ずっと口喧嘩をしていたかと思えば、そんなやりとりが行われ、全員が面食らった。
「なあ、負けってなんだ?」
「さあ……」
頭をひねっていた前原と岡野だったが、すぐに思考を中断した。
またもや口喧嘩が始まったからだ。
しかも、どんどんヒートアップしている。
「誰かストッパー……加藤呼んで来い!」
「さっきから姿が見えないよ!」
危機を感じたため、二人と知り合いであるクラスメイトに助けを求めようとした前原に、茅野が告げる。
「チッ、逃げたか」
「ほんとどーすんだよ、コレ」
呆れ半分、諦め半分の顔をした杉野が呟いた。
「菜々さん、早く来てください! 大変な事になってるんです!!」
菜々が滝が見える崖の上に陣取っていると、殺せんせーがやって来た。
裏山の一角。
木々が青々と茂り、轟の名のごとく大地を震わす瀑音が聞こえてくる。
久しぶりに手のひらから気を出そうと座禅を組んでいたのがバレないように、菜々はすぐに立ち上がった。
「鬼灯さんとは……白澤さんですか?」
「そうです!」
「とにかく、現場まで運んでください」
さすがにまずいと判断し、菜々は重い腰をあげた。
現状を一言で表すとするならば、カオスだった。
殺せんせーが変装のために使っていたシャチホコの形をした物は屋根から外され、ぶん回されている。
中身は大事になる前に脱出したようだ。
「大体なんですか!? その格好は。どう見てもよく散歩している近所のおじいちゃんですよ!!」
そう叫びながら、鬼灯は白澤目掛けてシャチホコを振り下ろす。
「お前には服について言われたくない! いつも黒一択の上に変な柄のTシャツ着てるし! ああそうか。センスがないから僕の最高のセンスが分からないのか!!」
わめきながらシャチホコをなんとか受け止めるも、力勝負で負けて白澤は地面に叩きつけられる。
一般の客は帰ってしまい、残っているのは殺し屋達だけだ。
「あの動き、ただ者じゃないな」
「しかもあの黒い服の男の殺気、尋常じゃないぞ……」
殺し屋達の話を聞くと変な誤解が生まれかけている事が分かった。
どうするのが最善の手なのか菜々は一瞬思案したが、すぐに行動を起こした。
「見物料一人五百円です!」
「金取るのかよ! それよりあの二人を止めてくれ!!」
「私はまだ死にたくない。それにこれだけ被害被っているんだからこれくらいいいでしょ」
そう言ってもまだ不安が拭い去れないのだと杉野の顔を見て判断し、菜々はため息混じりにこぼした。
「別に大丈夫だと思うよ。兄弟喧嘩みたいなものだし。いつもこんな感じだし」
「いつもこんな感じ!?」
「あ、後あの二人に似てるって言わない方がいいから」
とっさに話を逸らすと、ポケットから女の子の声が聞こえて来た。
「菜々さん、メールです」
モバイル律だ。何だろうかとメールを確認した菜々は凍りついた。
もうすぐ両親が来るという内容の、父親からのメールだった。
「この場で喧嘩はやめてください! どうせ喧嘩するなら路地裏でしてきてください。いい場所知ってますよ」
ここは現世だと思い出したらしく、二人は動きを止めた。
「とにかく、迷惑料は貰いますよ!」
この二人が一緒にいると何が起こるか分からない。面倒ごとは避けたいので絞れるだけ絞りとって、両親が来る前に追い返した。
「セーフ」
鬼灯と白澤を追い返してすぐ両親が到着したため、菜々は思わず呟いた。
両親を席に案内し、適当にあしらった後旧校舎に戻る。
殺し屋達も帰ってしまい、ほとんど客がいないのでする事がない。
「それにしても加々知さん、かなり怒ってたよな」
「白澤って人もやけに加々知さんに突っかかっていたし、何かあるのかな」
一休みしようと教室の前に差し掛かった時、菜々は杉野と渚の話を聞きつけた。
「あの二人に何があったか気になる?」
いきなり現れた事に驚かれたものの、頷かれる。
「知りたかったら一人五十円」
彼女は元の世界に戻る方法を探すための資金を昔から集めていたためそれが習慣になってしまい、今では金を集めるのが趣味になりつつある。
ぶつくさ言いながらも二人は金を払った。やはり気になるのだろう。
他にも話を聞きつけて数人集まったので、菜々は鬼灯と白澤が昔行ったくだらない賭けについて話始めた。
「で、その男か女か分からなかった人の性別が最近判明したんだよ」
菜々が語った内容は考えていた以上にくだらない内容だったが、問題となっている人物の性別は皆気になっていた。
教室が静まり返っていたせいで誰かがゴクリと喉を鳴らした音が大きく聞こえた。
「続きが知りたいなら一人百円」
「「「金取るのかよ!?」」」
なんだかんだ言って皆払った。
「結局どうだったの?」
皆の意見を代表して渚が尋ねる。
「手術をしてないニューハーフ」
その瞬間、教室の温度が一気に下がった。
なんとも言えない微妙な空気が訪れる。
「でも、なんだかんだ言ってあの二人似てるよな」
「加々知×白澤……」
中村がブツブツ言っていたが菜々は無視して、先程集めた金を数えて始めた。
殺し屋達からもぎ取った見物料も一緒に彼女の懐に入る。
飲食店として届けを出しているのだから、文化祭のクラスの売り上げには含まれないと、一見最もな意見を菜々は言っていたが、見物料を取っている時点でおかしい。
忠告しても聞かない事は分かりきっているので、皆何も言わなかった。
中村が鬼灯と白澤でふしだらな妄想をしていると、声がダダ漏れなので分かる。
彼女の言葉を聞いて実の父親がギョッとしているのを尻目に、菜々は母親にセールストークをしていた。
*
ユウジのブログのおかげでE組が学園祭の総合成績三位になったりしていたら、期末テスト当日になっていた。
E組に上位を独占して欲しいと浅野に頼まれた事もあり、皆必死で勉強したが不安をぬぐい去れなかった。
A組生徒達が學峯の洗脳の賜物なのか、常世からやって来た悪鬼のような表情をしていたからだ。
菜々は机に突っ伏していた。
一時間目である英語のテストが終わったのだ。
このままだと昇天するんじゃないかと思いながらクラスメイト達の話を聞く。
やはり皆感想は同じのようだ。
「ダメだ」
「解ききれんかった」
「難しい上に問題量が多すぎるよー」
「ヒアリングエグかったな。ビッチ先生でもあんなにボキャブラリー豊富じゃねーよ」
これで大丈夫なのかと菜々は不安になったがすぐに開き直る。殺れるだけやった。あとは成るように成る。
社会、理科、国語とテストはどんどん進んでいき、最終科目である数学が残った。
下手したらコレ大学入試レベルなんじゃないかと思いながら、菜々はシャーペンを進めていく。
見直しをする時間はとれなかったが、なんとか最終問題まで解けた。
テストは終わり、あとは結果を待つだけだ。
テスト返し当日。
菜々は数学のテストを思い返していた。
最後の問題が解けたのはマグレだ。奇跡的に今まで忘れていた原作知識が降りて来たのだ。
なんでだろうかと考えていたが、すぐに辞める。どうせ考えても仕方がない。
「さて皆さん。集大成の答案を返却します。君達の二本目の刃は標的に届いたでしょうか」
そんな言葉が聞こえたかと思うと、いつのまにか答案が手元にあった。殺せんせーがマッハで返却したのだろうと容易に想像がつく。
「細かい点数を四の五の言うのはよしましょう。今回の焦点は総合順位で全員トップ五十を取れたかどうか!!」
本校舎でも今頃順位が張り出されている頃だろうし、E組でも先に順位を発表する。
そう説明して殺せんせーは順位表を黒板に貼った。
「E組でビリって寺坂だよな?」
「その寺坂君が四十七位ってことは……」
その次の言葉は歓声にかき消された。
寺坂が五十位以内に入っているという事は、全員が五十位以内に入っていると言う事だ。
菜々は先程返されたテストを見て青ざめた。
ちょくちょくミスをしている。順位は八位。原作知識を使ったにも関わらず、得意科目である数学でも満点を取れていない。
沙華に怒られる事が確定した。
殺せんせーの近くを飛んでいる張本人が後でテストを見せるようにと言っている。
菜々の様子から彼女がまたミスをしたと沙華は勘付いたようだ。
どうやって誤魔化そうかと菜々が頭をフル回転させていると、急に衝撃が走った。
旧校舎が揺れたのだ。
窓側に座っていた片岡が窓の外を確認して悲鳴のような声を上げる。
「校舎が半分無い!?」
「退出の準備をしてください。今朝の理事会で決定しました。この旧校舎は今日をもって取り壊します」
學峯が言うには旧校舎を取り壊し、代わりにE組の生徒達は監獄のような新校舎に移らなくてはいけないらしい。
殺せんせーは今から自分が殺すので解雇する。
そう言い放ったと思ったら、學峯はさっき旧校舎の半分を破壊したクレーン車の操縦者に、作業を中断するようにと指示を出した。
彼はギャンブルで暗殺をするつもりらしい。
「五つの問題集と五つの手榴弾を用意しました。うち四つは対先生手榴弾。残り一つは対人用。本物の手榴弾です」
どちらも見た目や臭いでは区別がつかず、ピンを抜いてレバーが起きた瞬間爆発するように作られている。
ピンを抜き五教科の適当なページに、レバーを起こさないように気を付けながら手榴弾を差し込む。
殺せんせーがこれを開き、ページ右上の問題を一問解く。ただし問題が解けるまではその場から一歩も動いてはいけない。
殺せんせーが四冊解き終わった後、學峯が最後の一問を解く。
學峯を殺すかギブアップさせたら、殺せんせーも生徒も旧校舎に残ってもいい。
そんな提案を聞いて皆、なぜ外に出されたのかを理解した。
殺せんせーは日本全国の問題集をほぼ覚えていた。
そのため、数学の問題集は長い間矢田に貸していたので問題に答えるのに時間がかかり、ダメージを受けてしまったものの、それ以外ではレバーが起きる前に問題を解いた。
四教科の問題集を殺せんせーが解き終わり、學峯が残った一冊を開いたが、殺せんせーが脱皮して皮をかぶせ、衝撃から守ったため彼は無傷だった。
結局殺せんせーが賭けに勝ったので旧校舎は取り壊されなくなった。
壊された旧校舎の修理をしながら菜々は考え込んでいた。
殺せんせーの暗殺期限はもう三ヶ月をきっている。
もうそろそろ全世界を挙げての暗殺が始まっていてもいい頃だ。
しかし、何も知らされていない事を考えると自分に情報は来ないと思って良いだろう。
誰にも迷惑がかからないように情報収集を始めなければいけない。
その後、全員で押さえつけられれば身動きが取れなくなると殺せんせーに教えてもらった。
すぐに殺せんせーがトランシーバーで烏間に連絡を取る。
「モニターを見ていたら爆発したように映りましたが大丈夫ですか!? イリーナ先生も!」
『俺はいいがあいつは瓦礫の下敷きだ』
ため息交じりの答えが返って来た瞬間、衝撃が走る。
しかし、烏間ならイリーナを助けるだろう。皆がそう思ったが、烏間の出した答えは予想と真逆のものだった。
『だが構っている暇はない。道を塞ぐ瓦礫をどかして死神を追う』
「ダメ! どうして助けないの、烏間先生!?」
倉橋が声を荒げる。
一人前のプロなら自己責任なので、責めもしないし助けもしない。
淡々と告げる烏間の声を聞いても倉橋は諦めなかった。
「プロだとかどーでもいーよ! 十五の私がなんだけど、ビッチ先生まだ二十歳だよ!?」
「うん。経験豊富な大人なのに、ちょいちょい私達より子供っぽいよね」
「多分、安心のない場所で育ったから。ビッチ先生はさ、大人になる途中で大人のカケラをいくつか拾い忘れたんだよ」
「助けてあげて、烏間先生。私達生徒が間違えても許してくれるように、ビッチ先生の事も」
特にイリーナと仲良くしていた倉橋と矢田の説得を聞いて烏間は一瞬思案するが、どうしても引っかかる事があるため決心できなかった。
「時間のロスで君らが死ぬぞ」
その事実を突きつける。
しかし、返って来たのは明るい返事だった。
「大丈夫! 死神は多分目的を果たせずに戻ってきます。だから、烏間先生はそこにいて」
*
殺せんせーがトランシーバーを切るとすぐに皆が準備に取り掛かる。
イリーナが投げつけた首輪型の爆弾をイトナが確認し、乱暴に外しても起爆しないし敵にもバレない事が分かった。
監視カメラに映らないように気をつけながら、殺せんせーに首輪と手錠を外してもらう。
岡島が、カメラで正確に見えない場所を割り出す。
菅谷が超体操着に暗殺迷彩を施し、岡島が割り出した場所の壁と同化。
殺せんせーは保護色になり、生徒達の隙間を自然に埋める。
これで監視カメラを覗いた死神からは、全員が脱出したかのように見える。
少し経つと爆発音が聞こえた。
部屋の中央に集めておいた首輪が爆発したのだ。首輪を隠すためにかぶせていた暗殺迷彩を施された超体操着が宙を舞う。
首輪が爆発したという事は死神が映像を見たのだろう。
どれだけ息を潜めて壁と同化していたのだろうか。
実際は数分間だけなのだろうが、皆には何時間にも感じられた。
なにかが水に落ちる音が、しばらく続いていた沈黙を破った。
殺せんせーがズーム目で確認する。
「上からの立坑ですね。そして……」
死神はもう監視カメラを見ていないと分かり、皆が壁に同化するのをやめた。
「死神がナイフを……あっ違う。次はワイヤーだ!! 烏間先生これを……おおスゴイ。避けざまに返しの肘っ……あっダメだ。ナイフを盾に。それを見て同時に蹴りに変えたけど、えーとえーと、同時!! なんか……なんかスゴイ闘いだー!!」
殺せんせーが実況をしてくれたが、かなり下手くそだった。
あとで浄玻璃鏡で確認しようと菜々が決めていると、ブーイングが起こっていた。
「心配せずともそう簡単に烏間先生は殺られません」
励ました後、死神はまだ何か隠し持っているだろうと言ってから、殺せんせーはトマトジュースを取り出した。
一本の触手を檻から出し、ポンプのようにどこかに送っている。
何が起こったのかはよく分からなかったが、烏間が戻ってきた事から、自分達が勝ったのだと生徒達は理解した。
烏間に牢屋から出してもらい、捕らえられた死神を見て話していると、小さな音が聞こえた。
全員が一斉に振り返る。
忍び足で移動していたらしいイリーナが固まっていた。
しばらくイリーナは微動だにしなかったが、また歩き出す。
「てめー、ビッチ!!」
「なに逃げようとしてんだコラ!!」
そう怒鳴りながら追いかけられ、すぐにイリーナは捕まった。
喚いているイリーナに向かって、寺坂が乱暴に告げる。
「いーから普段通り来いよ、学校。何日もバッくれてねーでよ」
「続き気になっていたんだよね。アラブの王族たぶらかして戦争寸前まで行った話」
「来なかったら先生に借りた花男のフランス語版借りパクしちゃうよ」
口々にそう言われたが、イリーナは渋った。
生徒達を殺しそうになったし、過去に色々やってきたからだ。
しかし、彼女の心配は笑い飛ばされる。
「何か問題でも? 裏切ったりヤバいことしたりそれでこそのビッチじゃないか」
「たかがビッチと学校楽しめないで、うちら何のために殺し屋兼中学生やってんのよ」
「そういう事だ」
烏間は死神を倒した時に手に入れた花を差し出す。
「その花は生徒達からの借り物じゃない。俺の意思で敵を倒して得たものだ。誕生日はそれなら良いか?」
「……はい」
そう答えたイリーナは頬を赤らめて微笑んでいた。
殺せんせーはその様子を一通りメモし終わった後、烏間に告げる。
「ただし烏間先生。いやらしい展開に入る前に一言あります」
「断じて入らんが言ってみろ」
「今後、このような危険に生徒達を巻き込みたくない。安心して殺し殺される事が出来る環境作りを、防衛省に強く要求します」
その後、生徒を巻き添えにして暗殺に成功しても賞金は支払われない事が決まった。
*
次の日。菜々は会議に出るために地獄に向かった。
閻魔庁に着くとすぐ、閻魔に謝られた。
死神の件を伝えなかったのは他の国に圧力をかけられたかららしい。
「私に何も伝えなかったのは正しい判断だったと思いますよ。見ての通り私はクラスに馴染んでますし、殺せんせーが殺されるのを邪魔する可能性がある」
そう閻魔に伝えていると、鬼灯が現れた。
「鬼灯さん。これ烏頭さんと蓬さんに渡しておいて貰えませんか?」
そう言って菜々は鬼灯に分厚い書類を差し出した。
彼らも忙しいのか、なかなか会う機会がない。
唯一会うのは会議中だが、会議が終わるとすぐに姿をくらますので話す機会がない。
菜々は避けられているのではないかと感じることが多々ある。理由はなんとなく予想がつく。
受け取った書類を机に置き、執務室に入って鍵をかけると鬼灯は話し出す。
「これからも今回のような事があると思います。自力でなんとかしてください。それと、全てが終わった時の話ですがーー」
会議が終わり、菜々は閻魔殿の長い廊下を歩いていた。
会議の前に鬼灯に言われた事を反芻していると、ふとイリーナの言葉を思い出す。
――私の何が分かるのよ。
――考えた事無かったのよ、自分がこんなフツーの世界で暮らせるなんて。弟や妹みたいな子と楽しくしたり、恋愛の事で悩んだり。そんなの違う。私の世界はそんな眩しい世界じゃない。
彼も初めは同じ気持ちだったのだろうか。
死ぬ事だけを望まれ、絶望しながら第一の人生を終えてすぐ、烏頭や蓬に会う前。
どんなに分かりたいと思っても、彼の気持ちを分かる事は出来ない。
イリーナに対して感じた事と同じ事を菜々は感じていた。
閻魔殿から出ると、ムワッとした熱気に襲われる。
今日も刑場で業火が唸りを上げているのが聞こえてくる。
「分かりたいって気持ちだけじゃダメかな」
誰に対してでもなく呟いた言葉は空気に溶けていった。
ずっしりと重みのあるカバンを握りしめる。
あの世がまだ黄泉と呼ばれていた頃。神代について書かれた、会議が始まる前に寄った図書室で借りた本が何冊も入っている。
大昔から生きている知り合いから何度も当時の話を聞いた。
当時の事が書かれた本だって片っ端から読み漁った。
もしも自分にもチャンスがあるのなら、彼の隣を歩けるようになりたい。彼に寄り添いたい。彼の力になりたい。
日本地獄の実質ナンバーワンとただの中学生。
天と地ほどの差があるが、彼の背中を見て走り続けたい。
――それくらいなら思っても良いよね。
心の中で呟くと、一歩踏み出す。
亡者の断末魔が薄暗い空に響き渡っていた。
*
十一月になり、進路相談が始まった。
菜々は正直に獄卒と書くわけにも行かなかったので、官僚と書いておいた。
「菜々さんは官僚ですか」
殺せんせーは彼女が書いた進路希望用紙を見た。
「それよりどうしたんですか、それ?」
菜々は殺せんせーの顔を見ていた。
むくれており、頭からは棘が生えて、謎の模様が施されていた。
「奥田さんの濃硫酸を飲んだ後、原さんの塩分多めの弁当を食べ、狭間さんに呪われ、菅谷君に落書きされました」
菜々はカルマと中村が奥田の毒に、ゴキブリとカマキリの卵を入れていた事を思い出したが、何も言わないことにした。
マッハで元どおりの顔に戻し、殺せんせーは教え子に向き合う。
「ずっと官僚になるって決めてたんです。厳しい道のりだと思いますけど、追いつきたい人もいるし」
照れたようにはにかみながら夢を語る菜々に、殺せんせーは疑問をぶつけた。
「それは、私に頼んだ事と何か関係があるんですか?」
一瞬菜々の目の色が変わった。しかし、すぐに元の表情に戻り口を開く。
「その理由は一年後に話すって言ったじゃないですか」
彼女が指定したのは、地球が滅んでいるかもしれない時。
地球が滅んでいなかったとしたら殺せんせーは殺されていることになる。
おかしな話だが深くは突っ込まないことにして、今の時点で進学を希望している高校の話を始める事にした。
「都立永田町高校。公立ですか。理由を聞いても?」
「一番の理由は学費です。中学受験をする時に塾に通わせてもらって、椚ヶ丘中学校の授業料を払ってもらって。親には迷惑をかけました。学費が安い公立なら親孝行出来るかなって」
そんな事があって数日後。渚の母親が来た。
殺せんせーが烏間に変装した状態で、ズラだとカミングアウトした日から少し経ち、十一月の中旬。
学園祭が始まった。
*
賑やかな声が聞こえてくる。
文化祭である事を考えるとそれは全然おかしいことではないのだが、その中に怒鳴り声もあるとなると話は別だ。
喧嘩が始まったせいでそれなりにいた客は帰ってしまい、残っているのは殺し屋達だけ。
このまま行くと警察沙汰になる可能性もある。
「誰かストッパー……加藤呼んで来い!」
「さっきから姿が見えないよ!」
前原が叫ぶが、茅野がそう告げる。
「チッ、逃げたか」
「ほんと、どーすんだよ、コレ」
杉野がため息をつきながら見たのは、いい歳して喧嘩している二人の男だった。
話は数時間前に遡る。
「おーい、いるか渚―!! 来てやったぞー!!」
元気な声が聞こえる。呼ばれた渚が振り返ってみると、声の主がさくらだと分かった。
「苗子ちゃんも来てくれたんだ」
渚のすぐ近くにいた菜々が、小学生の頃からの友人に声をかける。
「桜子は後で来るって」
三池はさくらとすっかり仲良くなったらしく、わかばパークの人達と一緒に来ていた。
「で、なんでこんなに刑事さんがいるの?」
席は結構埋まっている。
しかも、よくよく見てみるとほとんどの客が人相が悪い。
彼らが刑事だという事を、何度か事件に巻き込まれている三池は知っていた。
「私が呼んだ。結構食べてってくれるよ、あの人達」
よく見れば工藤一家もいる。
「優作さんと有希子さんがいるってネットで拡散しといたから、後でお客さんがたくさん来ると思うよ」
そんな事を話していると、桜子が到着した。
「このメンバーって……事件起きたりしないよね?」
「大丈夫! 昨日殺人事件に巻き込まれたばっかりだから!」
コイツ呪われてるんじゃね?
彼女達の話を聞いていた者の心の声が一致した。
「じゃあ、そろそろ私調理室に戻るね」
知り合い達を席に案内した後、菜々はそう告げた。
「なんで調理室?」
一部始終話を聞いていた一人の刑事が尋ねる。
「えっいや、なんでって……。料理するためですけど」
その答えを聞いた瞬間、刑事達が凍りついた。
「料理が出来る……だと!?」
「マジか……。女子力ゼロだとばかり思ってたのに」
「でも、菜々って試食目当てとはいえ、毎年バレンタインに私達のチョコ作り手伝ってくれてますよ」
三池の言葉を聞いて、刑事達は雷に打たれたような錯覚に陥った。
小さい頃から善業を積んでおいて地獄行きを避けようという目論見があったため、菜々は昔から家の手伝いをよくしていたので料理もできる。
鬼になり、死後の裁判を受けなくてもよくなった途端、手伝いをする回数がめっきり減った事から、彼女の性格がよく分かる。
「何言ってるの。菜々ちゃんもちゃんとした女子だよ。あっ、君可愛いねー。彼氏いる? もっと大きくなったら僕のところ来てね。遊んであげるよ」
自分を弁解する声が聞こえたので菜々が振り返ってみると、ヘラヘラと笑っている男が目に映った。
突然現れた白澤にナンパされた神崎は、困ったような笑みを浮かべている。
ほんとにこの子男運ないなと思いながら、菜々は杉野を呼んだ。
神崎は他の男子の事が気になっているようだが、少しは点数を稼げるだろう。
杉野によって連れていかれた神崎を見送った後、白澤は菜々の隣にいた渚に向き直る。
「初めまして。菜々ちゃんの知り合いの白澤神です。君可愛いよね。男なのが残念だなー」
「えっと、潮田渚です。あの……」
渚が言いたい事を察して、代わりに菜々が質問する。
「ずっと気になってたんですけど、何ですか? その服装」
「えっダメ? 結構イケてると思うんだけど。変?」
「違和感があります。見た目若いのに服装が老人っぽい」
「そうか。若い子にはウケないのか。まだ中学生だもんね」
取り敢えず、何でいるんだという視線を送りながら、菜々は席に案内した。
ちょうど工藤一家が帰るところだったので見送った後、旧校舎に入る。
「ソラ、なんか知らない?」
人目につかない場所でいつも一緒にいる狐に尋ねてみたが、何も分からないという事だった。
鬼灯に詳しい事情を聞こうと地獄から支給されている携帯電話を取り出した時、渚が中村にズボンを脱がされていた。
好奇心が勝ち、携帯をしまって菜々は彼らの元に向かう。
夏休みに訪れた南の島で、女装していた渚に惚れてしまったユウジが来たらしい。
カルマや中村達と一緒に渚を観察していると、次々と暗殺者が現れた。
殺せんせーを殺しそこねた殺し屋達だ。ターゲット本人が呼んだとの事だ。
危機感を感じたので、菜々は後ろ髪引かれる思いでその場を離れ、知り合いの刑事達を半強制的に帰らせた。
刑事を全員帰らせてから戻ると、ユウジは帰ってしまっていた。
「菜々ちゃん、これ五番テーブルに運んでー」
倉橋に呼ばれたので料理を受け取り、五番テーブルを探す。白澤の席だった。
箸が全然進んでいない事を考えると、女性を口説くのに忙しかったのだろう。その証拠に彼はイリーナを口説いていた。
料理を運んだついでに何でいるのか尋ねようと思っていたが、さすがにイリーナの前で問い詰めるわけにもいかず、後で鬼灯に尋ねようと決める。
「から揚げにレモン汁かけますか?」
そう尋ねながら注文されたキジ肉のから揚げを置く。
「うん、お願い」
色々な料理を少しずつ頼んでいるようだ。
女子か、と内心で突っ込みながら菜々はレモンを取ろうとしたが、皿にのっていなかった。
盛り付け忘れだろうかと思う前に、白澤の悲鳴が聞こえる。
彼は目を抑えていた。
「何すんだよ!」
「レモン汁かけるって言ったじゃないですか」
「目にじゃねーよ! てかなんでいるんだ、お前!」
レモン汁を白澤の目にかけた張本人を見て、菜々はため息をついた。
イリーナはいつのまにか逃げていた。めんどくさい事になると気がついたのだろう。
白澤が目を洗いに旧校舎に行っているうちに、菜々は先ほどの事件の犯人である鬼灯に尋ねた。
「何でいるんですか、あの人?」
「あいつも超破壊生物の今後について一枚噛んでいるんです。あれでも一応知識の神ですから。殺せんせーを日本地獄で雇っても問題ないか、確かめに来たんでしょう」
「イテテ……。ほんと何なの、お前」
旧校舎から帰ってきた白澤が愚痴る。
「えっいや、あなたの姿を見かけたのでつい」
「いいか!? やって良い事と悪い事があるからな! つい、じゃねーよ!」
「よく言いますね。あなただって見境なく女性を口説いているでしょう。それと同じです」
「少しは年長者を敬えよ。それにお前の理不尽な暴力と僕の行動は同じじゃない。全然違う」
「うるさいですね。だいたいこんなところに来て、店の方はどうしたんですか?」
「関係ないだろ、お前には。ちゃんと桃タロー君に任せてあるし」
よし、逃げよう。しりあげ足とりを始めた二人を見て、菜々はそう結論づけた。
この先どうなるのかは気になるが、浄玻璃鏡で見れば良いだけの話だ。
ここで冒頭に戻る。
「うっせー、この闇鬼神!」
「はい、負け」
ずっと口喧嘩をしていたかと思えば、そんなやりとりが行われ、全員が面食らった。
「なあ、負けってなんだ?」
「さあ……」
頭をひねっていた前原と岡野だったが、すぐに思考を中断した。
またもや口喧嘩が始まったからだ。
しかも、どんどんヒートアップしている。
「誰かストッパー……加藤呼んで来い!」
「さっきから姿が見えないよ!」
危機を感じたため、二人と知り合いであるクラスメイトに助けを求めようとした前原に、茅野が告げる。
「チッ、逃げたか」
「ほんとどーすんだよ、コレ」
呆れ半分、諦め半分の顔をした杉野が呟いた。
「菜々さん、早く来てください! 大変な事になってるんです!!」
菜々が滝が見える崖の上に陣取っていると、殺せんせーがやって来た。
裏山の一角。
木々が青々と茂り、轟の名のごとく大地を震わす瀑音が聞こえてくる。
久しぶりに手のひらから気を出そうと座禅を組んでいたのがバレないように、菜々はすぐに立ち上がった。
「鬼灯さんとは……白澤さんですか?」
「そうです!」
「とにかく、現場まで運んでください」
さすがにまずいと判断し、菜々は重い腰をあげた。
現状を一言で表すとするならば、カオスだった。
殺せんせーが変装のために使っていたシャチホコの形をした物は屋根から外され、ぶん回されている。
中身は大事になる前に脱出したようだ。
「大体なんですか!? その格好は。どう見てもよく散歩している近所のおじいちゃんですよ!!」
そう叫びながら、鬼灯は白澤目掛けてシャチホコを振り下ろす。
「お前には服について言われたくない! いつも黒一択の上に変な柄のTシャツ着てるし! ああそうか。センスがないから僕の最高のセンスが分からないのか!!」
わめきながらシャチホコをなんとか受け止めるも、力勝負で負けて白澤は地面に叩きつけられる。
一般の客は帰ってしまい、残っているのは殺し屋達だけだ。
「あの動き、ただ者じゃないな」
「しかもあの黒い服の男の殺気、尋常じゃないぞ……」
殺し屋達の話を聞くと変な誤解が生まれかけている事が分かった。
どうするのが最善の手なのか菜々は一瞬思案したが、すぐに行動を起こした。
「見物料一人五百円です!」
「金取るのかよ! それよりあの二人を止めてくれ!!」
「私はまだ死にたくない。それにこれだけ被害被っているんだからこれくらいいいでしょ」
そう言ってもまだ不安が拭い去れないのだと杉野の顔を見て判断し、菜々はため息混じりにこぼした。
「別に大丈夫だと思うよ。兄弟喧嘩みたいなものだし。いつもこんな感じだし」
「いつもこんな感じ!?」
「あ、後あの二人に似てるって言わない方がいいから」
とっさに話を逸らすと、ポケットから女の子の声が聞こえて来た。
「菜々さん、メールです」
モバイル律だ。何だろうかとメールを確認した菜々は凍りついた。
もうすぐ両親が来るという内容の、父親からのメールだった。
「この場で喧嘩はやめてください! どうせ喧嘩するなら路地裏でしてきてください。いい場所知ってますよ」
ここは現世だと思い出したらしく、二人は動きを止めた。
「とにかく、迷惑料は貰いますよ!」
この二人が一緒にいると何が起こるか分からない。面倒ごとは避けたいので絞れるだけ絞りとって、両親が来る前に追い返した。
「セーフ」
鬼灯と白澤を追い返してすぐ両親が到着したため、菜々は思わず呟いた。
両親を席に案内し、適当にあしらった後旧校舎に戻る。
殺し屋達も帰ってしまい、ほとんど客がいないのでする事がない。
「それにしても加々知さん、かなり怒ってたよな」
「白澤って人もやけに加々知さんに突っかかっていたし、何かあるのかな」
一休みしようと教室の前に差し掛かった時、菜々は杉野と渚の話を聞きつけた。
「あの二人に何があったか気になる?」
いきなり現れた事に驚かれたものの、頷かれる。
「知りたかったら一人五十円」
彼女は元の世界に戻る方法を探すための資金を昔から集めていたためそれが習慣になってしまい、今では金を集めるのが趣味になりつつある。
ぶつくさ言いながらも二人は金を払った。やはり気になるのだろう。
他にも話を聞きつけて数人集まったので、菜々は鬼灯と白澤が昔行ったくだらない賭けについて話始めた。
「で、その男か女か分からなかった人の性別が最近判明したんだよ」
菜々が語った内容は考えていた以上にくだらない内容だったが、問題となっている人物の性別は皆気になっていた。
教室が静まり返っていたせいで誰かがゴクリと喉を鳴らした音が大きく聞こえた。
「続きが知りたいなら一人百円」
「「「金取るのかよ!?」」」
なんだかんだ言って皆払った。
「結局どうだったの?」
皆の意見を代表して渚が尋ねる。
「手術をしてないニューハーフ」
その瞬間、教室の温度が一気に下がった。
なんとも言えない微妙な空気が訪れる。
「でも、なんだかんだ言ってあの二人似てるよな」
「加々知×白澤……」
中村がブツブツ言っていたが菜々は無視して、先程集めた金を数えて始めた。
殺し屋達からもぎ取った見物料も一緒に彼女の懐に入る。
飲食店として届けを出しているのだから、文化祭のクラスの売り上げには含まれないと、一見最もな意見を菜々は言っていたが、見物料を取っている時点でおかしい。
忠告しても聞かない事は分かりきっているので、皆何も言わなかった。
中村が鬼灯と白澤でふしだらな妄想をしていると、声がダダ漏れなので分かる。
彼女の言葉を聞いて実の父親がギョッとしているのを尻目に、菜々は母親にセールストークをしていた。
*
ユウジのブログのおかげでE組が学園祭の総合成績三位になったりしていたら、期末テスト当日になっていた。
E組に上位を独占して欲しいと浅野に頼まれた事もあり、皆必死で勉強したが不安をぬぐい去れなかった。
A組生徒達が學峯の洗脳の賜物なのか、常世からやって来た悪鬼のような表情をしていたからだ。
菜々は机に突っ伏していた。
一時間目である英語のテストが終わったのだ。
このままだと昇天するんじゃないかと思いながらクラスメイト達の話を聞く。
やはり皆感想は同じのようだ。
「ダメだ」
「解ききれんかった」
「難しい上に問題量が多すぎるよー」
「ヒアリングエグかったな。ビッチ先生でもあんなにボキャブラリー豊富じゃねーよ」
これで大丈夫なのかと菜々は不安になったがすぐに開き直る。殺れるだけやった。あとは成るように成る。
社会、理科、国語とテストはどんどん進んでいき、最終科目である数学が残った。
下手したらコレ大学入試レベルなんじゃないかと思いながら、菜々はシャーペンを進めていく。
見直しをする時間はとれなかったが、なんとか最終問題まで解けた。
テストは終わり、あとは結果を待つだけだ。
テスト返し当日。
菜々は数学のテストを思い返していた。
最後の問題が解けたのはマグレだ。奇跡的に今まで忘れていた原作知識が降りて来たのだ。
なんでだろうかと考えていたが、すぐに辞める。どうせ考えても仕方がない。
「さて皆さん。集大成の答案を返却します。君達の二本目の刃は標的に届いたでしょうか」
そんな言葉が聞こえたかと思うと、いつのまにか答案が手元にあった。殺せんせーがマッハで返却したのだろうと容易に想像がつく。
「細かい点数を四の五の言うのはよしましょう。今回の焦点は総合順位で全員トップ五十を取れたかどうか!!」
本校舎でも今頃順位が張り出されている頃だろうし、E組でも先に順位を発表する。
そう説明して殺せんせーは順位表を黒板に貼った。
「E組でビリって寺坂だよな?」
「その寺坂君が四十七位ってことは……」
その次の言葉は歓声にかき消された。
寺坂が五十位以内に入っているという事は、全員が五十位以内に入っていると言う事だ。
菜々は先程返されたテストを見て青ざめた。
ちょくちょくミスをしている。順位は八位。原作知識を使ったにも関わらず、得意科目である数学でも満点を取れていない。
沙華に怒られる事が確定した。
殺せんせーの近くを飛んでいる張本人が後でテストを見せるようにと言っている。
菜々の様子から彼女がまたミスをしたと沙華は勘付いたようだ。
どうやって誤魔化そうかと菜々が頭をフル回転させていると、急に衝撃が走った。
旧校舎が揺れたのだ。
窓側に座っていた片岡が窓の外を確認して悲鳴のような声を上げる。
「校舎が半分無い!?」
「退出の準備をしてください。今朝の理事会で決定しました。この旧校舎は今日をもって取り壊します」
學峯が言うには旧校舎を取り壊し、代わりにE組の生徒達は監獄のような新校舎に移らなくてはいけないらしい。
殺せんせーは今から自分が殺すので解雇する。
そう言い放ったと思ったら、學峯はさっき旧校舎の半分を破壊したクレーン車の操縦者に、作業を中断するようにと指示を出した。
彼はギャンブルで暗殺をするつもりらしい。
「五つの問題集と五つの手榴弾を用意しました。うち四つは対先生手榴弾。残り一つは対人用。本物の手榴弾です」
どちらも見た目や臭いでは区別がつかず、ピンを抜いてレバーが起きた瞬間爆発するように作られている。
ピンを抜き五教科の適当なページに、レバーを起こさないように気を付けながら手榴弾を差し込む。
殺せんせーがこれを開き、ページ右上の問題を一問解く。ただし問題が解けるまではその場から一歩も動いてはいけない。
殺せんせーが四冊解き終わった後、學峯が最後の一問を解く。
學峯を殺すかギブアップさせたら、殺せんせーも生徒も旧校舎に残ってもいい。
そんな提案を聞いて皆、なぜ外に出されたのかを理解した。
殺せんせーは日本全国の問題集をほぼ覚えていた。
そのため、数学の問題集は長い間矢田に貸していたので問題に答えるのに時間がかかり、ダメージを受けてしまったものの、それ以外ではレバーが起きる前に問題を解いた。
四教科の問題集を殺せんせーが解き終わり、學峯が残った一冊を開いたが、殺せんせーが脱皮して皮をかぶせ、衝撃から守ったため彼は無傷だった。
結局殺せんせーが賭けに勝ったので旧校舎は取り壊されなくなった。
壊された旧校舎の修理をしながら菜々は考え込んでいた。
殺せんせーの暗殺期限はもう三ヶ月をきっている。
もうそろそろ全世界を挙げての暗殺が始まっていてもいい頃だ。
しかし、何も知らされていない事を考えると自分に情報は来ないと思って良いだろう。
誰にも迷惑がかからないように情報収集を始めなければいけない。
その後、全員で押さえつけられれば身動きが取れなくなると殺せんせーに教えてもらった。