青色吐息
「こんなの触って、何が楽しいの?」
後ろから少しだけ不機嫌そうな声が聞こえて、振り返れば哀織が自分で自分の腕を掴む姿が見えた。
それはきっと、肉付きの悪い自身の身体を求める軋識の行動が理解出来ない故の行動だろう。
自分としては、お世辞でも肉付きのいいとは言えない哀織の身体を求める理由は恋愛感情に他ならないと伝えてあるはずなのに、そう言った事を言われるのは心外だし、まだきちんと伝わっていないようで悲しく思えた。
「お前、それ本気で言ってるのか?」
「うん」
軋識の問いかけに、哀織はいともあっさりと頷く。
人の気も知らないで、と軋識は頭を抱えたくなった。
そんな軋識を見て、哀織はわけもわからず首を傾げていた。
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるか」
「機嫌悪いね」
「いや……」
機嫌が悪いわけじゃない。
そう言い返したかったが、自分の態度を第三者が見ればそう見えてしまうのだろう。もしここにトイフェルでも居れば別かもしれない(だとしてもあいつはわざと哀織に機嫌が悪いと言うだろうが)。はぁ、と落ち着くために数回、呼吸を整え落ち着きを取り戻し哀織に近づく。
哀織は近づいた軋識を見上げて「なに?」と首を傾げた。
そのまま唇を奪い、2回、3回と唇を重ね、頬を撫でた手をそのまま下へと下ろして行くと、お世辞にも大きいと言えない膨らみに届きそうなところでネクタイを引っ張られた。
「急にどうしたの?」
「お前が変なこと言うから」
「僕が変なこと言ったの?」
「俺はいつだってお前に触りたいよ」
「……僕は肉付きが良くない」
「そうだな」
「異性としての色気なんて微塵もないと思ってる」
「そんなことない」
「ある」
「色気を感じなかったらこうはならない」
「……ひっ」
手をとり、熱を帯びたソコへと導いてやると、哀織は小さく悲鳴をあげて勢いよく手を引っ込めた。
「わかってくれたか?」
頬を撫でながら、哀織を見つめれば顔を赤くして、何度も小さく頷いていた。
「わかった。わかったからちょっと離れて…」
「なんで?」
「心臓に悪い」
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