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【いなづファクトリー】




ーーやっぱり、そこが好きなんですね。


無骨な男らしい手が、先日指摘したそこを撫でる。
肉のついた所ではなくて、薄っぺらくて骨っぽいそこを撫でて楽しいのだろうか。疑問に思う。
人の好き好き。
僕が彼の喉元を好んでいるのと、同じことなのだろうか。


「いなづは首が好きなんだね。やっぱりオオカミだから?それとも吸血鬼だから?」
「……なるほど。そうかもしれません」


いいながら、ぐっと喉仏に歯を立てる。
跡がつくように、ゆっくりと。
そうした時の彼の顔が好きだった。
じんわりと与えられる喉元の痛みに歪めた彼の顔を見るたびに、脊柱がざわつく。


「肉は嫌いですか?」
「肉?」
「肉です」


肉の無いところばかり撫でていた手を掴んで、上の方へと導く。
そこは、自分が女になったと一番に自覚した場所だ。


「嫌い、ですか?」


熱に浮かされて、湿った吐息が漏れる。
そこは柔らかくて、彼の手によって簡単に形を変える。
尖った頂が擦れる度にもどかしい気持ちになった。
ああ、もうダメだ。


「貰ってください。いっぱい。ぜんぶ、あげます」


少しの隙間さえ煩わしくて、隙間を縫うように縋り付いた。
もっと、なんてはしたないと思われるだろうか。

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