「寒い寒い。なんでこんなに冷房効いてるんですか」
「外が暑いからだと思うよ。ここは、入り口から近い館だし、冷房強くしてるみたい」
「暑いのくらい我慢して欲しいです」
「オオカミは暑いの平気でも、お客さんたちはそうじゃないから」
「………」
「いなづ？」
「上着着てきます」
「ええっ、せっかくキミが薄着してくれたのに？」
「まだ夕方ですよね？最近、そういった失言が多くないですか？」
「いなづの前では素直でいようかなって」
「節度は持ってください」
「出来る限りの努力はするよ」





「いなづ、最近肉付いてきたね」
「右と左どちらがお望みで？」
「いや、太ったとかじゃなくて女性らしくなってきたなって。ごめんなさいあげた拳を下ろしてください」
「ああ、そういうことですか」
「……やっぱり嫌？」
「嫌ではないです」
「そっか。よかった。いなづを女の子にしたのは僕だからさ、嫌だって言われたらどうしようかと」
「その時は右か左か選ばせてあげますよ」
「......選ぶことのないように努力するよ」