【いなづファクトリー】
「中途半端だからかな。夜は自分の欲に素直なのかも」
「………」
ひんやりと、いやな汗が伝う。
組み敷かれて、身体は動かすことができない。
「なにを…」
「なにしようかな?」
自分とは違う骨ばった手が頬から首元へと手を滑らせる。
視線もそれをおっていて、こちらを見ていない。
その熱を孕んだ視線が自分の身体を這うようにして見る様に、脊柱がざわついた。
「キミは嫌がるだろうけど、いつも考えてたんだ。こうしたらキミはどんな顔するのかなって」
「………」
「よかった。こんなことしたら僕は嫌われてしまうかと思って、出来なかったんだ」
「………」
「優しいね。いなづ」
「優しさじゃない。意気地なし」
押さえつけられていた腕を振りほどいて、胸ぐらを掴んで引き寄せる。
噛み付いたそれは、少しかさついていた。
ごめんなさい母様。
大切にしろと言われていたのに。
「こんなことしなくても、怯えなくてもいいのに。伝えてくだされば、それでよかった」
「いなづ」
「オオカミを甘く見ないでくださいね」