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月夜

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 ぱきぱきと、足元から不吉な音がする。
 朝方に薄く積もった雪が、日中顔を出していた太陽に溶かされて、道路に薄い水の膜を張った。
 そのまま乾かしてくれればいいのに、太陽はバカなやつだ。
 溶かすだけ溶かして、乾かさずに沈んでしまった。
 冷えた空気に触れた膜は瞬く間に凍りついて、人の行く手を阻む。
 気を抜けば、足が滑る。
 滑れば腰を打ち付け、とても痛いだろう。
 痛いのは嫌いだ。
 痛い思いをしないように足元に集中して、下ばかり見た。
 上を見る暇はなかった。
 乾いていた路面に辿り着き、ようやく胸を撫で下ろす。
 家までまだ距離はあるけれど、乾いた路面があったのは幸いだ。
 余裕が出てきて、下ばかり見てた視線を上に移す。
 見えた月に、息を呑んだ。
 地上を照らす丸い月は、太陽と同じあたたかい色をしていた。
 氷を溶かす力はないけれど、夜道を見守るには十分な仄々しい灯りだ。
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