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狐神と、七夕ゼリー

「るーるるーーーー! どるどるーーーー!」
 テレビの前で、白い毛並みの子狐が後ろ足だけで立ち上がって、楽しげに歌っている。ふさふさとした尻尾が、歌う動きに合わせてゆらゆらと揺れていた。
 テレビに映るのは、午後から放送されている大型の音楽番組だ。十時間生放送されるやつでバンドやソロアーティストはもちろん、アイドルグループもたくさん出ている。
 今は女性のアイドルグループが出ているようだ。歌っているものは懐メロと呼ばれるジャンルのものか。最近ではあまり聞かない曲調のものである。彼女らの歌に合わせて、狐神は歌ったり、踊ったりしているようだ。
「あ・い・ど・る・はーーーー! ひとりじゃできないのーーーー!」
「イエイッ!」とアイドルと同じ動きと合いの手を入れる姿は、無邪気な子どもそのものだ。こんなんでも、一応京の都にある稲荷の総本山で働く狐神から生まれた、子狐神である。
 まだまだ半人前の子狐神を育てているのが、お世話係の弥(あまね)だ。二十代に差し掛かったか、それよりも少し下の男性の姿をしているが、地獄で生まれ育った鬼である。
「楽しそうだなあ」
 買い出しから戻ってきたら、この狐神ライブが耳に入ってきた。
「今のうちに」と、弥は早足でキッチンへ移動し、買ってきた物を冷蔵庫や冷凍庫、もしくは野菜室へ押し込んでいく。
 この季節は食中毒が怖いと聞く。暑くなってきたら、冷蔵商品でなくても冷蔵庫に入れておいた方が無難だと、地獄から現世へ引っ越す時に大家さんから聞いた。粉物もだ。常温で放置するとダニが出るそうだ。
 狐神の歌は二曲目に入っている。
 その間に、お世話係はてきぱきとお夕飯の準備を進めた。
 今日は冷たいうどんにしよう。冷凍のうどんはレンジで温めてから水でしめて。おかずは、お総菜の野菜かき揚げを買ってきた。
 デザートは、出掛ける前に仕込んでおいたりんごのゼリー。星形の寒天も乗せてある。
 七夕のゼリーを前にした子狐神は、どんな反応をみせるだろうか。
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