ふわふわ卵
【ふわふわ卵】
夕方の地方番組は、お料理のコーナーがある事が多い。
生まれたばかりの子狐神と、そのお世話をするお世話係の弥(あまね)が引っ越してきた先も、夕方の番組でお料理のコーナーを用意していた。
外はしとしと雨。買い出しに行ける気温でもなく、お世話係はテレビを流したまま、卓上に広げた新聞をのんびりと眺める。
「今日の夕飯はどうしようかなあ……」
新聞を眺めていても、頭の中は献立の事とご飯が終わったあとの片付けとお風呂の段取り。
あの狐神様は、もふもふの毛を持ちながらお風呂が大好きなのだ。先に入れると浴槽に抜けた毛が浮かぶので、お世話係が先に入り後から狐を入れている。
狐神が眠くなる前にご飯を食べて、さっさとお風呂に入らねば。その為にはささっと作れる夕飯が良いのだが、この天気なので食材を買い足しておらず、作れる物も限られている。
一度冷蔵庫の中身を確認してみるかと、新聞を畳んだところで狐神のお世話係を呼ぶ声が耳に響いた。
「あまね! あまね! これ食べたい!」
「はい?」
白い子狐は、ふさふさとした尻尾をゆらゆらと揺らして、テレビにへばりついている。
「そこに居たら見えません」と言うと、素直に身体をずらした。見えたのは、金色の卵に包まれる瞬間のチキンライス。赤く染められたお米と、そこに混ざる白くてふにふにとした鶏肉に、ふわふわとした卵がとろとろと覆うように流れていく様は、何度見ても「美味しそう」という言葉が口から漏れ出てしまう。
「オムライスか……」
でも、オムライスはこの週の頭に作ってるんだよなあ。
「もう一回食べるんですか?」と聞けば、狐神は元気よくうなずいた。
「このまえのは、つつんだだけだった!」
「まあそうですけど」
包んだオムライスだけ知っていればよかったものを。運が良いのか悪いのか、ふわとろオムライスの存在を知ってしまって、食いしん坊のレベルが上がってしまっている。
「まあオムライスなら、家に残っている材料でも作れるからなー」
玉ねぎも半分残っているし、冷凍のミックスベジタブルもある。お肉は鶏肉が無いので豚肉の細切れで代用しよう。卵も狐神分はあるはずだ。お世話係はふわとろを我慢する。あとは、残っている野菜を使ってコンソメスープを作れば、食いしん坊のお腹も満足するはず。
「じゃあ、今から作って来ますね」
「やったー!」
ぴょんぴょこと跳ね騒ぐ姿は引っ越した頃と変わりなく、「しょうがない狐だな」とお世話係が肩をすくめるのもまた、引っ越した頃と変わりない。
夕方の地方番組は、お料理のコーナーがある事が多い。
生まれたばかりの子狐神と、そのお世話をするお世話係の弥(あまね)が引っ越してきた先も、夕方の番組でお料理のコーナーを用意していた。
外はしとしと雨。買い出しに行ける気温でもなく、お世話係はテレビを流したまま、卓上に広げた新聞をのんびりと眺める。
「今日の夕飯はどうしようかなあ……」
新聞を眺めていても、頭の中は献立の事とご飯が終わったあとの片付けとお風呂の段取り。
あの狐神様は、もふもふの毛を持ちながらお風呂が大好きなのだ。先に入れると浴槽に抜けた毛が浮かぶので、お世話係が先に入り後から狐を入れている。
狐神が眠くなる前にご飯を食べて、さっさとお風呂に入らねば。その為にはささっと作れる夕飯が良いのだが、この天気なので食材を買い足しておらず、作れる物も限られている。
一度冷蔵庫の中身を確認してみるかと、新聞を畳んだところで狐神のお世話係を呼ぶ声が耳に響いた。
「あまね! あまね! これ食べたい!」
「はい?」
白い子狐は、ふさふさとした尻尾をゆらゆらと揺らして、テレビにへばりついている。
「そこに居たら見えません」と言うと、素直に身体をずらした。見えたのは、金色の卵に包まれる瞬間のチキンライス。赤く染められたお米と、そこに混ざる白くてふにふにとした鶏肉に、ふわふわとした卵がとろとろと覆うように流れていく様は、何度見ても「美味しそう」という言葉が口から漏れ出てしまう。
「オムライスか……」
でも、オムライスはこの週の頭に作ってるんだよなあ。
「もう一回食べるんですか?」と聞けば、狐神は元気よくうなずいた。
「このまえのは、つつんだだけだった!」
「まあそうですけど」
包んだオムライスだけ知っていればよかったものを。運が良いのか悪いのか、ふわとろオムライスの存在を知ってしまって、食いしん坊のレベルが上がってしまっている。
「まあオムライスなら、家に残っている材料でも作れるからなー」
玉ねぎも半分残っているし、冷凍のミックスベジタブルもある。お肉は鶏肉が無いので豚肉の細切れで代用しよう。卵も狐神分はあるはずだ。お世話係はふわとろを我慢する。あとは、残っている野菜を使ってコンソメスープを作れば、食いしん坊のお腹も満足するはず。
「じゃあ、今から作って来ますね」
「やったー!」
ぴょんぴょこと跳ね騒ぐ姿は引っ越した頃と変わりなく、「しょうがない狐だな」とお世話係が肩をすくめるのもまた、引っ越した頃と変わりない。