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紫陽花の君

『紫陽花の君』
「紫陽花って俺に似てるよね」と、親友が呟く。「どこが?」と問えば「全部だよ」と薄く笑われた。目前にいる男は、突然言葉を投げては勝手に満足して会話を終わらせる。一方的に言葉を投げたかと思えば返す場所を無くされて、こちらは疲弊するばかりだ。うん、気分屋だという意味では似ている。涙雨で傘を濡らし静かに佇む姿も、花弁を濡らす紫陽花にそっくりだ。
 哀愁が男の背に漂っている。
「何があった?」なんて、無粋なことは聞かない。聞いたところで「なにも」と言って、のらりくらりと逃げていく姿が目に浮かぶ。前言撤回だ。お前は、紫陽花そのものだよ。
「そうでしょう?」と笑うように、男の傘がくるりと回った。
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