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自由

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「主文。被告を死刑に処する」

 裁判長に言い渡された己への罰に、思わず笑いそうになってしまった。
 否。裁判などする前から、己は笑っていた。
 己の記憶が正しければ、一人しか人間を殺していない。その場合は、無期懲役か終身刑がオーソドックスな判決だ。
 なのに、検察に送検されてから、増えるわ増えるわ、殺した数が。
 自分の者ではない被害者の数が。
 どうやら、自分の殺人現場の近くで幼女の連続殺人があったそうだ。    
 犯人は大貴族のどら息子。
 息子の罪を、偶々近くで殺人をした己に押し付けて、大貴族は家族一緒に外の国へ逃げてしまった。
 笑ってしまった。
 弁護士の前で、検察官の前で。
 ケラケラと笑ってしまった。
 この国の奴らは、自分可愛さに人を売る。人の生を弄ぶ。
 己も変わらず、一人の生を終わらせた。
 蟲壷の中にいたみたいだ。
 生き残る為に、食い殺し続けるイカれた世界。
 その蓋が今外されて、まぁーるく切り取った空が見えた。

「自由だ」

 裁判長が、己に死刑を言い渡した。
 これで晴れて、己は自由になるのだ。
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