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故郷

画像内 文章

 眩しい程の日差しを浴びつつ、国の境目にある門を潜る。
 久しぶりに潜った故郷の門を背に、一つ息を吐き出した。
 頬や額に玉粒になって現れた汗を手の甲で拭い、道の先にあるぱっくりと口を開けたアーケードを眺める。
 道の両脇に並ぶレンガ造りの商店と道の頭上には、雨を避ける為の屋根がある。道の上にある屋根はガラス製で、天から降り注ぐ光りが道を照らしていた。
 その道を、自分と同じように大きな荷物を背負った者。荷馬車を牽く馬とそれに付き添う者。戻った者に駆け寄る者と、旅立つ者を見送る者が行き来していた。
 人々が集まった国境の付近は、いつ来ても賑やかだ。
「変わらないなあ」と呟きながら、止めていた足を再び動かし、アーケードの中へと身体を進めた。
 商店の店員が客を集める声を耳に入れつつ、アーケードを通り抜ける。
 また一息吐いて、背負っている荷物を背負い直してから、正面を見た。
 白い壁と青い屋根が特徴的な城が、道の先にある。
 外から帰って来た国民を迎えているようだ。
 旅先で幾つもの城を見たが、母国の城が一番美しいと帰る度に思う。
 暑くて熱くてたまらない日差しも、城を前にすると天から城を包み込む金色のベールに見えた。
 足を進めよう。
 母国に帰って来てからは、やりたいことがたくさんある。
 まずは家に戻って汗を流した後、馴染みの食堂に顔を出そう。
 お腹を満たした後は国を横断する川に行き、夕涼みだ。
 川沿いには、夕涼みが出来る川床が幾つもあるのだ。
 家に向かおうと一歩踏み出した時に、真っ先にやることをやっていない事に気づいて、足を止める。
 城に視線を向けて、口を開いた。
「ただいま」
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