学園の沙汰は委員(おに)次第
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「盗撮犯たちは、大人しく停学を受け入れたと……」
全ての授業が終わった放課後。
帰りだす生徒の声が僅かに聞こえる、特別棟の三階。一番端にある情報処理室の手前にある、情報準備室。
部屋の中心に長机を向き合う形で二面広げ、古びたパイプ椅子を並べる。部屋を使わない時は閉められている防火素材の白いカーテンも、今日は開け放たれて夕日の光が差し込んでいた。
並べられたパイプ椅子の中でも、入り口に近い場所に置かれている物を陣取り、一人の男子生徒が筆ペンを片手に日誌を書き込む。
坊主頭。きっちりと着こなされた黒い学生服。胸にある名札には藤原剛と書かれている。ふりがなは、ふじわらつよし。組番号は二年山組。名札の片隅には星形のバッジがあり、彼も執行委員会の一員であることをうかがわせた。
一週間前、この【府立歌舞鬼高等学校獄卒科】に転入して来た二年生であるが、本人の意思も多少あるものの、執行委員会の委員長の目に留まり、この委員会に入会したのだ。
一通りの報告書を作成した所で、ふうと軽く息を吐く。
本日分の日誌を書き終えた。あとは委員長の伊織に確認してもらって、サインを貰うだけである。
その伊織は、放課後の巡回に行っている最中だ。
壁に掛けてある時計で時間を確認して、あと十分ほどで帰って来るだろうと予想する。
それまで、お茶でも飲んで落ち着いていよう。
よっこいせと、書類作業で座りっぱなしだった腰を上げる。
準備室の隅っこに置かれた給湯セット。その中から粉末の緑茶スティックを取りだし、紙コップにあける。
冷蔵庫に閉まっておいた自分の天国印のミネラルウォーターを取りだし、コップへ注いだ。
使い捨てのスプーンでかき混ぜていると、地の底から呻く声が聞こえて来た。
呆れを混ぜ込んだ息を大きく吐き出して、音の方へ視線を向ける。
給湯セットの隣に置かれた固めの古いソファー。人間一人が横になって寝れるそこに、一人の男がいびきをかいて寝ている。
ソファーに広がる、長髪とまではいかないが、耳にかかるくらいのやや長い赤い髪。ボタンを閉めずにはだけている学生服。シャツは着ておらず、柄物のタンクトップが顔を覗かせている。胸にある名札には、芦屋高貴(あしや こうき)と書かれている。組番号は、二年海組。伊織と同じ組だ。ズボンは規定の物をはいておるが、靴下ははいておらず、裸足である。
剛のため息も耳に入らないほど寝入っているのか、ぐーすかといびきが続いている。
この様子では、午後の授業をまともに受けたかどうかも怪しい。