【始めの一歩】
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翌日、私は昨日の段取り通り清水先輩に連れられるまま一緒にバスに乗り込んでいた。ちなみに顧問の武田先生は
「ああ、雛森さんですね、澤村君から聞いています。今日は存分に見学していってくださいね」
と歓迎ムードだった。いやもうほんとすごくいい笑顔。
「向こうに着いたらことりちゃんは私から離れないでね」
『・・・なにかお手伝いできることがあれば何でも言ってください』
「ありがとう、助かる」
清水先輩は私の隣の座席でずっとお話をしてくれる。今日の練習試合の相手のことや一年生のこと。清水先輩はとてもいい人だと思うし、きっとこの人の後輩になったら楽しい、だろうなと思う。
(でも、話せないしコミュニケーションに時間かかるし・・・私は運動部に向かない・・・)
「ちょっと!バス止めてーー‼」
後ろの方から田中先輩の叫び声が聞こえる。・・・賑やかな人たちだなあ。
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道中いろいろありながら青葉城西高校に到着した。同じ一年生の日向君は今日の試合にとても緊張しているようでバスに乗る前から顔色が悪かった。
(だ、大丈夫かなあ・・・)
気になるけれど声をかける術を持たない私は見ることしかできない。
「ことりちゃん、一緒に水道の場所を確認しに行こう」
清水先輩の声にうなずいてもう一度日向君を見てから、後ろ髪を引かれる思いで背を向けた。
水道でボトルに水を入れながら清水先輩が私に話しかける。
「日向のこと気になる?」
いきなり訊かれて驚いたけれど私が正直にうなずくと、清水先輩は私を見ながらくすりと笑う。
「ことりちゃんなりの伝え方で応援してあげればいいと思うよ」
思わず目を見開いた。まさか応援することを勧められるなんて。
(私なりの伝え方・・・)
「よし、体育館戻ろうか」
ボトルのかごを半分ずつ持って私と清水先輩は体育館に戻った。戻ってすぐアップが始まって清水先輩と離れ、隅っこの方からみんなを見る。日向君は相変わらず緊張しているようでボロボロだった。
(何も変わらないかもしれないけど・・・)
カバンからメモ帳とシャーペンを取り出す。心動かすような大層な言葉なんて全く浮かばないけれど、伝えたい言葉はある。
〈練習試合、緊張すると思うけれど頑張ってください。日向君の元気なバレーを楽しみにしています。〉
一枚ちぎって二つに折りたたむ。日向君が戻ってきたら渡そう、そう決意してまっすぐコートに視線を向けた。