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(男子バレー部って第二体育館だったよね・・・)
放課後、一度覗いてみようと意を決して第二体育館を目指して歩く。入部するつもりは毛頭ないけれど、一度だけでもいいから高校生のバレーを近くで見てみたい。
しかし、体育館に到着してすぐ、考えが足りなかったと頭を抱えることになった。
(そうだよね、春と言ってもまだ寒いし・・・扉、閉まっているよね・・・)
私の目の前にはきっちり閉められた体育館の扉。覗くにはこの扉を開けなければならない。さすがに無理。
(・・・諦めよう、大会を覗くくらいで我慢だ、きっと縁がなかっ・・・)
ガラガラガラ
「お?」
(え?)
突然扉が開いて中から人が現れ、時が止まったようにお互いにピクリとも動かない。
(逃げなきゃ!)
その時の私は冷静な判断ができていなかった。急な人の登場にパニックになって、くるりと振り返り走って逃げる。
「あ!ちょちょちょっと待って‼」
(捕まった‼)
スポーツをしている男子高校生に勝てるわけがなく、普通に腕をつかまれて逃げられなくなる。
「そこにいたってことは見学だよね?マネージャー今一人しかいなくて大歓迎だよ!」
腕を引かれるままに引きずられるようにして体育館に足を踏み入れてしまった。
「おーい!マネ希望が来たぞー‼」
(そんな大声で言わないで‼)
先輩と思われる人の大声に体育館中の目が向けられる。
「あれ、雛森さん?」
(山口君!)
知り合いを見つけて少し安心する。どうにかこの先輩に私にはマネージャーは無理だと伝えて・・・。
「雛森さん、バレー部に興味あったんだ!知らなかった!」
(違う!興味はあったけどそうじゃない‼)
「菅原」
「お、清水!この子任せていいか?」
「うん」
先輩マネージャーらしき人も来てしまい本格的に逃げづらくなってしまった。ここでスマホ出すのはちょっと失礼だし、でも事情を説明する手段がないし・・・。私が絶望している間に周りに人が集まってきて、いつの間にか取り囲まれていた。
「名前、訊いてもいい?」
美人な先輩に名前を聞かれてどう答えるか戸惑う。私がなかなか話し出さないから周りが戸惑っているのが空気で分かった。
「あ、雛森さん声が出せないんです」
山口君の言葉に空気が一瞬で重くなる。早々に逃げておけばよかったとか来るんじゃなかったとかそういう後悔の気持ちが大きくなっていく。
(ちょっと覗くだけのつもりだったのに、部活の邪魔をしてしまった)
申し訳なくてうつむくと、マネージャーの先輩が一歩こちらに近づいて、私と目を合わせて手を握った。
「筆談ならできる?いつも学校生活ではどうしているの?」
(え、なんかマネージャーの先輩グイグイくる・・・)
「雛森さんはいつもスマホで会話しています、割と普通に会話しています
よ」
山口君の言葉でマネージャーの先輩は「スマホ出していいよ」と言ってくれたので、私はお言葉に甘えていつものように文字を打ち込んで自己紹介をした。
『・・・一年四組の雛森ことりです・・・バレーは好きですが、今日はちょっと体育館の近くを通っただけです』
マネージャーをやるつもりで来たのではないと遠回しに伝える。ただ通りがかったんです、それ以上でも以下でもないんです。
「バレー好きなんだね、椅子用意するからこっち来て」
(あれ?伝わっていない?)
マネージャーの先輩は相変わらずグイグイきて私の手を引く。え、なんかこれマネージャー希望みたいになってない?私はマネージャーする気ありませんけど・・・。
「清水、後輩欲しかったんだな・・・」
「遠回しに断られた気がしましたけど・・・」
「潔子さんがたくさん話しておられる‼」
後ろで先輩たちがそんな会話を繰り広げているとは露知らず、私はただ先輩に手を引かれるまま見学することになってしまった。