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それからアップが始まって、町内会チームの人たちが到着した。思ったより若い人たちで少し驚いた。なんだか烏養さんと同い年くらいの感じ。
ふと、離れたところを見ると西谷先輩とコーチと澤村先輩が話していた。きっと旭さんがらみの話なんだろうと思う。西谷先輩は旭さんが来るまで試合には出ないって言ってるし…。
(旭さんのバレーも、西谷先輩のバレーも、菅原先輩のバレーも、全部見たいのに)
みんな一生懸命なのに、どうしてうまくいかないんだろう。思っていることは一緒なのに、どうしてすれ違ってしまうんだろう。
「ことりちゃん、こっちお願い!」
清水先輩の声で現実に戻って、敬礼を返し、仕事に戻った。
(私が暗い顔してたってしょうがないし、何も変わらないんだからやることやらなきゃだめだよね、よしがんば)
「あ!アサヒさんだ!」
日向君の言葉に思わず走り出した。
「え、雛森さん?」
後ろから縁下先輩の声が聞こえたけれど構わず入り口から飛び出すと目の前に旭さんがいた。その姿は制服じゃなくて烏野の黒いジャージを着て、手にはバレーシューズを持っていた。
(バレーをしようとしてくれた‼)
「君は…」
旭さんが私を見て目を見開いていると後ろからコーチの怒号が響いた。
「なんだ遅刻か!なめてんのか⁉ポジションどこだ⁉」
「え?う、WS…」
「人足らねえんだ!さっさと入ってアップとれ!すぐすぐ!」
コーチの勢いに押されるまま、旭さんは体育館に入っていった。私も旭さんに続いて急いで仕事に戻る。
(い、勢いのまま飛び出しちゃった…)
何かやりたかったわけじゃなく、ただ旭さんという名前に向かって行ってしまった。向う見ずにもほどがある…。
「あとはセッターか…、俺やりてえけど、外から見てなきゃだしな…、お前らの方からセッター一人貸してくれ!」
コーチの言葉に、菅原先輩と影山君は目を見合わせて、そして菅原先輩の方がゆっくりと動き出した。
「菅原さん!」
影山君が先輩を呼び止めると、先輩が立ち止まる。
「俺に譲るとかじゃないですよね?菅原さんが引いて俺が繰り上げ…みたいなのはごめんですよ」
影山君がそういうと菅原先輩はぎゅっとこぶしを握った。
「俺は、影山が入ってきて正セッター争いしてやるって反面、どこかで…ほっとしてた気がする」
私はさっきの言葉を聞いてしまったから、どこかわかってしまうような気がした。この言葉が、菅原先輩が今まで目を背けてきた本音なのだと。
「セッターはチームの攻撃の軸だ、一番頑丈でいなくちゃいけない。でも俺は、トスを上げることに…ビビってた。俺のトスで、またスパイカーが何度もブロッカーにつかまるのが怖くて、圧倒的な実力の影山の陰に隠れて…安心…してたんだ」
過去の出来事に傷ついていたのは旭さんだけではなくて、トスを上げてスパイカーに思いを託していた菅原先輩も傷ついていたのだとその時私は初めて気づいた。
この選択が最善だと、この人に託すしかないとそう思った自分を責めて、自分の力不足を呪って、嘆いて自分で自分を追い込みすぎてしまったんだ。旭さんも、菅原先輩も。
「スパイクがブロックにつかまる瞬間を考えると、今も怖い。けど…もう一回、俺にトスを上げさせてくれ、旭」
旭さんに向かって言った先輩は力強い目をしていて、この試合が二人にとって何か大切なものになるかもしれないとさっき以上にわくわくした。
そして、旭さん、西谷先輩、菅原先輩が町内会チームに加わって試合が始まる。
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