【諦めない】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
お昼休み、私は一人で三年生の教室の前に立っていた。昨日の旭さんがどんな人か気になったのとどうして練習に来なくなってしまったのかを知るために。
(いや、でもクラスもフルネームもわからないのに来たのはさすがに無謀すぎたか?)
つまり、私はただ行き当たりばったりで三年生の教室に乗り込みに来ただけ…。
「あれ?雛森さん?」
(菅原先輩だ!)
丁度通りかかったようで先輩が声をかけてくれてどうにか安心する。駆け寄ると「どうしたこんなところで」と言われたので、もともと用意していたメモ用紙を見せて事情を説明する。
「…そっか、雛森さんも旭に会いに来てくれたんだな…」
(私も?)
話を聞くと、どうやら私が来る少し前に日向君と影山君も旭さんに会いに三年生の教室に来たらしい、ずるい、誘ってくれればいいのに。
「旭は先生に呼ばれて今はもういないんだ、わざわざ来てくれたのにごめんな」
『…私が勝手に来ただけなので、気にしないでください…また来ます』
すると、菅原先輩は昨日みたいに少し暗い顔をして私の腕をつかんだ。
「…旭、バレーが嫌いになっちゃったかもしれないんだ、だからもしかしたらまた来ても…だめかもしれない」
(バレーが、嫌いに…)
何があったのか、未だにだれも私に説明してくれないからわからないし、私自身がバレーを嫌いになったことがないからわからないけれど、それでもこれは言える。
『…まだ嫌いになったって確証がないなら、あきらめちゃダメです』
「っ…」
『…本人からはっきりそう言われていないなら、あきらめちゃダメです…先輩たちがまだ旭さんとバレーをしたいって思っている限り、旭さんはいつでも帰ってこれます…先輩たちのその気持ちがなくなってしまったとき、旭さんはもう二度と帰ってこれません…だから菅原先輩があきらめないでください』
「偉そうに、すみません」と頭を下げると、先輩はするすると手を放して、笑った。
「後輩の、しかも女の子に励まされるとか、やばいな…」
全然そんなことないですという意味を込めて思いっきり首を左右に振った。私が勝手に語っただけなので!
「はは、そうだよな、まだ帰ってこれるもんな…よし!雛森さんのおかげで目が覚めたわ、ありがと」
その時の菅原先輩は今までと違う、大人の余裕みたいな雰囲気じゃなくて年相応な笑顔で、びっくりしてまたボーっとしてしまった。
キーンコーンカーンコーン
「やばい!予鈴じゃん!ごめん雛森さん!遅れないようにね‼」
大きくうなずいて私は三年生の教室を後にした。
(うん、やっぱり先輩たちは笑っている方がかっこいい)