【新しいつぼみ】2話
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三人は荷物を置いてすぐに談話室へと戻った。
「あ!戻ってきた!」
「じゃあ、早速始めちゃうよ~ん」
その声を合図にわいわいがやがやとひなみの歓迎会が始まった。
「おお!やっぱ歓迎会だから今日のメニューは豪勢だな!」
「そうだけど・・・なんでハヤシライス?」
「ああ、それ、ひなみちゃんの好物らしいぞ」
「好きな食べ物って家族で似る決まりなんてあった?」
学生寮にいたときよりも人数は少ないはずなのに、今までに経験したことのない騒がしさにひなみは戸惑った。
「ひなみちゃん」
「あ!はい!」
ぼーっしていたひなみに咲也が声をかけると少しびくびくしながらも返事が返ってきた。
「よかったらここどうぞ、疲れたでしょ?」
そう言いながら咲也は自分の隣の席を指さした。咲也としては少し緊張気味のひなみを落ち着かせようとした行動だったが、それが一瞬にして意味をなくす。
なぜならここは常に騒がしいMANKAIカンパニーだからだ。
ひなみは断る理由もないし、ずっと突っ立ているわけにもいかないと思い咲也の隣にちょこんと座った。しかしその瞬間いろんな人がひなみに話しかける。
「初めまして!俺、三好一成!ヨロピコ!ねね、ぴーちゃん、ヴァイオリン弾けるってマジ?ちょーやばたん‼」
「え、あ、え、」
「ふむ、同じ芸術家同士仲よくしようではないか」
「え?あ、ど、どちら様で・・・」
「おい、お前、今日から俺はお前の義理の兄だ」
「・・・え?い、いったいどうしてそんな関係に・・・」
「俺は将来監督と結婚する、だから義理の兄だ」
「ええ!お姉ちゃんと結婚⁉」
「ちょ、真澄くん!いきなり嘘を教えるなんてよくないっス!」
「ええ!嘘ー⁉」
「嘘じゃない!」
「どっちですか‼」
「ちょっと、皆さん落ち着いて、ひなみちゃんも戸惑ってますから・・・」
次々に知らない人から自己紹介や衝撃的な話などを投げ込まれ、人見知りのひなみは自分の精神的限界を感じていた。
頼みの綱であるいづみと臣はキッチンで料理の仕上げをしている。ここを一人で乗り越えなければならなかった。
(もう・・・無理かも・・・名前すら聞き取れない・・・お姉ちゃん、伏見さん、誰でもいいから助けて・・・)
「ふふ、監督の妹さん、さっそく人気者だね」
「いや、東さん、笑ってないで助けてやった方がよくないっすか・・・」
「たしかに、万里くんの言うように助けてあげた方がいいかも・・・」
どんどん顔を真っ青にしていくひなみを見て冬組リーダーの月岡紬が動いた。
「みんな、新しい人が来て楽しいのはわかるけど、ひなみちゃんが目を回してるよ、話すなら一人ずつでね」
ひなみからしたらまさに鶴の一声である。紬の言葉にその場が落ち着きを取り戻した。それからは一人一人自己紹介をしていきひなみも落ち着いてみんなの話に耳を傾けることができた。
「あれ?ひなみ、いつの間にみんなの中に・・・」
キッチンから帰ってきたいづみと臣、綴はひなみが緊張しながらもみんなの中に入って話している姿を見て微笑ましくなった。
「思ったよりここに馴染んでくれてよかったすね」
「ほんとにね、正直どうなるかと思ったけど問題なさそうでよかった」
「ひなみちゃん自身がいい子だから、みんな仲良くなりたいと思ってるんだ、とりあえずこの料理を運んで俺たちも話に加わろう」
「そうだね、行こうか」
そうしてひなみの歓迎会は和気あいあいと進んでいった。
中学での食事は自室や空き教室でひとり、こっそりと食べることしかなかった。そのため大人数での食事は、自分が思っているよりも楽しく温かかった。そうしてひなみのMANKAI寮初日は幕を閉じた。