【新しいつぼみ】2話
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「次は~天鵞絨駅~天鵞絨駅~」
(もうすぐ着きます・・・送信)
電車の車内アナウンスを聞いて、すでに目的の駅のホームで自分を待っているであろう姉にLIMEを送る。ひなみはキャリーバックやリュック、ヴァイオリンケースを持って扉の前に立った。
(できるだけ人がいない時間にしてよかった、こんな大荷物ほかの人に邪魔になるし・・・)
「ひなみ!」
改札を出てすぐいづみはひなみを見つけて抱きしめた。
「久しぶり!元気にしてた?少しやせたんじゃない?あ!でも背が伸びてる!」
「ちょっと、お姉ちゃん、くすぐったいよ」
約三年ぶりの家族のぬくもりにひなみもいづみもほほが緩んだ。
「初めまして」
姉の後ろから聞いたことのない男の人の声がして、ひなみは思わずいづみの陰に隠れた。目の前には今まで見たこともないような大柄な男性が穏やかに笑っていた。
「ああ、ごめんな、驚かせるつもりはなかったんだ。俺は伏見臣、秋組で役者をやってる。今日は荷物持ちが必要だろうと思って監督についてきたんだ」
臣はひなみが怖がらないようにと少ししゃがんで目線を合わせて話した。すると、ひなみはそろりといづみの陰からでて、お辞儀をする。
「あ、えっと、初めまして、立花ひなみです。今日からよろしくお願いします。」
いつも怖がられてばかりの臣は、怖がりながらもきちんと挨拶するひなみを見て、ニコリと微笑んだ。きっといい関係を築いていける、そう確信して。
「荷物重かっただろ、寮まで運ぶよ、そのためについてきたんだから」
「え、で、でも・・・」
ひなみはどうするべきかといづみと臣の顔をきょろきょろと交互に見た。その姿にくすりと笑いながらいづみはひなみの手からキャリーを取った。
「せっかく来てくれたんだからお願いしなきゃ逆に失礼じゃない?私がキャリー持つから臣くんにはその大きなリュックを頼めば?」
いづみの言葉を受けて少し悩んだ後、申し訳なさそうにしながらひなみは臣にリュックを差し出した。
「えっと、じゃあすみませんが、お願いします」
「ああ、頼まれた、そっちはヴァイオリンケースだよな?」
「あ、は、はい」
「じゃあそれは自分だ持っていきたいだろ、もし疲れたら言ってくれれば大事に持つよ」
「は、はい!ありがとうございます!」
「じゃあ早速行こうか」
いづみの声を合図に三人とも寮に向かってお互いに(ほぼ臣といづみ)話しながら歩き出した。
(私がヴァイオリンやってること知ってた・・・しかも、すごい気遣ってくれる・・・これがいわゆる紳士・・・)
つい最近まで中学生だったひなみは大人な落ち着い男性など全くと言っていいくらいに出会ったことがなかった。大人と言っても学校の先生くらいであとは同級生。初めての体験にひそかにドキドキしながらいづみと臣について歩いた。いつの間にか、ひなみ自身も知らないうちに臣に対する警戒心は解けていた。
(ふふ、やっぱり最初に会わせるのが臣くんでよかった。ひなみがちゃんと臣くんの隣を歩いてる)
つい先ほどまでは一歩引いて歩いていたひなみが臣と話しているうちに少しづつ距離が近づいて、今はいづみと臣の間におさまって話をしている。臣を連れてきたのはいづみの少しでも早く劇団員や今自分たちが築いてきたカンパニーになじんでほしいという願いがあったからだった。