【新しいつぼみ】1話
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「監督の妹⁉」
とある日のMANKAI寮。夕飯も終わって各々がくつろいでいる時間に数人の劇団員の大きな声が響いた。
「うん、今まで全く話に出してなかったけど、ここまで驚かれるとは・・」
「そりゃあびっくりするでしょ、しかも春からここに一緒に住まわせたいっていったい何があったの」
夏組兼衣装担当である瑠璃川幸が一番に口火を切った。
「一から説明するとね、実は私の妹、ひなみって言うんだけど、ひなみは今まで少し離れた天音学園に通っていたの、天音学園は中高一貫の音楽学校だったから私もお母さんもそのまま天音の高等部に行くものだろうと思ってたの、なのに二月ごろになって急に外部受験するって言い出して、結局受かったんだけど、受けた学校がここの近くの音咲学園で、実家からは通えないし寮に入ろうと思ったらもう満室で入寮できないって言われてっていうもうほんとに踏んだり蹴ったり状態で・・・」
いづみのあまりの力説っぷりにその場のみんなが同情の目を向けた。
「それにしてもあの有名な天音から外部受験だなんて、監督クンの妹さんは思い切ったことをしたね」
冬組、有栖川誉の言葉にみんなが反応した。
「誉さんがそこまで言うなんて、相当有名な学校なんスね・・・」
「監督ちゃんも理由は知らないのか?」
「うん、お母さんも急に受験したいっていうことだけ聞いて理由までは教えてもらえなかったって、ひなみは今までずっと天音に入学するこ
とを夢見てて、特待生にはなれなかったけど嬉しそうに報告してたのに、それが急にほかの学校に行くなんて何かあったんじゃないかと思って・・・」
「確かにそれは心配だな・・・」
「だからどうしても一人暮らしだけはさせたくないの、女の子のしかもまだ十五歳だし、まだ高校生だし、あの子なんかボーっとしてるし!」
「でも、高校生の年頃の女の子は、こんな男だらけの寮いやなんじゃないか?」
秋組、伏見臣の言葉に、学生以外の劇団員がぎくりと体を震わせた。
「た、確かに・・・」
「おじさんなんて言われた日にはしばらく寝込む・・・」
「い、至くんはまだ大丈夫だよ」
「女子高生からしたら二十代も三十代も変わらないでしょ・・・」
「ちょっと大人組、自分で自分の首絞めて傷つくのやめてよ」
「ああ、冬組がどんどん沈んでいく・・・」
「でも、引かれるのはおじさんだけとは限らなくない?」
「ちょっと幸くん、さっきから攻撃力高いかも・・・」
「おじさん以外って例えば・・・?」
「秋組なんてガラ悪すぎて近づきたくないんじゃない?」
「た、たしかに⁉」
「ちょ、なんで監督ちゃんが俺らより先に衝撃受けてんだよ」
「あ、ご、ごめん、盲点だったと思ってつい・・・」
割とごちゃごちゃしてきたところで春組、皆木綴が軌道修正の一言を投げた。
「あの、妹さんのそれはいったん置いといて、俺は監督の妹さんも一緒に住むことは賛成っす、俺も兄弟多くて下の兄弟のこと心配なのすごくわかるし・・・」
綴の言葉を機に、ほかの団員も発言しだした。
「俺も妹いるからカントクちゃんの言ってる意味チョー分かる、それにここだったらカントクちゃん以外にもいろんな経験してきた人がいるし妹ちゃんにとってもいい経験になると思うよん」
「ふむ、同じ芸術家同士お互いにいい刺激になりそうだね」
「お互いやり方は違えど同じ表現者だしな、勉強になりそうだ」
「丞のいうように何かお互い勉強になることもあるんじゃないかな」
次々に妹の同居に対して肯定的な意見が出てきていづみはほっと胸をなでおろした。
「まあ、ボクらが良くても最終的には、妹さんが大丈夫かによるけどね・・・」
冬組、雪白東の言葉に団員が肩を落とす中、いづみだけはまっすぐとみんなを見ていた。
「いいえ、ひなみはきっと大丈夫です、いや、大丈夫にしてみせます!」
「え?ちょ、監督?」
驚いている劇団員をよそにいづみは胸の前でガッツポーズをして興奮したように話し出す。
「ひなみは私以上のお父さんっ子だったのでそこらへんは心配いりません!秋組に関しては・・・どうにかします!」
お父さんっ子というフォローになっていそうでなっていない言葉にダメージを受けている団員と秋組に対する作戦はノープランという不安しか残らない発言を残していづみは母親に電話をかけるために談話室を出た。残された劇団員たちは、各々不安を残しつつもう何も言うまいと口をつぐんだ。
そして、立花いづみの妹、立花ひなみの入寮が三月に決まった。