【新しいつぼみ】4話
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帰り道は迷うことなく無事に寮についた。
(これ・・・普通に入っていってもいいのかな・・・え、でもただいまって入ってくべき?)
第三者からしたら考えすぎな悩みだが、ひなみとしては死活問題ともいえる悩みであった。
昨日来たばかりの自分が図々しく我が家のように入っていくことにみんなはどう思うのか、まるで元からいたかのようにふるまってもよいものか・・・。家族のようなカンパニーの人たちの中に自分は入っていけない。ひなみはここにきてからずっと無意識にカンパニーから一線を引いていた。
ガチャ
「あ」
「あ」
突然開いた玄関から臣が出てきて固まった。しかし、臣はすぐに表情を崩して笑った。
「おかえり、思ったより遅かったな、少し様子を見に行こうと思ってたんだ」
「あ、えっと、た、だいま・・・です」
ひなみのぎこちないただいまに臣は思わず吹き出した。
「はは、なんでそんなにぎこちないんだ、みんな待ってる、堂々と大きな声で言ってやれ」
「は、はい・・・」
ひなみは臣に促されるまま寮に入っていった。リビングからは昨日同様、騒がしい楽しそうな声が聞こえる。
(本当に、ここの人たちは仲がいいな)
リビング入りながら恐る恐る声を上げた。
「た、ただいま~」
「「おかえり/なさい!」」
「思ったより遅かったけど大丈夫だった?」
「あ、はい、地図アプリがうまく動かなくて・・・」
あんなに気にしていたのにいつの間にか普通に会話が始まった。ひなみを一番に迎えたのは一成と椋。
(気にしてたのは私だけ?)
「あ~あるあるだよね~俺も経路案内に道のど真ん中で見捨てられたことある~」
「でも、明るいうちに帰ってこれてよかったね、女の子の一人歩きは危ないし」
「むっくんの言う通り!ぴーちゃんからしたら慣れない場所で怖いだろうしね」
「あ、あ、ご心配ありがとうございます」
「もーぴーちゃん昨日からずっと固いよ!むっくんとゆっきーとは同い年なんだし夏組は全体的に年も近いんだからもっと仲良くなってこー‼」
「ああ、ああ・・・」
((ああー、ひなみちゃんのまれてる・・・・))
一成のチャラ男コミュニケーションに目を回しているひなみを見て周りの劇団員は憐みの目を向けていた。
「ただいま~」
少ししていづみの声がした。ひなみは無意識にみんなと同じように「おかえり」を返していた。
「あれ、ひなみも帰って来たばっかなの?」
ヴァイオリンを持ったままリビングに立っているひなみを見たいづみが声をかける。
「うん、いろいろあって・・・」
「じゃあ一緒に荷物置きに行こ」
「うん!」
仲のいい姉妹の姿を見てその場にほっこりとした空気が流れた。
「にしても、ひなみちゃんって監督以外にはまだ固いっすよね」
「つづるんの言うように、カントクちゃんといるときはああやって笑うけど、俺らの前だとあんま笑わないよね~」
「監督さんとはもともと家族ですし仕方ないんじゃないですか?」
「う~ん、なんというか距離があるというか、溝があるというか・・・」
「そんな来てすぐになじむなんて難しいでしょ、しかも向こうは引っ込み思案な性格だし」
「た、確かに・・・個性的な人多すぎるもんな・・・」
綴のその一言でまじめに話し合っていた人たちの表情が沈んだ。このカンパニーは常人が急に入ってきて馴染めるとは到底思えない。
これもひなみが慣れるしかないだろう。