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純愛賛歌【DB/ピッコロ】
貴女のお名前は?
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いつの間にか用意されていたフカフカの布団に、寝ましょうか、とさっさと布団に潜り込んだ悟飯を見やった夢子はおずおずと布団へと潜り込んだ。
「ねぇ……悟飯君。ホントに私がきてメーワクじゃなかったかな?」
「大丈夫ですよ。お母さんもあぁ言ってますけどとても優しい人ですから」
そうひどく不安げに漏らされた言葉に、夢子を見やった悟飯はニッコリと笑みを浮かべた。
それに綺麗なお母さんだね、と顔を綻ばせた夢子はどこか嬉しそうに布団を握りしめた。
母を褒められたことに悟飯もどこか照れくさそうに笑みを浮かべるとゴロリ、と寝返りを打って夢子へと向き直った。
「明日からきっともっとハードになりますから、ゆっくり寝てくださいね」
「うん、そうする」
あちこち痛む体に苦笑を洩らした夢子はそう言って目を閉じた悟飯を見やると再びねぇ、と声を漏らした。
それに目を開けた悟飯は不思議そうに夢子を見やった。
「何で、悟飯君やピッコロさんは修行してるの……?」
強くなるため?と不思議そうに自分を見やった夢子に、少しだけ困ったように眉を下げた悟飯はう~ん、と声を漏らすと天井を見上げた。
「今から3年後に、とても強い敵が現れるらしくて……。それで今ボク達はその敵を倒すために修行をしてるんです」
「3年後……?なんでそんなことわかるの?」
そう言って目をパチクリとさせた夢子に、苦笑を洩らした悟飯は夢子へと向き直る。
「にわかに信じがたい話ですが、未来から来た男の人がそう言ったんです。
『3年後の5月12日午前10時ごろに西の都にとてつもなく強い敵が現れる』って」
そう言ってどこか真剣な表情を浮かべた悟飯に真実味があるね、と声を漏らした夢子はう~ん、と考えるように天井を見やった。
「私も、3年間修行してその敵と戦うのかな……?」
「良くは分かりませんが、きっとピッコロさんはそのつもりなんでしょうね」
ひどく不思議そうに零された言葉に、同じように天井を見上げた悟飯はどこか楽しそうだったピッコロを思い出すと苦笑を洩らした。
それに再びう~ん、と声を漏らした夢子は私でも強くなれるかな?と不安げに声を漏らすとソッと目を閉じた。
すぐに聞えてきた寝息に、夢子へと視線を戻した悟飯はスゥスゥと眠る夢子を見やると苦笑を漏らして布団に丸まった。
「なれますよ、きっと」
だって師匠はピッコロさんですから、と小さく漏らした悟飯もすぐに眠りに落ちていった。
―――――――
そしてあっという間にピッコロとの修行も半月が経った。
だいぶ受け身も取れるようになり、防がれてしまうがピッコロに攻撃を仕掛けるようになった夢子を見て悟飯は少し驚いたように瞬きをした。
自分達の体術の型を見よう見真似とはいえいつの間にか体得している夢子に、やっぱりピッコロさんは凄いや、と感嘆の声を漏らした。
「やぁっ!!」
ペシン、と可愛らしい音を立ててピッコロの手のひらに打ちつけられた拳にまぁまぁか、と息を荒げる夢子を見下ろしたピッコロは再び自分に向かってきた夢子の襟首を掴み上げた。
突然のことに情けない声を漏らした夢子は宙ぶらりんになった体に自分を掴むピッコロを不思議そうに見上げた。
「どう、したんです……?」
「組み手はこのぐらいにしてそろそろ本格的に貴様に武術を教える」
行くぞ、と言って宙に浮きあがったピッコロに、まだその浮遊感に慣れないのか夢子はピッコロの腕にしがみつくと隣を飛ぶ悟飯へと視線を向けた。
「ほ、本格的……?あれ?今までだってちょっとハード……」
だったような、と声を漏らした夢子に悟飯は苦笑を洩らすとピッコロを見やった。
「僕がピッコロさんに武術を教えてもらった時は4歳でしたけど、強くなれ、って離島に一人放り出されましたよ」
アレは怖かったなぁ、としみじみと声を漏らした悟飯にえ゛?とピッコロを見やった夢子はクツリ、とどこか楽しげに喉を震わせた目の前の師匠を見やると諦めたように溜息を吐きだした。
目的地に到着したのか地面へと降り立ったピッコロは掴んでいた夢子をポイ、と投げ捨てると周囲を見渡した。
少しだけ小高い岩山が立ち並ぶそこに、ふむ、と声を漏らしたピッコロは投げ捨てられることを予想していたんだろう綺麗に着地を決めた夢子へと視線を落とした。
「これから貴様には舞空術を習得してもらう」
せいぜい頑張ることだな、と言うや否や夢子を崖から蹴り落としたピッコロにへ…?と声を漏らした夢子は真っ逆さまに下へを落ちていく。
軽く3メートルはある岩山から落下した夢子は所々に突き出していた突起に体を打ちつけながら減速しベシャリ、と地面へと顔からダイブする。
それを見ていた悟飯はボクの時より酷いや、と小さく零すとすぐさま夢子の元へと飛び降りた。
シュタッ、と事も無げにあの高さから降りてきた悟飯に、痛む顔を押さえていた夢子は憎々しそうに上に立つピッコロを見上げた。
「え、何あの人……人のこと虎かなんかと間違えてるんじゃない……?」
何で急に突き落とされたの?と声を漏らした夢子に、ここ最近ではちょくちょくと不満を漏らす様になった夢子を見やった悟飯はクスリ、と苦笑を洩らした。
「確かにやり方は荒いかもしれませんが、コレが一番手っ取り早いのも確かですよ」
と言った悟飯に、鬼か、と小さく零した夢子はシュタ、と上から降りてきたピッコロを見やると小さく眉を顰めた。
「あの、師匠……出来ればもう少し優しく……」
「ほぅ……、では俺と本気で組み手をして気のコントロールを憶えるか?」
「すんませんっしたっ!!」
そう言って極悪人のような笑みを浮かべたピッコロに夢子はすぐさま頭を下げると立ち上がり体に着いた埃をはたき落とした。
小さく溜息を吐きだした夢子に、再び岩山へと飛び上がったピッコロはさっさと戻ってこい、と言うとそんな夢子と悟飯を見下ろした。
「ねぇ……ピッコロさんって弟子に対する愛とかあるのかな……」
「夢子ちゃんはボク達みたいに丈夫じゃないですから、きっとピッコロさんなりの配慮ですよ」
この修行も、と言ってさっさと上へと登って行ってしまった悟飯に、これが優しさと言えるんだろうか…、と小首を傾げた夢子も睨みを利かせるピッコロを見やると慌てたように岩山を上り始めた。
崖の上から落とされてはよじ登ってを繰り返すうちに着地だけは綺麗に取れるようになった夢子。
けれど一向に舞空術を発動できない夢子を見やったピッコロはトン、と綺麗に地面へと着地した夢子を見下ろすと徐に夢子の元へと降り立った。
自分の元へと降りてきたピッコロに、同じように夢子の側へと降り立った悟飯を見やった夢子は不思議そうに自分を見下ろすピッコロを見上げた。
「えー、っと……ピッコロさん?」
どうしたの?と声を漏らした夢子は再び掴まれた襟首にうわぁ?!と声を上げるとピッコロの体へとしがみ付いた。
「無駄に着地だけは上手くなりおって……。らちがあかんな、もう少し高いところでやるとしよう」
そう言って再び宙へと舞い上がったピッコロにえっ?!と声を上げた夢子はみるみるうちに高度を上げていくピッコロにちょっと待って!と声を漏らしたがどうやらピッコロは聞くきはないらしい。
ペイ、と地面へ投げ捨てられた夢子は風が吹き抜ける岩山にそこからソッと下を見下ろした。
「え……?いやいやいや、ないでしょ……」
流石にコレは無理、と声を漏らした夢子は先程の倍近くの高さのソレにハハハ、と乾いた笑みを浮かべるとピッコロを振り返った。
それに腕組みをしたピッコロはスッと片足を上げる。
再び崖のような岩山から自分をつき落そうとしたピッコロに慌ててその蹴りを避けた夢子は冗談でしょ?!と声を上げ悟飯の後ろへと逃げ込む。
「ちょ、悟飯君からも何か言ってよ!!」
死んじゃう!!と悟飯の肩を揺さぶった夢子に、苦笑を洩らした悟飯は眉間に皺を寄せるピッコロへと視線を向けた。
「まずは気を体内に循環させる方法から教えた方が良いんじゃないですか?」
「ソイツはもう気は扱える」
そう言ってフン、と鼻を鳴らしたピッコロに、え…?と声を漏らした悟飯はひどく驚いたように夢子へと視線を向けた。
二人の会話についていけないのか向けられる視線に身を小さくさせた夢子はソッと悟飯の後ろへと身を隠す。
「でも……気を使って組み手してる所なんて全然見てませんよ?」
ボク、とピッコロへと視線を戻した悟飯に、悟飯を一瞥して夢子へと視線を向けたピッコロはどこか悩ましげに声を漏らした。
「おい、夢子。俺様と出会ったときのアレをやって見せろ」
「ア、アレ……?」
突然かけられた声に戸惑ったようにピッコロを見やった夢子は何を言っているんだろう、と首を傾げた。
「あの常人離れしたジャンプだ」
「あ、あぁ……アレか」
そう言ったピッコロにジャンプ?と声を漏らした悟飯は自分の後ろから出てきて岩山の端へと立った夢子を不思議そうに見やった。
グッグッ、と屈伸をして体をほぐした夢子はヨシ、と気合を入れると遠くに見える岩山を見やった。
「ホッ!!」
ダンッ!!と地面を物凄い勢いで蹴りあげ空高く飛躍した夢子は100メートル近く離れた岩山へと着地を決めた。
「コレで良いんですかー?!」
そう大手を振ってピッコロ達を振り返った夢子に悟飯はポカン、と呆けたように口を開け夢子を見やった。
「使っているだろう……?」
「た、確かに……。さっき一瞬でしたけど、足に気が集中しましたね……」
え?と声を漏らした悟飯は再びこちらへと戻ってきた夢子を見やるとパチクリ、と瞬きをした。
ズザー!!と土煙を上げて足で勢いを殺し止まった夢子は小さく息を吐きだすとコレがなんです?と不思議そうにピッコロを振り返った。
「ようは気は使えているんだ。あとはソレのコントロールの仕方を体に叩きこめば良いだけのこと」
そう言って行って来い。と自分の元へと戻ってきた夢子を足蹴にしたピッコロに、夢子はえっ?と声を漏らすと岩山から真っ逆さまに落ちていった。
ギャーーー!!と聞こえた叫び声に慌てて下を見下ろした悟飯は一瞬だけ空中で静止してベシャリ、と地面に顔からダイブした夢子を見やると一瞬浮いた!と歓喜の声を漏らしたのだった。
「アンタは私を殺す気か?!!」
鼻血を垂らしながらなんとかてっぺんまで戻ってきた夢子は平然とそこに立つピッコロを睨みつけるとクソ、と悪態をついた。
「何か感じたことはないか?」
擦り傷だらけの体に、それでも大した怪我をしていない夢子を見やったピッコロはそう言うと不貞腐れる夢子へと視線を落とした。
そう言ったピッコロに、夢子はピッコロへと視線を向けると小さく眉を顰めた。
「物凄い恐怖を感じた」
師匠に。と言った夢子にソレは良かった、と言葉を返したピッコロは再び夢子を足蹴にした。
「ちょっ?!この鬼ーーーーー!!!」
一気に下がった視線にあと一歩と言うところでピッコロの道着を掴み損ねた夢子は再び岩山から落下する。
木霊する夢子の叫び声にフン、と鼻を鳴らしたピッコロは今度こそ減速してポテン、と地面に落ちた夢子を見やると小さく口元に弧をかいた。
「あの……師匠……?一つ、聞いても良いですか?」
「何だ」
「コレは、いったいどういう状況………」
それから何度も岩山から突き落とされた夢子は、自分でも空中で一瞬静止して落ちるていることに気がつくと顔を綻ばせた。
やった!飛べるようになった!とはしゃいでいた夢子を再び脇に抱えて何も言わず場所を移動したピッコロに、夢子は断崖絶壁の崖から後ろに立つピッコロを振り返った。
「見て分かるだろう、崖の上だ」
標高ウン千メートルのな。とクツリと喉を震わせたピッコロに再び崖の下を覗き込んだ夢子は下から吹き抜ける風にゴクリ、と生唾を飲み込んだ。
地面の見えないソコに、夢子は流石に冗談だろ、とソッと悟飯へと視線を向ける。
ヒシヒシと伝わるSOSのサインに、悟飯は困ったように笑みを浮かべるとソッと夢子から視線を逸らしてしまった。
「いや、ちょっと、考え直そうよピッコロさん……」
可愛い弟子を殺す気?とハハハ、と笑った夢子は掴まれた道着の帯にジタバタと足をバタつかせた。
「ホ、ホント無理だって!!マジで死ぬって!!」
「だったら死なないように空を飛べ」
どうにか逃げようともがく夢子に、崖の縁へと立ったピッコロは夢子を崖の先へと突き出した。
プラプラと揺れる体に、ピッコロの腕を掴んだ夢子は絶対落とされるものか、と必死にピッコロの腕へとしがみつく。
「ピ、ピッコロさんっ……、ホントやめて……だめ、この高さは洒落になんないよ……」
カタカタと震え、目に涙を浮かべた夢子に、そんな夢子を見やったピッコロは微かに眉を顰めると小さく息を吐きだした。
「そうか……それならば仕方ないな……」
そう言ってどこか呆れたように肩をすくませたピッコロにホッと息を吐きだした夢子はしがみついていたピッコロの腕を離す。
「とでも言うと思ったか……?俺は弟子は甘やかさない主義なんでな」
「え………?」
良かったー、と声を漏らし笑みを浮かべた夢子に、クツリ、と喉を震わせたピッコロはせいぜい死ぬなよ、と声をかけると掴んでいた道着の帯からパッと手を離した。
瞬間ガクン、と下がった視線に重力に従い下へと落ちる体。
ヒッ!!!と引きつった声を漏らした夢子は頭から落下する体に手足をバタつかせた。
「ウソでしょ?!マジで落としたぞあの緑っ………!!!」
ビュウビュウと顔を叩きつける風に、尋常じゃないスピードで落下する夢子は一瞬だけ見えた至極楽しそうなピッコロの顔を思い出すとクソッ!!と声を漏らした。
「死、死んだら化けて出てやるからな――――っ!!!」
クソ緑っ!!と声を上げた夢子は見えた地面にサッと顔を青くさせた。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいッッッ!!」
徐々に近づいてくる地面にガチガチと歯を鳴らした夢子は零れる涙に、もう駄目っ!!と声を漏らし固く目を瞑った。
――――キキッ!!
ガックン、とまるで急ブレーキをかけたように止まった体に、違和感を覚えた夢子は目をソッと開くとえ?と声を漏らした。
地上から離れた遥か上空でフワフワと浮く体に、徐々に地面から遠ざかる体に夢子は浮いてる…、と声を漏らすと急に下がった視線に再びギャァッ!!と悲鳴を上げた。
飛んだと思ったら急に落ちる体に、今度こそ死んだ、と目を瞑った夢子はガシリ、と掴まれた道着に自分を空中で捉えたピッコロを見やった。
「やればできるではないか」
そう言ってクツリ、と喉を震わせたピッコロに、縋る様にその体へとしがみ付いた夢子はギュッと眉間に皺を寄せるとボロボロと涙を流し始めた。
「じ、死ぬかとおぼっだっ……!!」
「ちゃんと生きているだろ」
「ご、怖がっだ……!!」
そう言ってピッコロの胸に顔を押しつけた夢子はぅえっ、と嗚咽を漏らすとワンワンと泣き始めた。
痛いくらいに伝わってくる恐怖の念に、ピッコロは肩を震わせる夢子を見下ろすとどこか困ったようにその背を撫でた。
ポン、ポン、と優しい手つきで背中を撫でるピッコロに徐々に落ち着きを取り戻してきた夢子はグズッ、と鼻水を啜るときつくピッコロの道着を握りしめた。
「寿命が50年ぐらい縮んだ……」
「何を大げさな……」
そう小さく零した言葉に、呆れたように溜息を吐きだしたピッコロはスルリ、と落ちた手に怪訝そうに腕の中の夢子を見下ろした。
スゥスゥと寝息を立てる夢子に、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったその顔を見やったピッコロは苦笑を洩らすとマントの裾で夢子の顔を拭くと夢子を起こさないようにゆっくりと上昇を始めた。
「上手く行っても行かなくてもちゃんと地面すれすれで助けるつもりだったんでしょ?」
ピッコロさん、と珍しくスピードを緩めて空を飛ぶピッコロに、夢子を崖に落としてそのあとを追いかけるように崖から降りたピッコロを思い出した悟飯はそう言うとクスリ、と笑みを零した。
それに悟飯を一瞥したピッコロはフン、と鼻息を漏らすと腕の中で眠る2番弟子を見下ろした。
緩く掴まれた道着に、ひどく疲れた様子の彼女を見やったピッコロは加減が難しいな、と小さく零すと見えてきた孫家に夢子を抱え直した。
舞空術、始めました
「ねぇ……悟飯君。ホントに私がきてメーワクじゃなかったかな?」
「大丈夫ですよ。お母さんもあぁ言ってますけどとても優しい人ですから」
そうひどく不安げに漏らされた言葉に、夢子を見やった悟飯はニッコリと笑みを浮かべた。
それに綺麗なお母さんだね、と顔を綻ばせた夢子はどこか嬉しそうに布団を握りしめた。
母を褒められたことに悟飯もどこか照れくさそうに笑みを浮かべるとゴロリ、と寝返りを打って夢子へと向き直った。
「明日からきっともっとハードになりますから、ゆっくり寝てくださいね」
「うん、そうする」
あちこち痛む体に苦笑を洩らした夢子はそう言って目を閉じた悟飯を見やると再びねぇ、と声を漏らした。
それに目を開けた悟飯は不思議そうに夢子を見やった。
「何で、悟飯君やピッコロさんは修行してるの……?」
強くなるため?と不思議そうに自分を見やった夢子に、少しだけ困ったように眉を下げた悟飯はう~ん、と声を漏らすと天井を見上げた。
「今から3年後に、とても強い敵が現れるらしくて……。それで今ボク達はその敵を倒すために修行をしてるんです」
「3年後……?なんでそんなことわかるの?」
そう言って目をパチクリとさせた夢子に、苦笑を洩らした悟飯は夢子へと向き直る。
「にわかに信じがたい話ですが、未来から来た男の人がそう言ったんです。
『3年後の5月12日午前10時ごろに西の都にとてつもなく強い敵が現れる』って」
そう言ってどこか真剣な表情を浮かべた悟飯に真実味があるね、と声を漏らした夢子はう~ん、と考えるように天井を見やった。
「私も、3年間修行してその敵と戦うのかな……?」
「良くは分かりませんが、きっとピッコロさんはそのつもりなんでしょうね」
ひどく不思議そうに零された言葉に、同じように天井を見上げた悟飯はどこか楽しそうだったピッコロを思い出すと苦笑を洩らした。
それに再びう~ん、と声を漏らした夢子は私でも強くなれるかな?と不安げに声を漏らすとソッと目を閉じた。
すぐに聞えてきた寝息に、夢子へと視線を戻した悟飯はスゥスゥと眠る夢子を見やると苦笑を漏らして布団に丸まった。
「なれますよ、きっと」
だって師匠はピッコロさんですから、と小さく漏らした悟飯もすぐに眠りに落ちていった。
―――――――
そしてあっという間にピッコロとの修行も半月が経った。
だいぶ受け身も取れるようになり、防がれてしまうがピッコロに攻撃を仕掛けるようになった夢子を見て悟飯は少し驚いたように瞬きをした。
自分達の体術の型を見よう見真似とはいえいつの間にか体得している夢子に、やっぱりピッコロさんは凄いや、と感嘆の声を漏らした。
「やぁっ!!」
ペシン、と可愛らしい音を立ててピッコロの手のひらに打ちつけられた拳にまぁまぁか、と息を荒げる夢子を見下ろしたピッコロは再び自分に向かってきた夢子の襟首を掴み上げた。
突然のことに情けない声を漏らした夢子は宙ぶらりんになった体に自分を掴むピッコロを不思議そうに見上げた。
「どう、したんです……?」
「組み手はこのぐらいにしてそろそろ本格的に貴様に武術を教える」
行くぞ、と言って宙に浮きあがったピッコロに、まだその浮遊感に慣れないのか夢子はピッコロの腕にしがみつくと隣を飛ぶ悟飯へと視線を向けた。
「ほ、本格的……?あれ?今までだってちょっとハード……」
だったような、と声を漏らした夢子に悟飯は苦笑を洩らすとピッコロを見やった。
「僕がピッコロさんに武術を教えてもらった時は4歳でしたけど、強くなれ、って離島に一人放り出されましたよ」
アレは怖かったなぁ、としみじみと声を漏らした悟飯にえ゛?とピッコロを見やった夢子はクツリ、とどこか楽しげに喉を震わせた目の前の師匠を見やると諦めたように溜息を吐きだした。
目的地に到着したのか地面へと降り立ったピッコロは掴んでいた夢子をポイ、と投げ捨てると周囲を見渡した。
少しだけ小高い岩山が立ち並ぶそこに、ふむ、と声を漏らしたピッコロは投げ捨てられることを予想していたんだろう綺麗に着地を決めた夢子へと視線を落とした。
「これから貴様には舞空術を習得してもらう」
せいぜい頑張ることだな、と言うや否や夢子を崖から蹴り落としたピッコロにへ…?と声を漏らした夢子は真っ逆さまに下へを落ちていく。
軽く3メートルはある岩山から落下した夢子は所々に突き出していた突起に体を打ちつけながら減速しベシャリ、と地面へと顔からダイブする。
それを見ていた悟飯はボクの時より酷いや、と小さく零すとすぐさま夢子の元へと飛び降りた。
シュタッ、と事も無げにあの高さから降りてきた悟飯に、痛む顔を押さえていた夢子は憎々しそうに上に立つピッコロを見上げた。
「え、何あの人……人のこと虎かなんかと間違えてるんじゃない……?」
何で急に突き落とされたの?と声を漏らした夢子に、ここ最近ではちょくちょくと不満を漏らす様になった夢子を見やった悟飯はクスリ、と苦笑を洩らした。
「確かにやり方は荒いかもしれませんが、コレが一番手っ取り早いのも確かですよ」
と言った悟飯に、鬼か、と小さく零した夢子はシュタ、と上から降りてきたピッコロを見やると小さく眉を顰めた。
「あの、師匠……出来ればもう少し優しく……」
「ほぅ……、では俺と本気で組み手をして気のコントロールを憶えるか?」
「すんませんっしたっ!!」
そう言って極悪人のような笑みを浮かべたピッコロに夢子はすぐさま頭を下げると立ち上がり体に着いた埃をはたき落とした。
小さく溜息を吐きだした夢子に、再び岩山へと飛び上がったピッコロはさっさと戻ってこい、と言うとそんな夢子と悟飯を見下ろした。
「ねぇ……ピッコロさんって弟子に対する愛とかあるのかな……」
「夢子ちゃんはボク達みたいに丈夫じゃないですから、きっとピッコロさんなりの配慮ですよ」
この修行も、と言ってさっさと上へと登って行ってしまった悟飯に、これが優しさと言えるんだろうか…、と小首を傾げた夢子も睨みを利かせるピッコロを見やると慌てたように岩山を上り始めた。
崖の上から落とされてはよじ登ってを繰り返すうちに着地だけは綺麗に取れるようになった夢子。
けれど一向に舞空術を発動できない夢子を見やったピッコロはトン、と綺麗に地面へと着地した夢子を見下ろすと徐に夢子の元へと降り立った。
自分の元へと降りてきたピッコロに、同じように夢子の側へと降り立った悟飯を見やった夢子は不思議そうに自分を見下ろすピッコロを見上げた。
「えー、っと……ピッコロさん?」
どうしたの?と声を漏らした夢子は再び掴まれた襟首にうわぁ?!と声を上げるとピッコロの体へとしがみ付いた。
「無駄に着地だけは上手くなりおって……。らちがあかんな、もう少し高いところでやるとしよう」
そう言って再び宙へと舞い上がったピッコロにえっ?!と声を上げた夢子はみるみるうちに高度を上げていくピッコロにちょっと待って!と声を漏らしたがどうやらピッコロは聞くきはないらしい。
ペイ、と地面へ投げ捨てられた夢子は風が吹き抜ける岩山にそこからソッと下を見下ろした。
「え……?いやいやいや、ないでしょ……」
流石にコレは無理、と声を漏らした夢子は先程の倍近くの高さのソレにハハハ、と乾いた笑みを浮かべるとピッコロを振り返った。
それに腕組みをしたピッコロはスッと片足を上げる。
再び崖のような岩山から自分をつき落そうとしたピッコロに慌ててその蹴りを避けた夢子は冗談でしょ?!と声を上げ悟飯の後ろへと逃げ込む。
「ちょ、悟飯君からも何か言ってよ!!」
死んじゃう!!と悟飯の肩を揺さぶった夢子に、苦笑を洩らした悟飯は眉間に皺を寄せるピッコロへと視線を向けた。
「まずは気を体内に循環させる方法から教えた方が良いんじゃないですか?」
「ソイツはもう気は扱える」
そう言ってフン、と鼻を鳴らしたピッコロに、え…?と声を漏らした悟飯はひどく驚いたように夢子へと視線を向けた。
二人の会話についていけないのか向けられる視線に身を小さくさせた夢子はソッと悟飯の後ろへと身を隠す。
「でも……気を使って組み手してる所なんて全然見てませんよ?」
ボク、とピッコロへと視線を戻した悟飯に、悟飯を一瞥して夢子へと視線を向けたピッコロはどこか悩ましげに声を漏らした。
「おい、夢子。俺様と出会ったときのアレをやって見せろ」
「ア、アレ……?」
突然かけられた声に戸惑ったようにピッコロを見やった夢子は何を言っているんだろう、と首を傾げた。
「あの常人離れしたジャンプだ」
「あ、あぁ……アレか」
そう言ったピッコロにジャンプ?と声を漏らした悟飯は自分の後ろから出てきて岩山の端へと立った夢子を不思議そうに見やった。
グッグッ、と屈伸をして体をほぐした夢子はヨシ、と気合を入れると遠くに見える岩山を見やった。
「ホッ!!」
ダンッ!!と地面を物凄い勢いで蹴りあげ空高く飛躍した夢子は100メートル近く離れた岩山へと着地を決めた。
「コレで良いんですかー?!」
そう大手を振ってピッコロ達を振り返った夢子に悟飯はポカン、と呆けたように口を開け夢子を見やった。
「使っているだろう……?」
「た、確かに……。さっき一瞬でしたけど、足に気が集中しましたね……」
え?と声を漏らした悟飯は再びこちらへと戻ってきた夢子を見やるとパチクリ、と瞬きをした。
ズザー!!と土煙を上げて足で勢いを殺し止まった夢子は小さく息を吐きだすとコレがなんです?と不思議そうにピッコロを振り返った。
「ようは気は使えているんだ。あとはソレのコントロールの仕方を体に叩きこめば良いだけのこと」
そう言って行って来い。と自分の元へと戻ってきた夢子を足蹴にしたピッコロに、夢子はえっ?と声を漏らすと岩山から真っ逆さまに落ちていった。
ギャーーー!!と聞こえた叫び声に慌てて下を見下ろした悟飯は一瞬だけ空中で静止してベシャリ、と地面に顔からダイブした夢子を見やると一瞬浮いた!と歓喜の声を漏らしたのだった。
「アンタは私を殺す気か?!!」
鼻血を垂らしながらなんとかてっぺんまで戻ってきた夢子は平然とそこに立つピッコロを睨みつけるとクソ、と悪態をついた。
「何か感じたことはないか?」
擦り傷だらけの体に、それでも大した怪我をしていない夢子を見やったピッコロはそう言うと不貞腐れる夢子へと視線を落とした。
そう言ったピッコロに、夢子はピッコロへと視線を向けると小さく眉を顰めた。
「物凄い恐怖を感じた」
師匠に。と言った夢子にソレは良かった、と言葉を返したピッコロは再び夢子を足蹴にした。
「ちょっ?!この鬼ーーーーー!!!」
一気に下がった視線にあと一歩と言うところでピッコロの道着を掴み損ねた夢子は再び岩山から落下する。
木霊する夢子の叫び声にフン、と鼻を鳴らしたピッコロは今度こそ減速してポテン、と地面に落ちた夢子を見やると小さく口元に弧をかいた。
「あの……師匠……?一つ、聞いても良いですか?」
「何だ」
「コレは、いったいどういう状況………」
それから何度も岩山から突き落とされた夢子は、自分でも空中で一瞬静止して落ちるていることに気がつくと顔を綻ばせた。
やった!飛べるようになった!とはしゃいでいた夢子を再び脇に抱えて何も言わず場所を移動したピッコロに、夢子は断崖絶壁の崖から後ろに立つピッコロを振り返った。
「見て分かるだろう、崖の上だ」
標高ウン千メートルのな。とクツリと喉を震わせたピッコロに再び崖の下を覗き込んだ夢子は下から吹き抜ける風にゴクリ、と生唾を飲み込んだ。
地面の見えないソコに、夢子は流石に冗談だろ、とソッと悟飯へと視線を向ける。
ヒシヒシと伝わるSOSのサインに、悟飯は困ったように笑みを浮かべるとソッと夢子から視線を逸らしてしまった。
「いや、ちょっと、考え直そうよピッコロさん……」
可愛い弟子を殺す気?とハハハ、と笑った夢子は掴まれた道着の帯にジタバタと足をバタつかせた。
「ホ、ホント無理だって!!マジで死ぬって!!」
「だったら死なないように空を飛べ」
どうにか逃げようともがく夢子に、崖の縁へと立ったピッコロは夢子を崖の先へと突き出した。
プラプラと揺れる体に、ピッコロの腕を掴んだ夢子は絶対落とされるものか、と必死にピッコロの腕へとしがみつく。
「ピ、ピッコロさんっ……、ホントやめて……だめ、この高さは洒落になんないよ……」
カタカタと震え、目に涙を浮かべた夢子に、そんな夢子を見やったピッコロは微かに眉を顰めると小さく息を吐きだした。
「そうか……それならば仕方ないな……」
そう言ってどこか呆れたように肩をすくませたピッコロにホッと息を吐きだした夢子はしがみついていたピッコロの腕を離す。
「とでも言うと思ったか……?俺は弟子は甘やかさない主義なんでな」
「え………?」
良かったー、と声を漏らし笑みを浮かべた夢子に、クツリ、と喉を震わせたピッコロはせいぜい死ぬなよ、と声をかけると掴んでいた道着の帯からパッと手を離した。
瞬間ガクン、と下がった視線に重力に従い下へと落ちる体。
ヒッ!!!と引きつった声を漏らした夢子は頭から落下する体に手足をバタつかせた。
「ウソでしょ?!マジで落としたぞあの緑っ………!!!」
ビュウビュウと顔を叩きつける風に、尋常じゃないスピードで落下する夢子は一瞬だけ見えた至極楽しそうなピッコロの顔を思い出すとクソッ!!と声を漏らした。
「死、死んだら化けて出てやるからな――――っ!!!」
クソ緑っ!!と声を上げた夢子は見えた地面にサッと顔を青くさせた。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいッッッ!!」
徐々に近づいてくる地面にガチガチと歯を鳴らした夢子は零れる涙に、もう駄目っ!!と声を漏らし固く目を瞑った。
――――キキッ!!
ガックン、とまるで急ブレーキをかけたように止まった体に、違和感を覚えた夢子は目をソッと開くとえ?と声を漏らした。
地上から離れた遥か上空でフワフワと浮く体に、徐々に地面から遠ざかる体に夢子は浮いてる…、と声を漏らすと急に下がった視線に再びギャァッ!!と悲鳴を上げた。
飛んだと思ったら急に落ちる体に、今度こそ死んだ、と目を瞑った夢子はガシリ、と掴まれた道着に自分を空中で捉えたピッコロを見やった。
「やればできるではないか」
そう言ってクツリ、と喉を震わせたピッコロに、縋る様にその体へとしがみ付いた夢子はギュッと眉間に皺を寄せるとボロボロと涙を流し始めた。
「じ、死ぬかとおぼっだっ……!!」
「ちゃんと生きているだろ」
「ご、怖がっだ……!!」
そう言ってピッコロの胸に顔を押しつけた夢子はぅえっ、と嗚咽を漏らすとワンワンと泣き始めた。
痛いくらいに伝わってくる恐怖の念に、ピッコロは肩を震わせる夢子を見下ろすとどこか困ったようにその背を撫でた。
ポン、ポン、と優しい手つきで背中を撫でるピッコロに徐々に落ち着きを取り戻してきた夢子はグズッ、と鼻水を啜るときつくピッコロの道着を握りしめた。
「寿命が50年ぐらい縮んだ……」
「何を大げさな……」
そう小さく零した言葉に、呆れたように溜息を吐きだしたピッコロはスルリ、と落ちた手に怪訝そうに腕の中の夢子を見下ろした。
スゥスゥと寝息を立てる夢子に、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったその顔を見やったピッコロは苦笑を洩らすとマントの裾で夢子の顔を拭くと夢子を起こさないようにゆっくりと上昇を始めた。
「上手く行っても行かなくてもちゃんと地面すれすれで助けるつもりだったんでしょ?」
ピッコロさん、と珍しくスピードを緩めて空を飛ぶピッコロに、夢子を崖に落としてそのあとを追いかけるように崖から降りたピッコロを思い出した悟飯はそう言うとクスリ、と笑みを零した。
それに悟飯を一瞥したピッコロはフン、と鼻息を漏らすと腕の中で眠る2番弟子を見下ろした。
緩く掴まれた道着に、ひどく疲れた様子の彼女を見やったピッコロは加減が難しいな、と小さく零すと見えてきた孫家に夢子を抱え直した。
舞空術、始めました