夢小説内でのお名前の変更設定
金色猫とタンゴ
貴女のお名前は?
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――ピンポーン
カタカタとキーボードの音だけが響いていた部屋に鳴り響いたチャイムの音にピタリ、と作業の手を止めたマルコは怪訝そうに玄関口を振り返ると眉を顰めさせた。
時間で言えばもういいところ皆寝ている時間であろう夜11時に、脳裏に過った同僚達の顔を思い浮かべたマルコは面倒臭ぇ…、と家に来るとすぐ宴会を始める同僚達にそう小さく零すとチャイムの音も聞こえぬふりをして再びPCへと向き直った。
さて、どこまでやったか。と打ちこみ途中だった文章を目で追っていたマルコは、一度鳴ったきりそれ以降鳴らないチャイムの音にキーボードへと伸ばしかけた手をピタリ、と止めると再び玄関口を振り返った。
いつもであればこちらが顔を出すまで鳴らし続ける連中に、アイツ等じゃねぇのか…?と小さく眉を顰めたマルコはかけていた眼鏡を外すとイスから立ち上がり玄関へと歩き出した。
ガチャリ、と開けた扉の先には誰もおらず、自分が出るのが遅く帰ってしまったんだろうか、と玄関先から顔を覗かせ通路を見回したマルコは、エレベーターホールに向かうその背を見つけるとキョトリ、と目を瞬かせオイ!とその背に声をかけていた。
「!!、あ……」
不意にかけたその声に、ビクリ、と肩を震わせこちらを振り返ったのはやはり数週間前に拾い看病をした少女で、自分の姿を見止めるとそう小さく声を漏らし何故か慌てた様にエレベーターホールへと走り出してしまった夢子の姿にはっ…?と声を漏らしたマルコも素足のまま通路へと飛び出すと慌てた様にそんな夢子の背を追いかけたのだった。
「逃げんじゃねぇよぃっ……!!」
「っ……!!」
運悪く1階で止まっていたんだろうエレベーターに、足踏みをしてエレベーターが来るのを待っていた夢子の腕を捉えたマルコはひどく焦燥したように自分を振り返った夢子に小さく息を吐きだした。
「俺に用があったんじゃねぇのかぃ?」
「ちがっ……、ちょっと……寄ってみただけ、だからっ」
そう言ってブンブンと掴まれた手を振りほどこうとする夢子に、なおも自分から逃げようとする夢子を見やったマルコは呆れた様に溜息を吐きだすと夢子の手を引き来た道を戻り始めた。
「いつでも来いって言ったのは俺だよぃ。んな遠慮すんな」
「ち、違うっ……」
そう言ってなおも逃げようとする夢子に、そんな夢子を横目に見やったマルコは怪訝そうに眉を顰めると部屋の扉へと手をかけようとして、はた、と目を瞬かせた。
ドアノブに掛けられている可愛らしい紙袋に、暫し呆けた様にソレを見ていたマルコはチラリ、と自分の後ろに佇む夢子を見やると、その顔を真っ赤に染め顔を俯かせる夢子にあぁ、そう言うことか、と合点がいったようにドアノブに掛けられていた紙袋を手に取った。
「この間の礼かぃ?わざわざ律儀だねぃ」
「~~~っ!!借り作ったままが嫌だっただけ!!」
あと煙草返せ!!とクツクツと笑う自分にそう声を上げた夢子を見やったマルコは呆れた様にその眉を下げるとペシリ、とそんな夢子の頭を軽く叩いた。
「返せもなにもお前ぇは未成年だろぃ。持ってる必要がねぇ」
「人の持ち物パクるとか最低だ……!」
そう言ってまぁ上がれ、と部屋へと促したマルコはなおも抗議の声を上げる夢子を見やるとクツクツと喉を震わせそんな夢子の背を押しやった。
「人様の懐から煙草スッてる奴がいうことじゃぁねぇよぃ」
「ゥッ………」
そう言ってグイグイと自分の背を押すマルコに、至極真っ当な意見を返すマルコを見やった夢子は言葉を詰まらせると、そんなマルコから視線を逸らす様靴を脱ぎ2度目のマルコの家へと上がったのだった。
「お前ぇ、飯は?」
「………まだ。バイト終わって帰ってきたとこ」
通されたリビングに、点けっぱなしのPCの光をなんとはなしに見ていた夢子はそうかけられた声に言葉を返すとグルリ、と室内を見回した。
乱雑に置かれる資料の山以外は至って綺麗なマルコの部屋に、エースやルフィとは大違いだ、と悪友二人の汚部屋と見比べていた夢子は、は…?と声を漏らしたマルコを怪訝そうに振り返った。
「お前ぇ………18歳未満は22時以降のアルバイトは駄目だってぇ法律……知ってるかぃ?」
「………ぁ」
そう言って米神をヒクつかせるマルコに、思わず口から出てしまった言葉にソッと口元に手を当てた夢子は半眼で自分を見やるマルコからソッと視線を逸らした。
「バイト先には……二十歳で通ってるし……」
「………そーいう問題じゃねぇだろぃ」
そう言ってだから問題ない、と自分に背を向けてしまった夢子に深々と溜息を吐きだしたマルコはコレ以上咎めても意味はないであろう、とそんな夢子の背を見やると手にしていた紙袋をテーブルへと置き呆れた様にキッチンへと歩き出した。
「適当で良けりゃぁ何か食ってくかぃ?」
「わざわざ、良いよ……。ソレ渡したら帰るつもりだったし……」
そう言って冷蔵庫を開けたマルコに、そんなマルコへと視線を戻した夢子はテーブルに置かれる紙袋を一瞥すると申し訳なさそうにマルコへと言葉を返していた。
それにもやしを手に取り夢子を振り返ったマルコは何処か居心地が悪そうにリビングに佇む夢子を見やると小さく苦笑を洩らし、別に構わねぇよぃ、とそんな夢子へと言葉を返しクッキングヒーターにフライパンを置いたのだった。
適当に座ってろぃ、と出された水に大きなソファーへと腰をおろしていた夢子は、キッチンから聞こえてくるジュウジュウ、と野菜を炒める音を聞くとキッチンに佇むマルコをソッと伺い見た。
慣れた手つきでフライパンを回すマルコに、料理できるんだ…とどこか感心したように声を漏らした夢子はそんなマルコの背をぼんやりと見つめた。
突然訪問してきた自分を嫌がりもせず家へと上げてくれたマルコに、まだ2回しか会っていない良く素性も分からない自分を何かと気にかけてくれるマルコを見やり、優しい…と知らず知らずのうちに声に出していた夢子は、不意に自分を振り返ったマルコを見やると慌てた様にテーブルへと視線を落した。
「米がねぇが、炒めモンだけでかまわねぇかぃ?」
「うん、ありがとう……」
そう言って出来あがったんであろうもやし炒めを皿によそうマルコに、ソレを手にリビングへと戻ってきたマルコを見やった夢子はホレ、と渡された箸を受け取るとテーブルに置かれたソレを見て、パチクリ、と目を瞬かせた。
もやし炒め的なソレに、所々焦げているもやしを見やった夢子は塩コショウがふんだんにかけられているお肉を見やると、ソッとマルコを仰ぎ見た。
コレ何…?と口から出掛けた言葉を呑み込み、代わりに食べれるのだろうか、と言う疑問をその視線に乗せた夢子は、不思議そうな顔で自分を見下ろすマルコを見やると、再びテーブルの上の茶色い物体へと視線を落した。
「どうしたんだぃ?早く食っちまえよぃ」
「あー………うん。イタダキマス」
そう言って再びキッチンへと歩き出したマルコに、その背を見やった夢子は見るからに胡椒辛いであろうその『もやし炒め』モドキに、でも折角作ってくれたし…、と意を決したようにソレへと箸を伸ばしたのだった。
(………辛い)
しょっぱい、ともやしの味さえしないその胡椒の味付けに、料理出来ないんだな…、と正面に腰掛けビールを傾げるマルコをチラリ、と盗み見た夢子はいつもこんなの食べてるのかな…?とマルコの味覚を心配しつつそれでも手を止めることなく箸をすすめた。
「ところで、学校はちゃんと行ってるのかぃ?」
「ぇ…?あぁ……まぁ、一応?」
落ちた沈黙に、黙々と箸を進めていた夢子は不意にかけられたその声に、マルコへと視線を向けるとそう言葉を返し再びテーブルへと視線を落した。
僅かに眉間に皺を寄せた夢子に、そんな夢子をなんとはなしに見ていたマルコはそうかぃ、と言葉を返すとビールを仰ぎコトリ、とカラになった缶をテーブルへと置いた。
「学校は、楽しいかぃ?」
「………別に。授業はつまんないし、先公はウザいし……」
そう言ってその眉間に皺を増やした夢子に、まぁ学校なんてそんなもんだろぃ、と笑って返したマルコは自分をチラリと見て、手元へと視線を戻した夢子にふと、その口元に弧をかいた。
「ダチはいるのかぃ?」
「……まぁ。同級に何人か……あと、後輩が……懐いてくれて、可愛い」
そう言って微かにその口元に笑みを浮かべた夢子に、人間関係は良好そうな夢子を見やったマルコはなら良いじゃねぇか、と楽しげに言葉を返すとカラになった缶を手にソファーから立ち上がった。
「教師が煩わしく感じんのは今だけだよぃ。大人になりゃぁその有難みも分かってくる。面倒だろうがなんだろうが学があるにこしたこたぁねぇしねぃ。お前ぇ、頭はそれなりに良いほうだろぃ?それなりに教師の言うこと聞いてりゃ卒業できるさ」
「頭は良くない……英語なんて全然出来ないし……」
そう楽しげに笑ってキッチンへと向かったマルコに、冷蔵庫から2本目を取り出すマルコを見やった夢子はどこか不貞腐れた様にそう言葉を返すと最後の一口を口へと詰め込んだ。
半ば飲み込む形で口へと入れたもやし炒めに、ゴチソウサマデシタ。とソレへと手を合わせた夢子はまぁ確かに驚いたけどねぃ、と笑ったマルコを一瞥すると差し出された缶にキョトリと目を瞬かせた。
「ノンアルだ。ガキが飲んでも支障はねぇよぃ」
「………どーも」
そうクツクツと喉を震わせたマルコに、アルコールフリー、と書かれた缶を受け取った夢子は楽しげに正面のソファーに腰掛けたマルコを見やると、手元の缶へと視線を落した。
「だがお前ぇさん2組だろぃ?アソコは確か成績で組が分かれてたはずだからねぃ。2組っていやぁ特待生クラスだよぃ」
「詳しいね、マルコさん……。確かに特待生クラスではあるけど、いつ下の組に落ちてもおかしくはない成績だし」
上の下ぐらい、と小さく零しプルタブを開けた夢子に、敬称付きで呼ばれた名前をくすぐったく感じながらそんな夢子を見やったマルコは、平然と『上の下』と言ってのけた夢子にひっそりと苦笑を洩らした。
(『ソレ』を維持すんのに皆必死こいてたってぇのに、コイツは……)
きっと本当に成績が落ちようが差して気にもしていないんだろう目の前の少女に、呆れた様に溜息を吐きだしたマルコもプルタブを押し上げると冷えたビールを口へと流し込んだ。
「まぁダチがいんなら問題ねぇよぃ。大事にしとけ、高校で知り合ったツレってぇのは一生もんになる」
「ソレ、本人談……?そういや、マルコさんっていくつ……?会社員、だよね?」
そう、年上ならではの助言をするマルコに、ノンアルコールを喉へと流し込んだ夢子は目の前の年上の男性を見やるとふと、思い出したようにそんなマルコを伺い見た。
「ん?あぁ、今年で33だ。白ひげカンパニーで部長を任されてんだぃ」
「ブッ……?!!し、白ひげカンパニー?!!」
そう言って壁に飾られてある賞状らしきものを指差したマルコに、次を口へと流し込もうとしていた夢子はマルコの口から出てきた衝撃発言に大きく咽るとギョッとした表情で目の前のマルコを見やった。
「し…白ひげカンパニーって……あの、大手企業、の……?」
「あぁ、知ってんのかぃ?」
そう言ってオヤジは有名だからねぃ、とひどく嬉しそうに顔を綻ばせたマルコに、口元に垂れた水を服の袖で拭った夢子はマジマジと目の前のマルコを見やるとハァ…、と感嘆の声を漏らし、ふと、マルコのその前の言葉を思い出し目を瞬かせた。
「33歳で部長って………かなりのやり手、だよね……?」
「あー、まぁ……どうだろうねぃ」
そう言ってクツクツと楽しげに喉を震わせたマルコに、どうりで良い所に住んでるわけだ、と40階建てのマンションを思い出し目の前のマルコへと視線を戻した夢子は、年齢職歴共に自分とは雲泥の差があるマルコを見やると微かにその眉に皺を寄せ足元に置いていた鞄を手に取りスクリ、とソファーから立ち上がった。
「ご飯、アリガト……。帰るよ」
「もう良いのかぃ?てっきり愚痴でも言いに来たかと思ったんだが……」
何処か居心地が悪そうに自分から視線を逸らした夢子に、丁度2本目のビールをカラにしたマルコは不機嫌そうに眉を顰める夢子の横顔を見やるとキョトリと目を瞬かせた。
「今日は…ただソレを渡しに来ただけだから……」
そう言ってそのまま玄関へと歩き出してしまった夢子に、どこか機嫌の悪そうな夢子の背を見やったマルコもソファーから立ち上がるとそんな夢子を見送るべく玄関へと歩き出した。
「また何時でも来い。話し相手ぐらいにならなってやるからよぃ」
踵のつぶされた靴に、ソレを足に引っ掛け自分を振り返った夢子にそう声をかけたマルコは、自分を見て小さくその眉間に皺を寄せた夢子を見やるとキョトリ、と不思議そうに目を瞬かせた。
「もう、来ないよ……。大丈夫、他人に世話になるほどガキじゃないから」
そう言ってありがと、と自分に背を向け玄関の扉へと手を伸ばした夢子に、ハタ、と目を瞬かせたマルコは咄嗟にそんな夢子の手を掴むとその場に引き留めていた。
「急にどうしたんだぃ……?甘えられる相手がいんなら、甘えときゃ良いだろぃ」
そう言って自分の手を引いたマルコに、そんなマルコを横目に見やった夢子は目の前のドアノブへと視線を落とすとキュッと小さく口元を引き結んだ。
「私みたいなのが家に入り浸ってるって周りの人が知ったら、アンタの評判が落ちる」
そう小さく声を漏らしゆるり、と掴まれる手を解こうと手を振った夢子にキョトリと目を瞬かせたマルコは顔を俯けさせる夢子を見やると小さく苦笑を洩らしポン、とそんな夢子の頭へと手を置いた。
「元々俺ぁそんなに評判良くねぇからなぁ、落ちたってたかが知れてるよぃ。それに18なんざまだまだガキだ、今世話んなった分、大人になってから返してくれりゃぁ良いよぃ」
甘えろ甘えろ!とグシャグシャ!と乱暴に頭を撫でまわしたマルコに、揺れた頭に小さく驚きの声を漏らした夢子はそんなマルコから距離を取ると乱れた髪に手を当て批難の視線をマルコへと向けた。
「気張るなっつっただろぃ。俺の事は気にすんな、お前ぇは今は自分の事だけ考えろ」
また来いよぃ、とその顔に柔和な笑みを浮かべたマルコに、本当に差して気にもしていないんだろうマルコを呆けた様に見ていた夢子は再びポンポン、と撫でられた頭に我に返ると慌てた様にそんなマルコから顔を逸らした。
「気…気が向いたら…また、来る……」
「あぁ、楽しみにしてるよぃ。お休み、夢子。気ぃつけて帰れよぃ」
「ぉ、ゃ…すみっ……!!」
小さく零された肯定の言葉に、クツクツと喉を震わせたマルコはそんな自分へと口早に挨拶を返し家を出ていった夢子に、遠ざかる夢子の背を見送るとパタリ、と玄関の扉を閉めハハッ、と堪らず笑いを零した。
「どうにも……悪になりきれねぇ娘だねぃ」
他人の心配をする夢子に、可愛いもんだ、と小さく喉を震わせたマルコは一人だけになった部屋に、テーブルに置かれたままの食器を見やるとソレを片付けるべくリビングへと歩き出したのだった。
優しいナイフ
カタカタとキーボードの音だけが響いていた部屋に鳴り響いたチャイムの音にピタリ、と作業の手を止めたマルコは怪訝そうに玄関口を振り返ると眉を顰めさせた。
時間で言えばもういいところ皆寝ている時間であろう夜11時に、脳裏に過った同僚達の顔を思い浮かべたマルコは面倒臭ぇ…、と家に来るとすぐ宴会を始める同僚達にそう小さく零すとチャイムの音も聞こえぬふりをして再びPCへと向き直った。
さて、どこまでやったか。と打ちこみ途中だった文章を目で追っていたマルコは、一度鳴ったきりそれ以降鳴らないチャイムの音にキーボードへと伸ばしかけた手をピタリ、と止めると再び玄関口を振り返った。
いつもであればこちらが顔を出すまで鳴らし続ける連中に、アイツ等じゃねぇのか…?と小さく眉を顰めたマルコはかけていた眼鏡を外すとイスから立ち上がり玄関へと歩き出した。
ガチャリ、と開けた扉の先には誰もおらず、自分が出るのが遅く帰ってしまったんだろうか、と玄関先から顔を覗かせ通路を見回したマルコは、エレベーターホールに向かうその背を見つけるとキョトリ、と目を瞬かせオイ!とその背に声をかけていた。
「!!、あ……」
不意にかけたその声に、ビクリ、と肩を震わせこちらを振り返ったのはやはり数週間前に拾い看病をした少女で、自分の姿を見止めるとそう小さく声を漏らし何故か慌てた様にエレベーターホールへと走り出してしまった夢子の姿にはっ…?と声を漏らしたマルコも素足のまま通路へと飛び出すと慌てた様にそんな夢子の背を追いかけたのだった。
「逃げんじゃねぇよぃっ……!!」
「っ……!!」
運悪く1階で止まっていたんだろうエレベーターに、足踏みをしてエレベーターが来るのを待っていた夢子の腕を捉えたマルコはひどく焦燥したように自分を振り返った夢子に小さく息を吐きだした。
「俺に用があったんじゃねぇのかぃ?」
「ちがっ……、ちょっと……寄ってみただけ、だからっ」
そう言ってブンブンと掴まれた手を振りほどこうとする夢子に、なおも自分から逃げようとする夢子を見やったマルコは呆れた様に溜息を吐きだすと夢子の手を引き来た道を戻り始めた。
「いつでも来いって言ったのは俺だよぃ。んな遠慮すんな」
「ち、違うっ……」
そう言ってなおも逃げようとする夢子に、そんな夢子を横目に見やったマルコは怪訝そうに眉を顰めると部屋の扉へと手をかけようとして、はた、と目を瞬かせた。
ドアノブに掛けられている可愛らしい紙袋に、暫し呆けた様にソレを見ていたマルコはチラリ、と自分の後ろに佇む夢子を見やると、その顔を真っ赤に染め顔を俯かせる夢子にあぁ、そう言うことか、と合点がいったようにドアノブに掛けられていた紙袋を手に取った。
「この間の礼かぃ?わざわざ律儀だねぃ」
「~~~っ!!借り作ったままが嫌だっただけ!!」
あと煙草返せ!!とクツクツと笑う自分にそう声を上げた夢子を見やったマルコは呆れた様にその眉を下げるとペシリ、とそんな夢子の頭を軽く叩いた。
「返せもなにもお前ぇは未成年だろぃ。持ってる必要がねぇ」
「人の持ち物パクるとか最低だ……!」
そう言ってまぁ上がれ、と部屋へと促したマルコはなおも抗議の声を上げる夢子を見やるとクツクツと喉を震わせそんな夢子の背を押しやった。
「人様の懐から煙草スッてる奴がいうことじゃぁねぇよぃ」
「ゥッ………」
そう言ってグイグイと自分の背を押すマルコに、至極真っ当な意見を返すマルコを見やった夢子は言葉を詰まらせると、そんなマルコから視線を逸らす様靴を脱ぎ2度目のマルコの家へと上がったのだった。
「お前ぇ、飯は?」
「………まだ。バイト終わって帰ってきたとこ」
通されたリビングに、点けっぱなしのPCの光をなんとはなしに見ていた夢子はそうかけられた声に言葉を返すとグルリ、と室内を見回した。
乱雑に置かれる資料の山以外は至って綺麗なマルコの部屋に、エースやルフィとは大違いだ、と悪友二人の汚部屋と見比べていた夢子は、は…?と声を漏らしたマルコを怪訝そうに振り返った。
「お前ぇ………18歳未満は22時以降のアルバイトは駄目だってぇ法律……知ってるかぃ?」
「………ぁ」
そう言って米神をヒクつかせるマルコに、思わず口から出てしまった言葉にソッと口元に手を当てた夢子は半眼で自分を見やるマルコからソッと視線を逸らした。
「バイト先には……二十歳で通ってるし……」
「………そーいう問題じゃねぇだろぃ」
そう言ってだから問題ない、と自分に背を向けてしまった夢子に深々と溜息を吐きだしたマルコはコレ以上咎めても意味はないであろう、とそんな夢子の背を見やると手にしていた紙袋をテーブルへと置き呆れた様にキッチンへと歩き出した。
「適当で良けりゃぁ何か食ってくかぃ?」
「わざわざ、良いよ……。ソレ渡したら帰るつもりだったし……」
そう言って冷蔵庫を開けたマルコに、そんなマルコへと視線を戻した夢子はテーブルに置かれる紙袋を一瞥すると申し訳なさそうにマルコへと言葉を返していた。
それにもやしを手に取り夢子を振り返ったマルコは何処か居心地が悪そうにリビングに佇む夢子を見やると小さく苦笑を洩らし、別に構わねぇよぃ、とそんな夢子へと言葉を返しクッキングヒーターにフライパンを置いたのだった。
適当に座ってろぃ、と出された水に大きなソファーへと腰をおろしていた夢子は、キッチンから聞こえてくるジュウジュウ、と野菜を炒める音を聞くとキッチンに佇むマルコをソッと伺い見た。
慣れた手つきでフライパンを回すマルコに、料理できるんだ…とどこか感心したように声を漏らした夢子はそんなマルコの背をぼんやりと見つめた。
突然訪問してきた自分を嫌がりもせず家へと上げてくれたマルコに、まだ2回しか会っていない良く素性も分からない自分を何かと気にかけてくれるマルコを見やり、優しい…と知らず知らずのうちに声に出していた夢子は、不意に自分を振り返ったマルコを見やると慌てた様にテーブルへと視線を落した。
「米がねぇが、炒めモンだけでかまわねぇかぃ?」
「うん、ありがとう……」
そう言って出来あがったんであろうもやし炒めを皿によそうマルコに、ソレを手にリビングへと戻ってきたマルコを見やった夢子はホレ、と渡された箸を受け取るとテーブルに置かれたソレを見て、パチクリ、と目を瞬かせた。
もやし炒め的なソレに、所々焦げているもやしを見やった夢子は塩コショウがふんだんにかけられているお肉を見やると、ソッとマルコを仰ぎ見た。
コレ何…?と口から出掛けた言葉を呑み込み、代わりに食べれるのだろうか、と言う疑問をその視線に乗せた夢子は、不思議そうな顔で自分を見下ろすマルコを見やると、再びテーブルの上の茶色い物体へと視線を落した。
「どうしたんだぃ?早く食っちまえよぃ」
「あー………うん。イタダキマス」
そう言って再びキッチンへと歩き出したマルコに、その背を見やった夢子は見るからに胡椒辛いであろうその『もやし炒め』モドキに、でも折角作ってくれたし…、と意を決したようにソレへと箸を伸ばしたのだった。
(………辛い)
しょっぱい、ともやしの味さえしないその胡椒の味付けに、料理出来ないんだな…、と正面に腰掛けビールを傾げるマルコをチラリ、と盗み見た夢子はいつもこんなの食べてるのかな…?とマルコの味覚を心配しつつそれでも手を止めることなく箸をすすめた。
「ところで、学校はちゃんと行ってるのかぃ?」
「ぇ…?あぁ……まぁ、一応?」
落ちた沈黙に、黙々と箸を進めていた夢子は不意にかけられたその声に、マルコへと視線を向けるとそう言葉を返し再びテーブルへと視線を落した。
僅かに眉間に皺を寄せた夢子に、そんな夢子をなんとはなしに見ていたマルコはそうかぃ、と言葉を返すとビールを仰ぎコトリ、とカラになった缶をテーブルへと置いた。
「学校は、楽しいかぃ?」
「………別に。授業はつまんないし、先公はウザいし……」
そう言ってその眉間に皺を増やした夢子に、まぁ学校なんてそんなもんだろぃ、と笑って返したマルコは自分をチラリと見て、手元へと視線を戻した夢子にふと、その口元に弧をかいた。
「ダチはいるのかぃ?」
「……まぁ。同級に何人か……あと、後輩が……懐いてくれて、可愛い」
そう言って微かにその口元に笑みを浮かべた夢子に、人間関係は良好そうな夢子を見やったマルコはなら良いじゃねぇか、と楽しげに言葉を返すとカラになった缶を手にソファーから立ち上がった。
「教師が煩わしく感じんのは今だけだよぃ。大人になりゃぁその有難みも分かってくる。面倒だろうがなんだろうが学があるにこしたこたぁねぇしねぃ。お前ぇ、頭はそれなりに良いほうだろぃ?それなりに教師の言うこと聞いてりゃ卒業できるさ」
「頭は良くない……英語なんて全然出来ないし……」
そう楽しげに笑ってキッチンへと向かったマルコに、冷蔵庫から2本目を取り出すマルコを見やった夢子はどこか不貞腐れた様にそう言葉を返すと最後の一口を口へと詰め込んだ。
半ば飲み込む形で口へと入れたもやし炒めに、ゴチソウサマデシタ。とソレへと手を合わせた夢子はまぁ確かに驚いたけどねぃ、と笑ったマルコを一瞥すると差し出された缶にキョトリと目を瞬かせた。
「ノンアルだ。ガキが飲んでも支障はねぇよぃ」
「………どーも」
そうクツクツと喉を震わせたマルコに、アルコールフリー、と書かれた缶を受け取った夢子は楽しげに正面のソファーに腰掛けたマルコを見やると、手元の缶へと視線を落した。
「だがお前ぇさん2組だろぃ?アソコは確か成績で組が分かれてたはずだからねぃ。2組っていやぁ特待生クラスだよぃ」
「詳しいね、マルコさん……。確かに特待生クラスではあるけど、いつ下の組に落ちてもおかしくはない成績だし」
上の下ぐらい、と小さく零しプルタブを開けた夢子に、敬称付きで呼ばれた名前をくすぐったく感じながらそんな夢子を見やったマルコは、平然と『上の下』と言ってのけた夢子にひっそりと苦笑を洩らした。
(『ソレ』を維持すんのに皆必死こいてたってぇのに、コイツは……)
きっと本当に成績が落ちようが差して気にもしていないんだろう目の前の少女に、呆れた様に溜息を吐きだしたマルコもプルタブを押し上げると冷えたビールを口へと流し込んだ。
「まぁダチがいんなら問題ねぇよぃ。大事にしとけ、高校で知り合ったツレってぇのは一生もんになる」
「ソレ、本人談……?そういや、マルコさんっていくつ……?会社員、だよね?」
そう、年上ならではの助言をするマルコに、ノンアルコールを喉へと流し込んだ夢子は目の前の年上の男性を見やるとふと、思い出したようにそんなマルコを伺い見た。
「ん?あぁ、今年で33だ。白ひげカンパニーで部長を任されてんだぃ」
「ブッ……?!!し、白ひげカンパニー?!!」
そう言って壁に飾られてある賞状らしきものを指差したマルコに、次を口へと流し込もうとしていた夢子はマルコの口から出てきた衝撃発言に大きく咽るとギョッとした表情で目の前のマルコを見やった。
「し…白ひげカンパニーって……あの、大手企業、の……?」
「あぁ、知ってんのかぃ?」
そう言ってオヤジは有名だからねぃ、とひどく嬉しそうに顔を綻ばせたマルコに、口元に垂れた水を服の袖で拭った夢子はマジマジと目の前のマルコを見やるとハァ…、と感嘆の声を漏らし、ふと、マルコのその前の言葉を思い出し目を瞬かせた。
「33歳で部長って………かなりのやり手、だよね……?」
「あー、まぁ……どうだろうねぃ」
そう言ってクツクツと楽しげに喉を震わせたマルコに、どうりで良い所に住んでるわけだ、と40階建てのマンションを思い出し目の前のマルコへと視線を戻した夢子は、年齢職歴共に自分とは雲泥の差があるマルコを見やると微かにその眉に皺を寄せ足元に置いていた鞄を手に取りスクリ、とソファーから立ち上がった。
「ご飯、アリガト……。帰るよ」
「もう良いのかぃ?てっきり愚痴でも言いに来たかと思ったんだが……」
何処か居心地が悪そうに自分から視線を逸らした夢子に、丁度2本目のビールをカラにしたマルコは不機嫌そうに眉を顰める夢子の横顔を見やるとキョトリと目を瞬かせた。
「今日は…ただソレを渡しに来ただけだから……」
そう言ってそのまま玄関へと歩き出してしまった夢子に、どこか機嫌の悪そうな夢子の背を見やったマルコもソファーから立ち上がるとそんな夢子を見送るべく玄関へと歩き出した。
「また何時でも来い。話し相手ぐらいにならなってやるからよぃ」
踵のつぶされた靴に、ソレを足に引っ掛け自分を振り返った夢子にそう声をかけたマルコは、自分を見て小さくその眉間に皺を寄せた夢子を見やるとキョトリ、と不思議そうに目を瞬かせた。
「もう、来ないよ……。大丈夫、他人に世話になるほどガキじゃないから」
そう言ってありがと、と自分に背を向け玄関の扉へと手を伸ばした夢子に、ハタ、と目を瞬かせたマルコは咄嗟にそんな夢子の手を掴むとその場に引き留めていた。
「急にどうしたんだぃ……?甘えられる相手がいんなら、甘えときゃ良いだろぃ」
そう言って自分の手を引いたマルコに、そんなマルコを横目に見やった夢子は目の前のドアノブへと視線を落とすとキュッと小さく口元を引き結んだ。
「私みたいなのが家に入り浸ってるって周りの人が知ったら、アンタの評判が落ちる」
そう小さく声を漏らしゆるり、と掴まれる手を解こうと手を振った夢子にキョトリと目を瞬かせたマルコは顔を俯けさせる夢子を見やると小さく苦笑を洩らしポン、とそんな夢子の頭へと手を置いた。
「元々俺ぁそんなに評判良くねぇからなぁ、落ちたってたかが知れてるよぃ。それに18なんざまだまだガキだ、今世話んなった分、大人になってから返してくれりゃぁ良いよぃ」
甘えろ甘えろ!とグシャグシャ!と乱暴に頭を撫でまわしたマルコに、揺れた頭に小さく驚きの声を漏らした夢子はそんなマルコから距離を取ると乱れた髪に手を当て批難の視線をマルコへと向けた。
「気張るなっつっただろぃ。俺の事は気にすんな、お前ぇは今は自分の事だけ考えろ」
また来いよぃ、とその顔に柔和な笑みを浮かべたマルコに、本当に差して気にもしていないんだろうマルコを呆けた様に見ていた夢子は再びポンポン、と撫でられた頭に我に返ると慌てた様にそんなマルコから顔を逸らした。
「気…気が向いたら…また、来る……」
「あぁ、楽しみにしてるよぃ。お休み、夢子。気ぃつけて帰れよぃ」
「ぉ、ゃ…すみっ……!!」
小さく零された肯定の言葉に、クツクツと喉を震わせたマルコはそんな自分へと口早に挨拶を返し家を出ていった夢子に、遠ざかる夢子の背を見送るとパタリ、と玄関の扉を閉めハハッ、と堪らず笑いを零した。
「どうにも……悪になりきれねぇ娘だねぃ」
他人の心配をする夢子に、可愛いもんだ、と小さく喉を震わせたマルコは一人だけになった部屋に、テーブルに置かれたままの食器を見やるとソレを片付けるべくリビングへと歩き出したのだった。
優しいナイフ