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金色猫とタンゴ
貴女のお名前は?
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待ち合わせの時間の10分前にマルコの家へとついた夢子は、緊張した面持ちでインターホンを鳴らすと、部屋に鳴り響いたその音にどこかソワソワしたように綺麗に巻いた髪へと手を触れた。
どこも変な所はないだろうか、と自分の格好を確認していた夢子はガチャリ、と開いた玄関の扉に、そこから顔を覗かせた家主を見やると少しだけ姿勢を正しその顔に笑みを浮かべてみせた。
「ぉはよ!マルコ」
「あぁ、おはよぃ。あと少しで準備できるからねぃ、上がって待ってろ」
そう言って中へと自分を促したマルコに、スーツや部屋着ではない私服姿のマルコを見やった夢子はどこか緊張したように頷くとマルコの家へと上がっていった。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり、と部屋の中を動き回るマルコに、腕時計は何処にやったか…と引き出しの中を漁るマルコの背をソファーに腰掛けなんとはなしに見ていた夢子は、いつもしてるヤツで良いじゃん、と口から出掛けた言葉をグッと呑み込んだ。
スーツの時につけているアルマーニの腕時計に、そんなの付けてる人の隣は歩けないな…と思い直した夢子は、やっと見つけたシンプルな腕時計に、けれどやはりブランド物のソレを左手首につけショルダーを手に取り自分を振り返ったマルコに、ソファーから立ち上がると同じようにバッグを手に取った。
「バタバタしちまって悪かったねぃ。行くかぃ」
「マルコってさ、ブランド物好きなの……?」
そう言って玄関口へと歩き出したマルコの背に、そうなんとなく声をかけた夢子は靴を取り出し不思議そうに自分を振り返ったマルコからソッと視線を逸らした。
「別に、コレと言って好きなブランドがあるわけじゃねぇが……」
「ヤ……だってマルコの所有物、大抵がブランド物だから……」
統一性ないけど、とインディの腕時計をチラッと見やった夢子にあぁ、と納得したように声を漏らしたマルコは再び靴へと視線を落とすと腕時計が付けられている左腕をヒラリ、と振って見せた。
「こりゃツレからの貰いモンだよぃ。会社用のは自分で買っちゃぁいるが普段使いのモンは大抵貰いもんだ」
物に頓着しなさ過ぎてコッチが不安になる、ってよぃ。と履き終えた靴にショルダーを肩にかけたマルコを見やった夢子は、貰い物で2万越え…と小さく零すとコーチのショルダーをチラリ、と見やり同じようにブーツへと足をひっかけた。
「あんまりそういうモンに興味がなくてねぃ。流石に社会人として一応それなりの物は身につけとかねぇとと買っちゃいるが………統一性はねぇな!」
そう言ってハハハ、と笑ったマルコにそう言えばこの人財布はブルガリだったな…と本当にブランド物に興味がないんだろうマルコに、センスは悪くないよ、と言葉を返した夢子はありがとよぃ、と笑ったマルコと共に家を後にした。
「そういやぁ、夢子の言ってた店ってぇのは駐車場はあるのかぃ?」
「え?うん、あるよ」
台数は少ないけど、とチン、と到着した1階ロビーに通りへと出た夢子はそう言って自分を振り返ったマルコにキョトリ、と目を瞬かせた。
このまま徒歩でそこまで向かうものだと思っていた夢子は、じゃぁ問題ねぇな、と上着のポケットから車のキーを取り出したマルコを見やるとあ…、と思わず声を漏らしていた。
「そっか……マルコさん33歳だったね……」
「ホント……今更なこと言うねぃ……。車ぐれぇ持ってるよぃ」
でなけりゃ外回りなんかできねぇよぃ、と自分が車を所持していることに驚きを隠せない夢子を横目に見やったマルコは、マンションの駐車場へと向かうとソコに停まっている一台の車の前で歩みを止めた。
「歩いて行けねぇ距離でもねぇが、お前ぇのその足じゃ疲れちまうだろぃ」
「や……別に……ヒール高い靴なんて慣れてる、けど…………ってか、ぇ……?レクサス………?」
そう言ってピピ、と車のロックを解除させたマルコに、黒塗りのレクサスを見やった夢子はそうだよぃ?と不思議そうに言葉を返し、運転席のドアを開けたマルコに小さく口元を引きつらせた。
「ぁー……のさ、『部長』クラスでハイクラスのレクサス乗れるって……どんだけ白ひげカンパニーって高収入なの……?」
「ハハッ、まぁ伊達に部長任されちゃいねぇよぃ」
そう言って楽しげに笑い運転席へと乗り込んだマルコに、小さく感嘆の声を漏らした夢子も助手席のドアを開けるとマルコの車へと乗り込んだのだった。
10分とかからずに到着したカフェに、数台ある駐車場へと車を停めたマルコは車から降りた夢子を見やると、同じように車から降りると洋風な外装のカフェへと視線を向けた。
「入るのに躊躇うような店だねぃ………」
「だいじょーぶだって!強面のオッサンだって来てるようなお店なんだから」
可愛らしい外装のお店を見やりそう言ってどこか気疲れしたように溜息を吐きだしたマルコに、そんなマルコを見やり小さく苦笑を洩らした夢子はほら、お腹空いた!と楽しげに声を弾ませるとマルコの背を押し店内へと入っていったのだった。
いらっしゃいませ、と控えめにかけられた声にグルリ、と店内を見回した夢子は窓際のテーブルが空いているのを見やると小さくその口元に笑みを浮かべ、その窓際の席へと腰掛けた。
それに夢子の後を追いかけ、彼女の正面へと腰掛けたマルコは女性客で賑わう店内を見やると、お水を持ってきた店員を一瞥し、正面に腰掛ける夢子へと視線を戻した。
「お前ぇ……本当にこんなとこに知り合いのオッサン連れてきてんのかぃ?」
「え?そうだよ?ってかどっちかって言うとあの人が気に入ってるから此処に来る感じかな?」
見た目通り女性客ばかりの店内に、浮いてねぇか…?と口から出掛けた言葉を呑み込んだマルコは、グラタンとアメリカンがお気に入りなんだって、とそう言葉を返した夢子に、差し出されたメニュー表へと視線を落した。
パスタやドリアが載るメニューに『卵料理』と書かれているページを開いたマルコは、そこに載っている『エッグベネディクト』を見やるとコレがおススメかぃ?とその写真を指差した。
「そー!半熟卵が美味しいの!でも量は少なめだからマルコには物足りないかも」
パスタとかは量多めにできるよ、と声を弾ませた夢子に、車内にいるときからどこか浮き浮きとしていた夢子を見やったマルコはふ~ん、と相槌を返すとペラリ、と再びページを捲った。
「夢子はなににすんだぃ?」
「んー、ホントはベネディクトにするつもりだったけど前にも食べたから今日はオムライスかな」
そう言ってデミグラスソースが美味しいの!と笑みを浮かべた夢子を見やったマルコは確かに美味そうだ、と写真が載るソレを見やるとじゃぁ、とページを戻し先程のベネディクトの写真を指出した。
「俺がコレにしようかねぃ」
そうすりゃトレードできるだろぃ?とその写真を指差し自分を見やったマルコに、キョトリ、と目を瞬かせた夢子は飲みモンはなににする?とドリンクのページを開きソコへと視線を落したマルコに、ふと、その口元に弧をかいた。
「私アイスティーにしようかなー」
「んじゃぁ俺ぁその『オッサン』がおススメだってぇ珈琲にするかねぃ」
そう言って近くを通った店員を呼びとめたマルコに、手際良く自分の分まで注文してくれるマルコを見やった夢子は楽しげに笑みを浮かべると開いていたメニューを閉じたのだった。
暫くして運ばれてきた料理に、マルコのベネディクトをもらい、代わりに自分のオムライスを半分マルコへと差し出した夢子はどこかソレを美味しそうに食べるマルコを見やるとふと、その口元に笑みを浮かべた。
行きつけのカフェに、目の前に座っているのは良くこの店に共に来る男性ではなく、つい数カ月前に知り合った少しばかり世話焼きな男の人で、それがどこかむず痒く感じた夢子はマルコからもらったベネディクトへと視線を落とすと楽しげにソレを口へと運んだ。
「そういやぁ……今日は随分とまた寒々しい格好をしてんな」
「そう……?スカートなんて制服の方が短いし、上はブルゾン着てるからあんまり寒くはないよ?」
そう言って風邪引くなよぃ、とその眉を僅かに顰め自分を見やったマルコに、キョトリと目を瞬かせた夢子はイスにかけてあるブルゾンを見やると、目の前のマルコへと視線を戻した。
ハイネックのセーターにジーンズとコートという何ともシンプルなその服装に、それでも顔の彫がしっかりとしているせいか異様に様になるマルコを見やった夢子はオムライスをパクリ、と一口食べるとんー、と考えるように声を漏らした。
「逆に暑くないの?マルコ」
「俺ぁ寒がりなんだよぃ」
まだ11月だよ、と雪さえ降っていないこの季節にハイネックのセーターを着るマルコに、イスにかけられている厚手のコートを見やった夢子は、そう言って小さく鼻息を漏らしたマルコを見やるとハハッ、と楽しげに肩を震わせた。
「私のツレとは真逆だね。ソイツ暑がりでさ真冬でも薄手の上着しか着ないんだよ」
「若ぇ証拠だろぃ。オッサンの身にゃぁこの寒さは堪えんだよぃ」
そう言って運ばれてきた珈琲へと手を伸ばしたマルコに、そんなもんかなぁ?と不思議そうに小首を傾げた夢子はあぁ、美味ぇな、とソレを一口飲んで顔を綻ばせたマルコを見やるとどこか嬉しそうに笑みを零した。
「マルコだってまだ30前半じゃん、若い若い」
「10代のお前ぇらと比べられてもねぃ……。ま、今のうちに沢山楽しんどけよぃ」
歳とるにつれてそういう格好もしにくくなんだからねぃ、と小さく眉を顰めそう声を漏らしたマルコに、自分の周りに居る年上の女性陣を思い出していた夢子は、30オーバーでもスタイル抜群な彼女達に、タイトなスカートを履く女性陣を思い出しそうだろうか…?と小首を傾げると目の前のマルコへと視線を戻した。
「マルコは落ち着いた服着てる女の方が好みなの?」
「?、別に俺ぁ相手がなに着てようがたいして気にはしねぇよぃ」
そう不意にかけられた質問に、カップへと落としていた視線を夢子へと向けたマルコはひどく不思議そうに夢子へと言葉を返すと、あぁ、とどこか合点がいったように声を漏らし少しだけバツが悪そうに目の前の夢子からソッと視線を逸らした。
「別にお前ぇの服装に難癖付けてるわけじゃぁねぇからねぃ。その格好だってお前ぇによく似合ってると思うよぃ。ただ、ちぃとねぃ………俺が若ぇ女の隣を歩くのに慣れてねぇってだけだ」
こんなんでも周りの目は気にすんだよぃ、と小さく零されたその言葉に、ただ純粋にマルコの好みを聞いただけのつもりだった夢子は、マルコから不意打ちのように頂いたお褒めの言葉にキョトリ、と目を瞬かせるとカッとその頬を紅く染めた。
「ぁ…りがとぅ……」
「ぁ~………なんか、デザートでも食うかぃ?」
「ン、食べる」
思わず口から洩れてしまったその言葉に、ひどく気恥ずかしげに視線をテーブルへと落としてしまった夢子を見やったマルコも、気恥ずかしそうにふぃ、とそんな夢子から視線を逸らすと再びメニュー表を開いたのだった。
「今日はごちそーさまでした!」
「どういたしまして、だよぃ。気ぃつけて帰れ」
駅前に停車されたレクサスに、助手席から降りた夢子はウィン、と降ろされた助手席のサイドガラスから中を覗き込むと、運転席に座るマルコへとそう声をかけた。
ひどく楽しげに顔を綻ばせる夢子に、そう言葉を返したマルコは笑みを浮かべ車から少し離れた夢子を見やると手を振る夢子に軽く手を振り返しそのまま車を発進させた。
静かなエンジン音で駅前の通りを走り去るマルコの車に、遠ざかるレクサスの背を見ていた夢子はふと、その口元に笑みを浮かべると家路へと歩き出す。
「他意は、ないんだろうなぁ……」
ただ純粋にご飯に行こうか、と自分を誘っただけなのだろうマルコにそう小さく声を漏らした夢子は、それでも今日1日の事を思い出すだけで弾む心に、気持ちは正直だ…と苦笑を洩らしたのだった。
それを恋と呼ぶにはまだ早い
Sオマケ→
「あら、夢子じゃない。どうしたの?貴女が此処に来るなんて珍しいわね」
ウィン、と開いた正面入り口の扉に、珍しくも受け付けを担当していたロビンはソコに姿を現した可愛らしい客人を見やるとふと、その口元に笑みを浮かべた。
どこか楽しげに笑みを浮かべる社長秘書に、ヴッと言葉を詰まらせた夢子は自分をチョイチョイ、と手招きするロビンをチラリ、と見やるとオズオズとそんなロビンの元へと歩み寄った。
「Mr,クロコダイルにでも呼ばれたのかしら?」
「いや、今日はシャチョーじゃなくてオールサンデーさんに会いに来た」
そう言って自分から視線を逸らした夢子に、あら、私に?と不思議そうに目を瞬かせたロビンはどこか居心地が悪そうにそこに立つ夢子を見やるとふと、口元に弧をかいた。
「なにか悩みごとの様ね、良いわちょっと待っててちょうだい」
すぐ時間を作るから、と受話器を手に取ったロビンに、内線で誰かに連絡を取るロビンをチラリと見やった夢子は、通話を終え受話器を戻し受付台からこちらへとやってきたロビンへと申し訳なさそう頭を下げた。
「急に押しかけて、仕事の邪魔だったでしょ……?」
「あら、別に構わないわよ。それに貴女が来たのに仕事なんかを優先したら、きっとウチのボスに怒られるもの」
そう言ってどこか楽しげにフフ、と笑ったロビンに、そんな大した用じゃないよ…!慌てたように首を振った夢子はそんな自分を一瞥し、笑みを浮かべ応接室へと歩き出したロビンの後を慌てたように追いかけた。
「それで?何を悩んでいるのかしら?」
通された応接室に、目の前に置かれた洋菓子と紅茶を見やった夢子はそう声をかけ向かい側のイスへと腰掛けたロビンに、ソッと手元の紅茶へと視線を落とすと躊躇うように口を開いた。
「あ、のさ……大人の女って……どんな服着るの……?」
「『大人の女』……?」
そう言ってどこか気恥ずかしそうに顔を俯けさせた夢子に、パチリ、と目を瞬かせたロビンは微かに紅くなる夢子の顔を見やると、ふとその口元に弧をかきそういうこと、と小さく声を漏らした。
「さ、参考までで良いんだけど……!!たとえば、そう!シャチョーとかと歩くとき、ロビンさんならどんな服装にする?!」
「うちの社長を例に出すとあまり参考にならないわよ?だって私彼とはビジネスパートナーであってプライベートで会う事なんてないもの。しいて言えばフォーマルなスーツかしら?」
そう言ってクスクスと笑うロビンに、そ、そっか…と淡泊過ぎる目の前の社長秘書とその社長の関係に小さく肩を落とした夢子はそんな自分を見てそうねぇ、と考えるように声を洩らしたロビンへと視線を戻した。
「貴女はフランス人の血も引いてるからどんな服でも似合うとは思うけれど、大人の女を演じたいのであればフレアタイプのワンピースや落ち着いた色のニットを着るのも良いとは思うけれど」
どうかしら?と小首を傾げ自分を見やったロビンに、なるほど…と小さく頷いた夢子は何かを考えているようで、悩ましげに眉間に寄る皺を見やったロビンはクスリ、と忍び笑いを零すと頬杖をつき、ねぇ、とそんな夢子へと声をかけていた。
「ん?なに?」
「お相手はアカガミコーポレーションの社長かしら?」
そう言ってどこか楽しげに口元に弧をかくロビンに、は…?と呆けたように声を漏らした夢子はパチクリと目を瞬かせると違うよ?と首を横に振った。
「シャンクスさんはいっつも唐突だから、服なんて選んでる暇ないよ。それにあの人とデートなんて、畏れ多いし」
「へぇ………『デート』なのね」
そう言ってハハハ、と笑った夢子は自分の零した言葉を目敏く拾ったロビンに、アッ…と咄嗟に口を押さえると、微笑を湛えるロビンからソッと視線を逸らした。
「フフフ、良い人でも見つかったのかしら?」
「ち、ちがっ……!!そうじゃない!!ただ……ちょっと、相手が年上……だから、服装も気をつけた方が、良いのかなって……」
そう言って珍しくもアタフタとする夢子に、へぇそう。とその笑みを深めたロビンは微かに紅くなる夢子の頬に、楽しげに喉を震わせると腰かけていたイスから立ち上がった。
「ならこれから私とデートでもしましょうか?貴女に似合う服を選んであげるわ」
「ぇ?あ……ありがとう!」
そう言って微笑を湛えたロビンに、パッと顔を輝かせた夢子はあぁ、それと、と応接室の扉へと手をかけ自分を振り返ったロビンに、そんなロビンの元まで駆けよると不思議そうに小首を傾げた。
「貴女には今日買った服でまずはMr,クロコダイルと食事に行ってもらおうかしら。彼、今日は会議でアメリカに行ってるの」
きっとひどく疲れてるはずだから。と苦笑を洩らしたロビンに、何かと忙しい此処の社長の顔を思い出した夢子も大変だね、と苦笑を洩らすと良いよ、と言葉を返しロビンと部屋をあとにしたのだった。
どこも変な所はないだろうか、と自分の格好を確認していた夢子はガチャリ、と開いた玄関の扉に、そこから顔を覗かせた家主を見やると少しだけ姿勢を正しその顔に笑みを浮かべてみせた。
「ぉはよ!マルコ」
「あぁ、おはよぃ。あと少しで準備できるからねぃ、上がって待ってろ」
そう言って中へと自分を促したマルコに、スーツや部屋着ではない私服姿のマルコを見やった夢子はどこか緊張したように頷くとマルコの家へと上がっていった。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり、と部屋の中を動き回るマルコに、腕時計は何処にやったか…と引き出しの中を漁るマルコの背をソファーに腰掛けなんとはなしに見ていた夢子は、いつもしてるヤツで良いじゃん、と口から出掛けた言葉をグッと呑み込んだ。
スーツの時につけているアルマーニの腕時計に、そんなの付けてる人の隣は歩けないな…と思い直した夢子は、やっと見つけたシンプルな腕時計に、けれどやはりブランド物のソレを左手首につけショルダーを手に取り自分を振り返ったマルコに、ソファーから立ち上がると同じようにバッグを手に取った。
「バタバタしちまって悪かったねぃ。行くかぃ」
「マルコってさ、ブランド物好きなの……?」
そう言って玄関口へと歩き出したマルコの背に、そうなんとなく声をかけた夢子は靴を取り出し不思議そうに自分を振り返ったマルコからソッと視線を逸らした。
「別に、コレと言って好きなブランドがあるわけじゃねぇが……」
「ヤ……だってマルコの所有物、大抵がブランド物だから……」
統一性ないけど、とインディの腕時計をチラッと見やった夢子にあぁ、と納得したように声を漏らしたマルコは再び靴へと視線を落とすと腕時計が付けられている左腕をヒラリ、と振って見せた。
「こりゃツレからの貰いモンだよぃ。会社用のは自分で買っちゃぁいるが普段使いのモンは大抵貰いもんだ」
物に頓着しなさ過ぎてコッチが不安になる、ってよぃ。と履き終えた靴にショルダーを肩にかけたマルコを見やった夢子は、貰い物で2万越え…と小さく零すとコーチのショルダーをチラリ、と見やり同じようにブーツへと足をひっかけた。
「あんまりそういうモンに興味がなくてねぃ。流石に社会人として一応それなりの物は身につけとかねぇとと買っちゃいるが………統一性はねぇな!」
そう言ってハハハ、と笑ったマルコにそう言えばこの人財布はブルガリだったな…と本当にブランド物に興味がないんだろうマルコに、センスは悪くないよ、と言葉を返した夢子はありがとよぃ、と笑ったマルコと共に家を後にした。
「そういやぁ、夢子の言ってた店ってぇのは駐車場はあるのかぃ?」
「え?うん、あるよ」
台数は少ないけど、とチン、と到着した1階ロビーに通りへと出た夢子はそう言って自分を振り返ったマルコにキョトリ、と目を瞬かせた。
このまま徒歩でそこまで向かうものだと思っていた夢子は、じゃぁ問題ねぇな、と上着のポケットから車のキーを取り出したマルコを見やるとあ…、と思わず声を漏らしていた。
「そっか……マルコさん33歳だったね……」
「ホント……今更なこと言うねぃ……。車ぐれぇ持ってるよぃ」
でなけりゃ外回りなんかできねぇよぃ、と自分が車を所持していることに驚きを隠せない夢子を横目に見やったマルコは、マンションの駐車場へと向かうとソコに停まっている一台の車の前で歩みを止めた。
「歩いて行けねぇ距離でもねぇが、お前ぇのその足じゃ疲れちまうだろぃ」
「や……別に……ヒール高い靴なんて慣れてる、けど…………ってか、ぇ……?レクサス………?」
そう言ってピピ、と車のロックを解除させたマルコに、黒塗りのレクサスを見やった夢子はそうだよぃ?と不思議そうに言葉を返し、運転席のドアを開けたマルコに小さく口元を引きつらせた。
「ぁー……のさ、『部長』クラスでハイクラスのレクサス乗れるって……どんだけ白ひげカンパニーって高収入なの……?」
「ハハッ、まぁ伊達に部長任されちゃいねぇよぃ」
そう言って楽しげに笑い運転席へと乗り込んだマルコに、小さく感嘆の声を漏らした夢子も助手席のドアを開けるとマルコの車へと乗り込んだのだった。
10分とかからずに到着したカフェに、数台ある駐車場へと車を停めたマルコは車から降りた夢子を見やると、同じように車から降りると洋風な外装のカフェへと視線を向けた。
「入るのに躊躇うような店だねぃ………」
「だいじょーぶだって!強面のオッサンだって来てるようなお店なんだから」
可愛らしい外装のお店を見やりそう言ってどこか気疲れしたように溜息を吐きだしたマルコに、そんなマルコを見やり小さく苦笑を洩らした夢子はほら、お腹空いた!と楽しげに声を弾ませるとマルコの背を押し店内へと入っていったのだった。
いらっしゃいませ、と控えめにかけられた声にグルリ、と店内を見回した夢子は窓際のテーブルが空いているのを見やると小さくその口元に笑みを浮かべ、その窓際の席へと腰掛けた。
それに夢子の後を追いかけ、彼女の正面へと腰掛けたマルコは女性客で賑わう店内を見やると、お水を持ってきた店員を一瞥し、正面に腰掛ける夢子へと視線を戻した。
「お前ぇ……本当にこんなとこに知り合いのオッサン連れてきてんのかぃ?」
「え?そうだよ?ってかどっちかって言うとあの人が気に入ってるから此処に来る感じかな?」
見た目通り女性客ばかりの店内に、浮いてねぇか…?と口から出掛けた言葉を呑み込んだマルコは、グラタンとアメリカンがお気に入りなんだって、とそう言葉を返した夢子に、差し出されたメニュー表へと視線を落した。
パスタやドリアが載るメニューに『卵料理』と書かれているページを開いたマルコは、そこに載っている『エッグベネディクト』を見やるとコレがおススメかぃ?とその写真を指差した。
「そー!半熟卵が美味しいの!でも量は少なめだからマルコには物足りないかも」
パスタとかは量多めにできるよ、と声を弾ませた夢子に、車内にいるときからどこか浮き浮きとしていた夢子を見やったマルコはふ~ん、と相槌を返すとペラリ、と再びページを捲った。
「夢子はなににすんだぃ?」
「んー、ホントはベネディクトにするつもりだったけど前にも食べたから今日はオムライスかな」
そう言ってデミグラスソースが美味しいの!と笑みを浮かべた夢子を見やったマルコは確かに美味そうだ、と写真が載るソレを見やるとじゃぁ、とページを戻し先程のベネディクトの写真を指出した。
「俺がコレにしようかねぃ」
そうすりゃトレードできるだろぃ?とその写真を指差し自分を見やったマルコに、キョトリ、と目を瞬かせた夢子は飲みモンはなににする?とドリンクのページを開きソコへと視線を落したマルコに、ふと、その口元に弧をかいた。
「私アイスティーにしようかなー」
「んじゃぁ俺ぁその『オッサン』がおススメだってぇ珈琲にするかねぃ」
そう言って近くを通った店員を呼びとめたマルコに、手際良く自分の分まで注文してくれるマルコを見やった夢子は楽しげに笑みを浮かべると開いていたメニューを閉じたのだった。
暫くして運ばれてきた料理に、マルコのベネディクトをもらい、代わりに自分のオムライスを半分マルコへと差し出した夢子はどこかソレを美味しそうに食べるマルコを見やるとふと、その口元に笑みを浮かべた。
行きつけのカフェに、目の前に座っているのは良くこの店に共に来る男性ではなく、つい数カ月前に知り合った少しばかり世話焼きな男の人で、それがどこかむず痒く感じた夢子はマルコからもらったベネディクトへと視線を落とすと楽しげにソレを口へと運んだ。
「そういやぁ……今日は随分とまた寒々しい格好をしてんな」
「そう……?スカートなんて制服の方が短いし、上はブルゾン着てるからあんまり寒くはないよ?」
そう言って風邪引くなよぃ、とその眉を僅かに顰め自分を見やったマルコに、キョトリと目を瞬かせた夢子はイスにかけてあるブルゾンを見やると、目の前のマルコへと視線を戻した。
ハイネックのセーターにジーンズとコートという何ともシンプルなその服装に、それでも顔の彫がしっかりとしているせいか異様に様になるマルコを見やった夢子はオムライスをパクリ、と一口食べるとんー、と考えるように声を漏らした。
「逆に暑くないの?マルコ」
「俺ぁ寒がりなんだよぃ」
まだ11月だよ、と雪さえ降っていないこの季節にハイネックのセーターを着るマルコに、イスにかけられている厚手のコートを見やった夢子は、そう言って小さく鼻息を漏らしたマルコを見やるとハハッ、と楽しげに肩を震わせた。
「私のツレとは真逆だね。ソイツ暑がりでさ真冬でも薄手の上着しか着ないんだよ」
「若ぇ証拠だろぃ。オッサンの身にゃぁこの寒さは堪えんだよぃ」
そう言って運ばれてきた珈琲へと手を伸ばしたマルコに、そんなもんかなぁ?と不思議そうに小首を傾げた夢子はあぁ、美味ぇな、とソレを一口飲んで顔を綻ばせたマルコを見やるとどこか嬉しそうに笑みを零した。
「マルコだってまだ30前半じゃん、若い若い」
「10代のお前ぇらと比べられてもねぃ……。ま、今のうちに沢山楽しんどけよぃ」
歳とるにつれてそういう格好もしにくくなんだからねぃ、と小さく眉を顰めそう声を漏らしたマルコに、自分の周りに居る年上の女性陣を思い出していた夢子は、30オーバーでもスタイル抜群な彼女達に、タイトなスカートを履く女性陣を思い出しそうだろうか…?と小首を傾げると目の前のマルコへと視線を戻した。
「マルコは落ち着いた服着てる女の方が好みなの?」
「?、別に俺ぁ相手がなに着てようがたいして気にはしねぇよぃ」
そう不意にかけられた質問に、カップへと落としていた視線を夢子へと向けたマルコはひどく不思議そうに夢子へと言葉を返すと、あぁ、とどこか合点がいったように声を漏らし少しだけバツが悪そうに目の前の夢子からソッと視線を逸らした。
「別にお前ぇの服装に難癖付けてるわけじゃぁねぇからねぃ。その格好だってお前ぇによく似合ってると思うよぃ。ただ、ちぃとねぃ………俺が若ぇ女の隣を歩くのに慣れてねぇってだけだ」
こんなんでも周りの目は気にすんだよぃ、と小さく零されたその言葉に、ただ純粋にマルコの好みを聞いただけのつもりだった夢子は、マルコから不意打ちのように頂いたお褒めの言葉にキョトリ、と目を瞬かせるとカッとその頬を紅く染めた。
「ぁ…りがとぅ……」
「ぁ~………なんか、デザートでも食うかぃ?」
「ン、食べる」
思わず口から洩れてしまったその言葉に、ひどく気恥ずかしげに視線をテーブルへと落としてしまった夢子を見やったマルコも、気恥ずかしそうにふぃ、とそんな夢子から視線を逸らすと再びメニュー表を開いたのだった。
「今日はごちそーさまでした!」
「どういたしまして、だよぃ。気ぃつけて帰れ」
駅前に停車されたレクサスに、助手席から降りた夢子はウィン、と降ろされた助手席のサイドガラスから中を覗き込むと、運転席に座るマルコへとそう声をかけた。
ひどく楽しげに顔を綻ばせる夢子に、そう言葉を返したマルコは笑みを浮かべ車から少し離れた夢子を見やると手を振る夢子に軽く手を振り返しそのまま車を発進させた。
静かなエンジン音で駅前の通りを走り去るマルコの車に、遠ざかるレクサスの背を見ていた夢子はふと、その口元に笑みを浮かべると家路へと歩き出す。
「他意は、ないんだろうなぁ……」
ただ純粋にご飯に行こうか、と自分を誘っただけなのだろうマルコにそう小さく声を漏らした夢子は、それでも今日1日の事を思い出すだけで弾む心に、気持ちは正直だ…と苦笑を洩らしたのだった。
それを恋と呼ぶにはまだ早い
Sオマケ→
「あら、夢子じゃない。どうしたの?貴女が此処に来るなんて珍しいわね」
ウィン、と開いた正面入り口の扉に、珍しくも受け付けを担当していたロビンはソコに姿を現した可愛らしい客人を見やるとふと、その口元に笑みを浮かべた。
どこか楽しげに笑みを浮かべる社長秘書に、ヴッと言葉を詰まらせた夢子は自分をチョイチョイ、と手招きするロビンをチラリ、と見やるとオズオズとそんなロビンの元へと歩み寄った。
「Mr,クロコダイルにでも呼ばれたのかしら?」
「いや、今日はシャチョーじゃなくてオールサンデーさんに会いに来た」
そう言って自分から視線を逸らした夢子に、あら、私に?と不思議そうに目を瞬かせたロビンはどこか居心地が悪そうにそこに立つ夢子を見やるとふと、口元に弧をかいた。
「なにか悩みごとの様ね、良いわちょっと待っててちょうだい」
すぐ時間を作るから、と受話器を手に取ったロビンに、内線で誰かに連絡を取るロビンをチラリと見やった夢子は、通話を終え受話器を戻し受付台からこちらへとやってきたロビンへと申し訳なさそう頭を下げた。
「急に押しかけて、仕事の邪魔だったでしょ……?」
「あら、別に構わないわよ。それに貴女が来たのに仕事なんかを優先したら、きっとウチのボスに怒られるもの」
そう言ってどこか楽しげにフフ、と笑ったロビンに、そんな大した用じゃないよ…!慌てたように首を振った夢子はそんな自分を一瞥し、笑みを浮かべ応接室へと歩き出したロビンの後を慌てたように追いかけた。
「それで?何を悩んでいるのかしら?」
通された応接室に、目の前に置かれた洋菓子と紅茶を見やった夢子はそう声をかけ向かい側のイスへと腰掛けたロビンに、ソッと手元の紅茶へと視線を落とすと躊躇うように口を開いた。
「あ、のさ……大人の女って……どんな服着るの……?」
「『大人の女』……?」
そう言ってどこか気恥ずかしそうに顔を俯けさせた夢子に、パチリ、と目を瞬かせたロビンは微かに紅くなる夢子の顔を見やると、ふとその口元に弧をかきそういうこと、と小さく声を漏らした。
「さ、参考までで良いんだけど……!!たとえば、そう!シャチョーとかと歩くとき、ロビンさんならどんな服装にする?!」
「うちの社長を例に出すとあまり参考にならないわよ?だって私彼とはビジネスパートナーであってプライベートで会う事なんてないもの。しいて言えばフォーマルなスーツかしら?」
そう言ってクスクスと笑うロビンに、そ、そっか…と淡泊過ぎる目の前の社長秘書とその社長の関係に小さく肩を落とした夢子はそんな自分を見てそうねぇ、と考えるように声を洩らしたロビンへと視線を戻した。
「貴女はフランス人の血も引いてるからどんな服でも似合うとは思うけれど、大人の女を演じたいのであればフレアタイプのワンピースや落ち着いた色のニットを着るのも良いとは思うけれど」
どうかしら?と小首を傾げ自分を見やったロビンに、なるほど…と小さく頷いた夢子は何かを考えているようで、悩ましげに眉間に寄る皺を見やったロビンはクスリ、と忍び笑いを零すと頬杖をつき、ねぇ、とそんな夢子へと声をかけていた。
「ん?なに?」
「お相手はアカガミコーポレーションの社長かしら?」
そう言ってどこか楽しげに口元に弧をかくロビンに、は…?と呆けたように声を漏らした夢子はパチクリと目を瞬かせると違うよ?と首を横に振った。
「シャンクスさんはいっつも唐突だから、服なんて選んでる暇ないよ。それにあの人とデートなんて、畏れ多いし」
「へぇ………『デート』なのね」
そう言ってハハハ、と笑った夢子は自分の零した言葉を目敏く拾ったロビンに、アッ…と咄嗟に口を押さえると、微笑を湛えるロビンからソッと視線を逸らした。
「フフフ、良い人でも見つかったのかしら?」
「ち、ちがっ……!!そうじゃない!!ただ……ちょっと、相手が年上……だから、服装も気をつけた方が、良いのかなって……」
そう言って珍しくもアタフタとする夢子に、へぇそう。とその笑みを深めたロビンは微かに紅くなる夢子の頬に、楽しげに喉を震わせると腰かけていたイスから立ち上がった。
「ならこれから私とデートでもしましょうか?貴女に似合う服を選んであげるわ」
「ぇ?あ……ありがとう!」
そう言って微笑を湛えたロビンに、パッと顔を輝かせた夢子はあぁ、それと、と応接室の扉へと手をかけ自分を振り返ったロビンに、そんなロビンの元まで駆けよると不思議そうに小首を傾げた。
「貴女には今日買った服でまずはMr,クロコダイルと食事に行ってもらおうかしら。彼、今日は会議でアメリカに行ってるの」
きっとひどく疲れてるはずだから。と苦笑を洩らしたロビンに、何かと忙しい此処の社長の顔を思い出した夢子も大変だね、と苦笑を洩らすと良いよ、と言葉を返しロビンと部屋をあとにしたのだった。