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空蝉の春
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ただ黙々と報告書に筆を走らせていた大倶利伽羅はトントントン、と叩かれた障子に入るよー、と断りを入れ近侍部屋へと入って来た主を怪訝そうに見やった。
「……なんだ」
「みっちゃんが八つ時のオヤツ作ってくれたから休憩にしようー」
そう言って今日はずんだだって、とテーブルに置かれたお盆には自分と主の二人分のずんだと湯飲みが乗っていて、今年も枝豆沢山取れたよー、と顔を綻ばせる主は作物の実りが良いことが嬉しいのかどこか御機嫌で、ほら早く食べなよ。と自分を振り返った主に何故ここで食べる、と言う言葉を呑み込んだ大倶利伽羅は小さく溜息を吐き出すとそんな主の正面へと腰かけた。
「報告書終わりそう?」
「………あぁ」
「そっか、良かった!あ!そう言えば愛染達が後で手合わせしてほしいって」
「……分かった」
そう自分へと声をかけてくる主は端的な言葉しか返さない自分に気を悪くさせるわけでもなくニコニコと笑みを浮かべており、一口二口で自分のずんだ餅を平らげた大倶利伽羅は未だ半分しか減っていない彼女の手の中のずんだを見やると、頬に餡をくっ付ける主に小さく溜息を吐き出し徐に彼女へと手を伸ばした。
「そういえば鶴さんがね、うぐっ……」
「光忠に笑われるぞ……」
「あ、ありがとう……」
少々乱暴に拭われた口元に、不思議そうに目を瞬かせていた夢子は、溜息交じりにそう言うと指先に着いた餡を口へと運んだ大倶利伽羅を見やりどこか呆けたように頬へと手を触れた。
「それで……、鶴丸がなんだ……?」
「あ、うん鶴さんがねさっきすごい楽しそうに山葵片手に厨に入ってったんだけどどうしたんだろうなぁって」
「………おい、そのずんだ餅、他の奴らにはもう配ったのか……?」
そう言って鶴さん今日非番だから厨の手伝いでもするのかな?と小首を傾げる主に、“山葵”を手にしていたという主の言葉に彼女の手にあるずんだを見やり眉を顰めさせた大倶利伽羅は、そう言った自分に後でみっちゃんが配るって言ってたけど…、と不思議そうに小首を傾げた主を見やると空になった湯呑を盆へと乗せ徐に立ち上がった。
「これは俺が片付けておく、アンタは………
『うわああぁぁぁっ………!!!』
今すぐ光忠の所に行け、と主の手にある湯呑を取り上げ言葉を続けようとした大倶利伽羅は遠くから聞こえてきた石切丸の悲痛な叫び声を聞くと遅かったか…、と小さく溜息を吐き出した。
「え?な、何?!今の石切丸の声だよね?!」
「……コレは俺が光忠に渡しておく。アンタは今すぐ鶴丸を石切丸の所へ連れていけ」
そう言うとひどく呆れた様に溜息を吐き出し近侍部屋を出て行ってしまった大倶利伽羅に、ハタと目を瞬かせた夢子はそこで鶴丸が山葵を手にしていた意味を理解したのかあぁ…、と声を漏らすと騒がしくなった本丸に、鶴丸を捕まえるべく同じように近侍部屋を後にしたのだった。
廊下に正座させられ石切丸の説教を受ける鶴丸に、どこか楽しげにいやぁ、すまんすまん!と謝る鶴丸を少し離れたところから見ていた夢子は反省の色が見えないなぁ、と苦笑を漏らすと自分を呼んだ歌仙に、こちらへとやって来た歌仙を振り返った。
「どうしたの?歌仙」
「あと半月ほどで玉集めが始まるだろう?それの前に資材の在庫を確認しておきたいと思ったんだが………鶴丸はどうかしたのかい?」
そう言って帳簿を手にこちらへとやって来た歌仙に、そう言えばもうそんな時期か、と年に数回行われる政府の催し物に分かった。と返した夢子はふと、廊下へと視線を向け、そこに正座をさせられている鶴丸を見やりキョトリと目を瞬かせた歌仙に、再び鶴丸を振り返った。
「あぁ、鶴さんがねオヤツのずんだ餅に山葵を仕込んだらしくて……ソレを食べた石切丸にお説教されてるところ」
「あぁ……さっき燭台切がそんなことを言っていたな。まぁ、食べたのが短刀達でなくて良かったよ」
そう言って、歌仙へと視線を戻し肩を竦めて見せた夢子はそう納得したように声を漏らすと呆れた様に溜息を吐き出した歌仙に、そうならないよう短刀達の分は鶴丸自らオヤツを配っていたことにハハハ、とカラ笑いを浮かべるとはい、と渡された帳簿を受け取った。
「確か今週の近侍は大倶利伽羅だっただろう……?彼奴に頼み辛いのならば僕がやっても良いけれど」
「大丈夫だよ、大倶利伽羅口数は少ないけど近侍の仕事はちゃんとやってくれてるし!」
歌仙は今日非番なんだからゆっくり休んで!と自分を見上げどこか苦笑を漏らし大倶利伽羅の元へと向かった主に、心配そうにそんな主の背を見送った歌仙もまぁ大丈夫だろう…、と小さく零すと自室へと向かったのだった。
木炭が幾つ、玉鋼が幾つ、と数えていく主に、帳簿へと資材の在庫を記入していた大倶利伽羅は、依頼札の仕舞われている棚に、少し足場の悪い台座へと昇った主を見やるとソッとその台座を手で押さえた。
依頼札の枚数を数える主は台座を支える自分に気が付いていないのだろう、至極真剣な表情で依頼札を数えており、危なっかしい…、とひっそりと溜息を吐き出していた大倶利伽羅は徐にその顔を上げ自分を振り返った主に、パッと支えていた台座から手を離した。
「依頼札は650枚だったよー!」
「………あぁ」
そう言ってこれで終わりかな?と台座から降りようとする主に、グラつく足場を見やった大倶利伽羅は一つ溜息を吐き出すとそんな主の体をヒョイ、と持ち上げ地面へと降ろした。
「終わったなら俺は行くぞ」
「え?あ、うん……!」
突然の大倶利伽羅の行動に呆けた様に目を瞬かせていた夢子は、そう言うとさっさと蔵を出て行ってしまった大倶利伽羅に、グラグラと揺れる足場を見やると近々直さなきゃな、と小さく声を漏らし、遠ざかる大倶利伽羅の背を見やるとふと笑みを零してそんな大倶利伽羅の背を追いかけたのだった。
~~~~~
一日の内番も終わり着替えるべく自室へと帰ろうとしていたニッカリは、ふと蔵の方から聞こえてきた声に何とはなしに其方へと視線を向けた。
資材の在庫を確認しているのだろう主と今週の近侍である大倶利伽羅に、立て付けの悪い足場へと昇る主にその台座をさりげなく支える大倶利伽羅を見やったニッカリは、その大倶利伽羅の意外な行動にハタと目を瞬かせるとフッとその口元に弧を描いた。
「おやおや、随分と仲が良いじゃないか」
面白いものを見てしまったねぇ、と小さく零したニッカリは、どこか機嫌がよさそうにその場を後にした。
―――――
第二部隊から第四部隊までが遠征で出払い珍しくも静かな本丸に、大広間で燭台切に押し付けられたエンドウの筋取りをしていた大倶利伽羅はそこへと顔を覗かせたニッカリを一瞥すると再び手元のエンドウへと視線を落とした。
向こうも向こうで特に声をかけるつもりもないのだろう、自分をチラリ、と見ただけでそのまま厨へと入って行ったニッカリに、筋の取れたエンドウをボールへと投げ入れた大倶利伽羅はまだまだ終わりの見えないスジ取りに、小さく溜息を吐き出すと次のエンドウへと手を伸ばした。
良い匂いが漂う厨に、食器棚からマイカップを取り出したニッカリは夕飯の支度をする燭台切の背を見やると冷蔵庫の扉へと手を伸ばした。
ガチャリと開けた冷蔵庫からは気持ちの良い冷気が流れてきて、あぁ気持ちいいね。と小さく零したニッカリは、すぐ閉めてね、と掛けられた声に自分へと背を向ける燭台切を一瞥するとはいはい、と返しオレンジジュースを取り出すと冷蔵庫の扉を閉めた。
年々オカン味が増す燭台切に、オレンジジュースの封を開けたニッカリはエプロンを首から下げる燭台切の背を見やるとそう言えば、と小さく零しカップへとオレンジジュースを注ぎ込んだ。
「ウチの大倶利伽羅ってさ、ツンデレさんなのかな?」
「え?なんだって?」
つんでれ?と聞き慣れない言葉を耳にしたことに料理の手を一旦止めた燭台切に、自分を不思議そうに振り返った燭台切を見やったニッカリは、大広間に居た大倶利伽羅を思い出すとクスリ、と小さく笑みを零しカップへと口を付けた。
「可愛い子を膝に乗せたままスジ取りをしていたから驚いてしまったよ」
彼、結構優しいんだねぇ。とどこか楽しげに零したニッカリに、ハタと目を瞬かせた燭台切は包丁を置くとその言葉の真意を確かめるべくソッと大広間を覗き込んだ。
黙々とエンドウのスジ取りをする大倶利伽羅はこちらに背を向けており自分達に気づいていないようで、そんな大倶利伽羅の背を見やった燭台切は、その膝元に主君の姿を見つけるとハタと目を瞬かせた。
「あぁ、あんなに無防備な格好をして……。もちろん膝枕のことだよ?」
「シッ!ニッカリさん静かに!」
きっと学校の課題をやっていて寝落ちたんだろう主に、そんな主に膝を貸している大倶利伽羅を見やった燭台切はそう楽しげにポツリと零したニッカリの口をサッと塞ぐと、穏やかな空気の流れるそこを見やりひっそりと笑みを零したのだった。
一匹狼 大倶利伽羅
必要以上に馴れ合いはしないけれど主や他の仲間を突き放すわけでもない自本丸の大倶利伽羅
「……なんだ」
「みっちゃんが八つ時のオヤツ作ってくれたから休憩にしようー」
そう言って今日はずんだだって、とテーブルに置かれたお盆には自分と主の二人分のずんだと湯飲みが乗っていて、今年も枝豆沢山取れたよー、と顔を綻ばせる主は作物の実りが良いことが嬉しいのかどこか御機嫌で、ほら早く食べなよ。と自分を振り返った主に何故ここで食べる、と言う言葉を呑み込んだ大倶利伽羅は小さく溜息を吐き出すとそんな主の正面へと腰かけた。
「報告書終わりそう?」
「………あぁ」
「そっか、良かった!あ!そう言えば愛染達が後で手合わせしてほしいって」
「……分かった」
そう自分へと声をかけてくる主は端的な言葉しか返さない自分に気を悪くさせるわけでもなくニコニコと笑みを浮かべており、一口二口で自分のずんだ餅を平らげた大倶利伽羅は未だ半分しか減っていない彼女の手の中のずんだを見やると、頬に餡をくっ付ける主に小さく溜息を吐き出し徐に彼女へと手を伸ばした。
「そういえば鶴さんがね、うぐっ……」
「光忠に笑われるぞ……」
「あ、ありがとう……」
少々乱暴に拭われた口元に、不思議そうに目を瞬かせていた夢子は、溜息交じりにそう言うと指先に着いた餡を口へと運んだ大倶利伽羅を見やりどこか呆けたように頬へと手を触れた。
「それで……、鶴丸がなんだ……?」
「あ、うん鶴さんがねさっきすごい楽しそうに山葵片手に厨に入ってったんだけどどうしたんだろうなぁって」
「………おい、そのずんだ餅、他の奴らにはもう配ったのか……?」
そう言って鶴さん今日非番だから厨の手伝いでもするのかな?と小首を傾げる主に、“山葵”を手にしていたという主の言葉に彼女の手にあるずんだを見やり眉を顰めさせた大倶利伽羅は、そう言った自分に後でみっちゃんが配るって言ってたけど…、と不思議そうに小首を傾げた主を見やると空になった湯呑を盆へと乗せ徐に立ち上がった。
「これは俺が片付けておく、アンタは………
『うわああぁぁぁっ………!!!』
今すぐ光忠の所に行け、と主の手にある湯呑を取り上げ言葉を続けようとした大倶利伽羅は遠くから聞こえてきた石切丸の悲痛な叫び声を聞くと遅かったか…、と小さく溜息を吐き出した。
「え?な、何?!今の石切丸の声だよね?!」
「……コレは俺が光忠に渡しておく。アンタは今すぐ鶴丸を石切丸の所へ連れていけ」
そう言うとひどく呆れた様に溜息を吐き出し近侍部屋を出て行ってしまった大倶利伽羅に、ハタと目を瞬かせた夢子はそこで鶴丸が山葵を手にしていた意味を理解したのかあぁ…、と声を漏らすと騒がしくなった本丸に、鶴丸を捕まえるべく同じように近侍部屋を後にしたのだった。
廊下に正座させられ石切丸の説教を受ける鶴丸に、どこか楽しげにいやぁ、すまんすまん!と謝る鶴丸を少し離れたところから見ていた夢子は反省の色が見えないなぁ、と苦笑を漏らすと自分を呼んだ歌仙に、こちらへとやって来た歌仙を振り返った。
「どうしたの?歌仙」
「あと半月ほどで玉集めが始まるだろう?それの前に資材の在庫を確認しておきたいと思ったんだが………鶴丸はどうかしたのかい?」
そう言って帳簿を手にこちらへとやって来た歌仙に、そう言えばもうそんな時期か、と年に数回行われる政府の催し物に分かった。と返した夢子はふと、廊下へと視線を向け、そこに正座をさせられている鶴丸を見やりキョトリと目を瞬かせた歌仙に、再び鶴丸を振り返った。
「あぁ、鶴さんがねオヤツのずんだ餅に山葵を仕込んだらしくて……ソレを食べた石切丸にお説教されてるところ」
「あぁ……さっき燭台切がそんなことを言っていたな。まぁ、食べたのが短刀達でなくて良かったよ」
そう言って、歌仙へと視線を戻し肩を竦めて見せた夢子はそう納得したように声を漏らすと呆れた様に溜息を吐き出した歌仙に、そうならないよう短刀達の分は鶴丸自らオヤツを配っていたことにハハハ、とカラ笑いを浮かべるとはい、と渡された帳簿を受け取った。
「確か今週の近侍は大倶利伽羅だっただろう……?彼奴に頼み辛いのならば僕がやっても良いけれど」
「大丈夫だよ、大倶利伽羅口数は少ないけど近侍の仕事はちゃんとやってくれてるし!」
歌仙は今日非番なんだからゆっくり休んで!と自分を見上げどこか苦笑を漏らし大倶利伽羅の元へと向かった主に、心配そうにそんな主の背を見送った歌仙もまぁ大丈夫だろう…、と小さく零すと自室へと向かったのだった。
木炭が幾つ、玉鋼が幾つ、と数えていく主に、帳簿へと資材の在庫を記入していた大倶利伽羅は、依頼札の仕舞われている棚に、少し足場の悪い台座へと昇った主を見やるとソッとその台座を手で押さえた。
依頼札の枚数を数える主は台座を支える自分に気が付いていないのだろう、至極真剣な表情で依頼札を数えており、危なっかしい…、とひっそりと溜息を吐き出していた大倶利伽羅は徐にその顔を上げ自分を振り返った主に、パッと支えていた台座から手を離した。
「依頼札は650枚だったよー!」
「………あぁ」
そう言ってこれで終わりかな?と台座から降りようとする主に、グラつく足場を見やった大倶利伽羅は一つ溜息を吐き出すとそんな主の体をヒョイ、と持ち上げ地面へと降ろした。
「終わったなら俺は行くぞ」
「え?あ、うん……!」
突然の大倶利伽羅の行動に呆けた様に目を瞬かせていた夢子は、そう言うとさっさと蔵を出て行ってしまった大倶利伽羅に、グラグラと揺れる足場を見やると近々直さなきゃな、と小さく声を漏らし、遠ざかる大倶利伽羅の背を見やるとふと笑みを零してそんな大倶利伽羅の背を追いかけたのだった。
~~~~~
一日の内番も終わり着替えるべく自室へと帰ろうとしていたニッカリは、ふと蔵の方から聞こえてきた声に何とはなしに其方へと視線を向けた。
資材の在庫を確認しているのだろう主と今週の近侍である大倶利伽羅に、立て付けの悪い足場へと昇る主にその台座をさりげなく支える大倶利伽羅を見やったニッカリは、その大倶利伽羅の意外な行動にハタと目を瞬かせるとフッとその口元に弧を描いた。
「おやおや、随分と仲が良いじゃないか」
面白いものを見てしまったねぇ、と小さく零したニッカリは、どこか機嫌がよさそうにその場を後にした。
―――――
第二部隊から第四部隊までが遠征で出払い珍しくも静かな本丸に、大広間で燭台切に押し付けられたエンドウの筋取りをしていた大倶利伽羅はそこへと顔を覗かせたニッカリを一瞥すると再び手元のエンドウへと視線を落とした。
向こうも向こうで特に声をかけるつもりもないのだろう、自分をチラリ、と見ただけでそのまま厨へと入って行ったニッカリに、筋の取れたエンドウをボールへと投げ入れた大倶利伽羅はまだまだ終わりの見えないスジ取りに、小さく溜息を吐き出すと次のエンドウへと手を伸ばした。
良い匂いが漂う厨に、食器棚からマイカップを取り出したニッカリは夕飯の支度をする燭台切の背を見やると冷蔵庫の扉へと手を伸ばした。
ガチャリと開けた冷蔵庫からは気持ちの良い冷気が流れてきて、あぁ気持ちいいね。と小さく零したニッカリは、すぐ閉めてね、と掛けられた声に自分へと背を向ける燭台切を一瞥するとはいはい、と返しオレンジジュースを取り出すと冷蔵庫の扉を閉めた。
年々オカン味が増す燭台切に、オレンジジュースの封を開けたニッカリはエプロンを首から下げる燭台切の背を見やるとそう言えば、と小さく零しカップへとオレンジジュースを注ぎ込んだ。
「ウチの大倶利伽羅ってさ、ツンデレさんなのかな?」
「え?なんだって?」
つんでれ?と聞き慣れない言葉を耳にしたことに料理の手を一旦止めた燭台切に、自分を不思議そうに振り返った燭台切を見やったニッカリは、大広間に居た大倶利伽羅を思い出すとクスリ、と小さく笑みを零しカップへと口を付けた。
「可愛い子を膝に乗せたままスジ取りをしていたから驚いてしまったよ」
彼、結構優しいんだねぇ。とどこか楽しげに零したニッカリに、ハタと目を瞬かせた燭台切は包丁を置くとその言葉の真意を確かめるべくソッと大広間を覗き込んだ。
黙々とエンドウのスジ取りをする大倶利伽羅はこちらに背を向けており自分達に気づいていないようで、そんな大倶利伽羅の背を見やった燭台切は、その膝元に主君の姿を見つけるとハタと目を瞬かせた。
「あぁ、あんなに無防備な格好をして……。もちろん膝枕のことだよ?」
「シッ!ニッカリさん静かに!」
きっと学校の課題をやっていて寝落ちたんだろう主に、そんな主に膝を貸している大倶利伽羅を見やった燭台切はそう楽しげにポツリと零したニッカリの口をサッと塞ぐと、穏やかな空気の流れるそこを見やりひっそりと笑みを零したのだった。
一匹狼 大倶利伽羅
必要以上に馴れ合いはしないけれど主や他の仲間を突き放すわけでもない自本丸の大倶利伽羅