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空蝉の春
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目の前に広がる広大な中庭に、そんな中庭をバックに自分の前にチョコン、と正座をする一風変わった子狐を見やった少女はパチクリ、と目を瞬かせると、もう一度自分が座る日本家屋を見渡した。
保育園の卒園と同時に急遽決まった施設の移動に、自分を此処へと連れてきたスーツ姿の大人達はいつの間にか姿を消しており、その場にいるのは自分と目の前の子狐のみで一体何がどうなっているのだろう……、と困惑した表情で子狐と部屋を見ていた少女はようこそお越しくださいました!と不意に口を開いた子狐に大きく肩を震わせた。
「ぇっ、キツネがしゃべった……??」
「お初にお目にかかります夢野夢子様。わたくしこの本丸の案内人を務めさせていただきます『こんのすけ』と申します。以後お見知り置きを。さて、早速ではありますが貴女様にはこれよりこの本丸で審神者として過ごしていただくこととなりましたのでどうぞよろしくお願い致します」
そう、驚く少女を尻目に言葉を続けるこんのすけと名乗った子狐は、目をシパシパと瞬かせる少女を見やるとまずこの本丸についてですが、と話を進めるよう言葉を続けた。
「ま、まって!ここはあたらしいお家じゃないの?」
「えぇ、そうでございますよ。今日から此処が貴女様が暮らす本丸でございます。此処でこれから貴女様には刀剣男士と共に歴史修正主義者と戦っていただくのでございます」
話を先へと進めようとする目の前の子狐に、慌てて待ったをかけた少女はそう言ってどこか誇らしげにその胸を張った子狐を見やるとキョトリと目を瞬かせた。
「とーけんだんし……?れきし、しゅーせい……?」
「あぁ、時の政府の方たちは貴女様に何の説明もされていらっしゃらないようですね。それでは我々やこれから貴女が務めていくこととなる審神者について少々ご説明いたしましょう!」
難しい単語ばかりを並び立てる子狐に小首を傾げていた少女はそう言うや否やその場に3D映像を映し出した子狐を見やるとおぉ、と感嘆の声を上げていた。
「時は西暦2205年、歴史の改変を目論む『歴史修正主義者』によって過去への攻撃が始まったのでございます。時の政府はそれを阻止するため“審神者”なる者を各時代へと送り出したのでございます。“審神者”とは眠っている物の想い、心を目覚めさせ自ら戦う力を与え、振るわせる技を持つ者のことをそう呼ぶのでございます。その技によって生み出された付喪神『刀剣男士』と共に歴史を守るため、夢野夢子様改め、審神者様にこうして過去へとお越しいただいたのでございます」
そう映像を駆使し今の現状を説明してくれる子狐に、その小さな頭では三分の一も理解ができなかったその話を目を瞬かせながら聞いていた夢子はえぇっと、と声を漏らすと宙に映し出される映像を見やり、目の前のこんのすけへと視線を落とした。
「悪いことしてる人たちをやっつければいいの……?」
「まぁザックリ言えばそんな感じでございます!」
そう言って小首を傾げた夢子に今これ以上説明をしても余計混乱させるだけだろう、とそう簡潔に頷いたこんのすけはなるほど…、と納得した少女を見やるとでは!と声を上げどこか楽しげにスクリとその場から立ち上がった。
「後々のことはまた追々ご説明するとして、学び舎はこの本丸より通っていただくこととなりますのでご承知のほどよろしくお願いいたします。次に審神者様には近侍となる刀を顕現していただきますのでこちらへどうぞ」
そう言ってスタスタと歩き出してしまったこんのすけに、服や教科書はどうなっているんだろう…、と不思議そうにそんなこんのすけの後を追うよう渡り廊下へと出た夢子は、いくつもの部屋が並ぶ通りを見やるとはぁ、と感嘆の声を漏らした。
一人で住むには広すぎるほど大きな家屋に、呆けた様に廊下の奥を見ていた夢子はこちらにございます、と一つの部屋で歩みを止めたこんのすけに、同じように足を止めると促された部屋の中を覗き込んだ。
十畳ほどの部屋には床柩があるだけで他には何もなく、部屋の中央の畳の上に鎮座する五振りの刀を見やった夢子はキョトリと目を瞬かせると不思議そうにこんのすけを見下ろした。
「あれは……?」
「こちらがこれから主様の近侍となる初期刀にございます!こちらの五振りより一振り、ご自身にあった刀剣をお選びください」
そう言って部屋の中央へと歩き出したこんのすけに、きんじ…?と小首を傾げた夢子も同じようにその刀の前へと立つとハタと目を瞬かせた。
うっすらと刀から浮かび上がっている人の姿に、変わった服装の男の人たちを見やった夢子はえ…、と困惑気味に声を漏らすとこんのすけとその刀剣男士を交互に見やった。
「あの……こんのすけ君、これって……」
「これが先ほど説明いたしました刀の付喪神“刀剣男士”にございます!
右より『陸奥守吉行』『歌仙兼定』『加州清光』『蜂須賀虎徹』『山姥切国広』どれも打刀ですのでご自分に合った刀剣をどうぞ」
何故刀から人の姿が浮かんで見えるのか、ということについて説明を乞おうとした夢子はそう言って話を先に進めるこんのすけに困ったように眉を下げるともう一度目の前の五振りの刀へと視線を向けた。
どの刀も見た目は男性で、その中から一つを選べと無理難題を言ってくる子狐をチラリ、と見やった夢子はささ、どうぞ!とどこか期待の眼差しを自分へと向けるこんのすけに諦めた様に溜息を吐き出すと、その五振りの中でも一番穏やかそうな表情を浮かべる刀を手に取った。
「そ、それじゃぁ……これで……」
「『歌仙兼定』ですね!ではその刀に神力を注いでください、そうすればその刀がこの世界に顕現いたしますので!」
「え……?しんりき?って……なに?」
「想いを込めて刀の名を呼んでくだされば大丈夫でございます!」
藤色の煌びやかな鞘に収まる打刀に、それを手にこんのすけと刀を交互に見ていた夢子はそう言ったこんのすけに名前…、と小さく零すと手元の刀へと視線を落とした。
「………おいで、『歌仙兼定』」
そう静かに言の葉に力を乗せれば淡く光りだした刀に、一瞬の閃光の後目の前に現れた男性を見やった夢子は口を呆けように開いていた。
「僕は歌仙兼定。歴代兼定でも随一と呼ばれる二代目、通称之定の作さ。名前の由来は三十六歌仙から。風流だろう?……まぁ、元主が手打ちにした人数が36人だったから、と言うと、みんなどういう顔をしていいかわからなくなるようだけれど」
そう、自分を見下ろし自己紹介をする男性に、ホントに刀から出てきた…と呆けた様にそんな歌仙を見ていた夢子はおや、と声を漏らした歌仙に、そんな歌仙からどこか気恥ずかしそうに視線を逸らした。
「これはまた随分と可愛らしい主だね。君が僕を呼んだのかい?」
「そうですぞ歌仙殿!この審神者殿はまだ幼子ではございまするがきっと我々のお力になってくれましょう!」
自分の身の丈の半分もないであろう幼子に、そう説明をするこんのすけを見やった歌仙はこの子が新しい君主か、と気恥ずかしそうに顔を俯けさせる少女を見下ろすと、そんな少女の目線に合わせるよう膝をついた。
「やぁ、初めまして幼き主殿。僕は歌仙兼定、これから共によろしく頼むよ」
そう言って少女を安心させるよう柔和な笑みを浮かべて見せた歌仙は、そんな自分へと視線を向けた少女にまた笑みを浮かべて見せた。
「は、はじめまして……!わたしは夢野っ、「あぁ、真名を口にしてはいけないよ。僕らはこれでも神の端くれだからね。真名を明かすということは僕らに命を差し出すということ。常世の世界に隠されたくはないだろう?」
そう言ってそっと塞がれた口元に、小さく口元に弧を描く歌仙はけれどもどこか少し困ったように眉を下げていて、それに一つ瞬きを零した夢子は分ったかい?と掛けられた声に小さく頷くと、また笑みを浮かべた歌仙を見やりよろしくおねがいします。とそんな歌仙へと頭を下げた。
年の頃よりは幾分がしっかりとしているようにも見える目の前の少女に、こちらこそ。と言葉を返した歌仙はそんな自分達のやり取りを見て、では!と声を上げたこんのすけへと視線を向けた。
「出陣や遠征、演練など細かい事につきましては後々ご説明させていただきますので、本日は歌仙殿と共にごゆるりと本丸でお過ごしくださいませ」
「あぁ、君はもてなしの心をよくわかっている」
団子なども御座いますゆえ、と笑みを浮かべたこんのすけに楽しげにその口元に笑みを浮かべた歌仙は、そう言うと床に置いてあった他の四振りの刀と共にその場からフッと姿を消したこんのすけを一瞥すると未だ呆けた様にその場に佇む主へと視線を落とした。
「さて、主。お茶にしようか。その後は僕が夕餉を作ってあげよう」
「あ、ありがとう……!」
お腹が空いただろう?とそんな夢子の手を取った歌仙はそう言った自分を見上げパッと顔を輝かせた夢子にふふ、と笑みを零すと厨 へと歩き出したのだった。
初めまして、刀剣男士殿
保育園の卒園と同時に急遽決まった施設の移動に、自分を此処へと連れてきたスーツ姿の大人達はいつの間にか姿を消しており、その場にいるのは自分と目の前の子狐のみで一体何がどうなっているのだろう……、と困惑した表情で子狐と部屋を見ていた少女はようこそお越しくださいました!と不意に口を開いた子狐に大きく肩を震わせた。
「ぇっ、キツネがしゃべった……??」
「お初にお目にかかります夢野夢子様。わたくしこの本丸の案内人を務めさせていただきます『こんのすけ』と申します。以後お見知り置きを。さて、早速ではありますが貴女様にはこれよりこの本丸で審神者として過ごしていただくこととなりましたのでどうぞよろしくお願い致します」
そう、驚く少女を尻目に言葉を続けるこんのすけと名乗った子狐は、目をシパシパと瞬かせる少女を見やるとまずこの本丸についてですが、と話を進めるよう言葉を続けた。
「ま、まって!ここはあたらしいお家じゃないの?」
「えぇ、そうでございますよ。今日から此処が貴女様が暮らす本丸でございます。此処でこれから貴女様には刀剣男士と共に歴史修正主義者と戦っていただくのでございます」
話を先へと進めようとする目の前の子狐に、慌てて待ったをかけた少女はそう言ってどこか誇らしげにその胸を張った子狐を見やるとキョトリと目を瞬かせた。
「とーけんだんし……?れきし、しゅーせい……?」
「あぁ、時の政府の方たちは貴女様に何の説明もされていらっしゃらないようですね。それでは我々やこれから貴女が務めていくこととなる審神者について少々ご説明いたしましょう!」
難しい単語ばかりを並び立てる子狐に小首を傾げていた少女はそう言うや否やその場に3D映像を映し出した子狐を見やるとおぉ、と感嘆の声を上げていた。
「時は西暦2205年、歴史の改変を目論む『歴史修正主義者』によって過去への攻撃が始まったのでございます。時の政府はそれを阻止するため“審神者”なる者を各時代へと送り出したのでございます。“審神者”とは眠っている物の想い、心を目覚めさせ自ら戦う力を与え、振るわせる技を持つ者のことをそう呼ぶのでございます。その技によって生み出された付喪神『刀剣男士』と共に歴史を守るため、夢野夢子様改め、審神者様にこうして過去へとお越しいただいたのでございます」
そう映像を駆使し今の現状を説明してくれる子狐に、その小さな頭では三分の一も理解ができなかったその話を目を瞬かせながら聞いていた夢子はえぇっと、と声を漏らすと宙に映し出される映像を見やり、目の前のこんのすけへと視線を落とした。
「悪いことしてる人たちをやっつければいいの……?」
「まぁザックリ言えばそんな感じでございます!」
そう言って小首を傾げた夢子に今これ以上説明をしても余計混乱させるだけだろう、とそう簡潔に頷いたこんのすけはなるほど…、と納得した少女を見やるとでは!と声を上げどこか楽しげにスクリとその場から立ち上がった。
「後々のことはまた追々ご説明するとして、学び舎はこの本丸より通っていただくこととなりますのでご承知のほどよろしくお願いいたします。次に審神者様には近侍となる刀を顕現していただきますのでこちらへどうぞ」
そう言ってスタスタと歩き出してしまったこんのすけに、服や教科書はどうなっているんだろう…、と不思議そうにそんなこんのすけの後を追うよう渡り廊下へと出た夢子は、いくつもの部屋が並ぶ通りを見やるとはぁ、と感嘆の声を漏らした。
一人で住むには広すぎるほど大きな家屋に、呆けた様に廊下の奥を見ていた夢子はこちらにございます、と一つの部屋で歩みを止めたこんのすけに、同じように足を止めると促された部屋の中を覗き込んだ。
十畳ほどの部屋には床柩があるだけで他には何もなく、部屋の中央の畳の上に鎮座する五振りの刀を見やった夢子はキョトリと目を瞬かせると不思議そうにこんのすけを見下ろした。
「あれは……?」
「こちらがこれから主様の近侍となる初期刀にございます!こちらの五振りより一振り、ご自身にあった刀剣をお選びください」
そう言って部屋の中央へと歩き出したこんのすけに、きんじ…?と小首を傾げた夢子も同じようにその刀の前へと立つとハタと目を瞬かせた。
うっすらと刀から浮かび上がっている人の姿に、変わった服装の男の人たちを見やった夢子はえ…、と困惑気味に声を漏らすとこんのすけとその刀剣男士を交互に見やった。
「あの……こんのすけ君、これって……」
「これが先ほど説明いたしました刀の付喪神“刀剣男士”にございます!
右より『陸奥守吉行』『歌仙兼定』『加州清光』『蜂須賀虎徹』『山姥切国広』どれも打刀ですのでご自分に合った刀剣をどうぞ」
何故刀から人の姿が浮かんで見えるのか、ということについて説明を乞おうとした夢子はそう言って話を先に進めるこんのすけに困ったように眉を下げるともう一度目の前の五振りの刀へと視線を向けた。
どの刀も見た目は男性で、その中から一つを選べと無理難題を言ってくる子狐をチラリ、と見やった夢子はささ、どうぞ!とどこか期待の眼差しを自分へと向けるこんのすけに諦めた様に溜息を吐き出すと、その五振りの中でも一番穏やかそうな表情を浮かべる刀を手に取った。
「そ、それじゃぁ……これで……」
「『歌仙兼定』ですね!ではその刀に神力を注いでください、そうすればその刀がこの世界に顕現いたしますので!」
「え……?しんりき?って……なに?」
「想いを込めて刀の名を呼んでくだされば大丈夫でございます!」
藤色の煌びやかな鞘に収まる打刀に、それを手にこんのすけと刀を交互に見ていた夢子はそう言ったこんのすけに名前…、と小さく零すと手元の刀へと視線を落とした。
「………おいで、『歌仙兼定』」
そう静かに言の葉に力を乗せれば淡く光りだした刀に、一瞬の閃光の後目の前に現れた男性を見やった夢子は口を呆けように開いていた。
「僕は歌仙兼定。歴代兼定でも随一と呼ばれる二代目、通称之定の作さ。名前の由来は三十六歌仙から。風流だろう?……まぁ、元主が手打ちにした人数が36人だったから、と言うと、みんなどういう顔をしていいかわからなくなるようだけれど」
そう、自分を見下ろし自己紹介をする男性に、ホントに刀から出てきた…と呆けた様にそんな歌仙を見ていた夢子はおや、と声を漏らした歌仙に、そんな歌仙からどこか気恥ずかしそうに視線を逸らした。
「これはまた随分と可愛らしい主だね。君が僕を呼んだのかい?」
「そうですぞ歌仙殿!この審神者殿はまだ幼子ではございまするがきっと我々のお力になってくれましょう!」
自分の身の丈の半分もないであろう幼子に、そう説明をするこんのすけを見やった歌仙はこの子が新しい君主か、と気恥ずかしそうに顔を俯けさせる少女を見下ろすと、そんな少女の目線に合わせるよう膝をついた。
「やぁ、初めまして幼き主殿。僕は歌仙兼定、これから共によろしく頼むよ」
そう言って少女を安心させるよう柔和な笑みを浮かべて見せた歌仙は、そんな自分へと視線を向けた少女にまた笑みを浮かべて見せた。
「は、はじめまして……!わたしは夢野っ、「あぁ、真名を口にしてはいけないよ。僕らはこれでも神の端くれだからね。真名を明かすということは僕らに命を差し出すということ。常世の世界に隠されたくはないだろう?」
そう言ってそっと塞がれた口元に、小さく口元に弧を描く歌仙はけれどもどこか少し困ったように眉を下げていて、それに一つ瞬きを零した夢子は分ったかい?と掛けられた声に小さく頷くと、また笑みを浮かべた歌仙を見やりよろしくおねがいします。とそんな歌仙へと頭を下げた。
年の頃よりは幾分がしっかりとしているようにも見える目の前の少女に、こちらこそ。と言葉を返した歌仙はそんな自分達のやり取りを見て、では!と声を上げたこんのすけへと視線を向けた。
「出陣や遠征、演練など細かい事につきましては後々ご説明させていただきますので、本日は歌仙殿と共にごゆるりと本丸でお過ごしくださいませ」
「あぁ、君はもてなしの心をよくわかっている」
団子なども御座いますゆえ、と笑みを浮かべたこんのすけに楽しげにその口元に笑みを浮かべた歌仙は、そう言うと床に置いてあった他の四振りの刀と共にその場からフッと姿を消したこんのすけを一瞥すると未だ呆けた様にその場に佇む主へと視線を落とした。
「さて、主。お茶にしようか。その後は僕が夕餉を作ってあげよう」
「あ、ありがとう……!」
お腹が空いただろう?とそんな夢子の手を取った歌仙はそう言った自分を見上げパッと顔を輝かせた夢子にふふ、と笑みを零すと
初めまして、刀剣男士殿
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