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twst【オリキャラ無し】


「あらら、ここは雪か」

鏡を通って入った先に広がる景色に、やはりここもかと言うように呟いたのは、ケイト・ダイヤモンドである。
ここはサバナクロー寮。
普段は年中暖かいサバンナのような気候であるこの場所は、現在雪が降っている。
ハーツラビュルの寮生である彼がここにいる理由もそれに関係している。
というのも、ケイトが所属しているハーツラビュル寮でも異常気象が発生しており、寮生達は皆困惑すると同時に、ハリネズミやフラミンゴ、薔薇の確認などでてんてこまいになっていた。
そこで、他の寮でも異常気象が起こってるのではと思い、状況を確認しに来たのだ。
先の呟きは予想通り異常気象が起こっていたことに対してだった。

「やっぱ、ここもだよねぇ」

サバナクロー寮は寮の性質から獣人族の生徒が多数所属しているので、この気候が長く続けば辛いだろう。
キョロキョロと辺りを見回す。
せっかくサバナクロー寮に来たのだから恋人の顔を一目見れたらいいと思ったのだ。

「レオナくん起きれてるかな。ねこは寒いの苦手だって言うし」
「誰がねこだって?」
「うっわぁ!?れ、レオナくん…」

背後からかかった声に勢いよく振り返ると、先ほど口にした名前の主が立っていた。
レオナ・キングスカラー。サバナクロー寮の寮長であり、多くの生徒から恐れられる人物。そして、ケイトの恋人である。
確かに思い人には会えたが、まずいところを聞かれてしまった。ケイトは少し前の自分を恨んだ。
レオナは名前を呼んだきり喋らなくなったケイトをみて、愉快そうにクツクツと喉を鳴らす。

「で、何の用だ」
「え、いや…ここはどうなってるかなって見に来ただけだよ」
「何だ、俺に会いに来たんじゃ無いのか?」
「!」

レオナが意地悪な顔でケイトを見下ろしてくる。ケイトは、自分とはまた違う緑の瞳と目が合い、顔を赤く染め何か言おうと口をはくはくと開閉させるが、大方図星であったので結局何も言い返せず、拗ねたようにレオナを見上げた。
その様子を上機嫌で見ていたレオナは、そっと柔らかなオレンジの髪に手を伸ばす。
そのまま、ひと房を指に絡ませ愛しげに持ち上げるとそっと口付けを落とした。
そんな行動にケイトは更に顔を真っ赤にして制止の声をあげる。

「もうっレオナくん!」
「なんだ」
「なんだじゃないし!こんなところで、やめてよね…誰に見られるかわかんないじゃん」
「この気候じゃ誰も出てこねぇよ」

そう、先に述べたようにサバナクロー寮には現在雪が降っているのだ。案の定寮生達は、一部を除き寒さに震え部屋に閉じ籠っているらしかった。

「レオナくんは平気なの?」
「はっ、他の軟弱な奴等と一緒にするな。この程度は何ともない」
「あはは、さっすが」

なんでもないやり取りが楽しい。互いに穏やかに会話をしているのが、この異常気象という状況に似つかわしくなくて、なんだか笑いが込み上げてくる。
しかしまぁ、今はイレギュラーな状態。
当然穏やかな時間は長く続かないわけで、来訪者が現れる。

「レオナ先輩!」
「あぁ?」
「緊急の寮長会議を行います。至急会議室まで来て下さい」

現れたのはジャミル・バイパー。スカラビア寮の副寮長。おそらく寮長会議のために各寮長を呼びに来ているのだろう。
レオナは、気だるげに息を吐く。

「ったく、しょうがねぇな」
「サボらず来て下さいね」

要件を伝えるとジャミルは、二人の様子を気にすることなくそのまま鏡を抜けていった。
レオナは触れていた手を離す。
ケイトは手が離れるの少し寂しく思いながら、口を開く。

「じゃあ、オレも寮戻るね」
「あぁ」
「寮長会議、サボっちゃ駄目だよ?」
「わぁってるよ」
「じゃあね」
「ケイト」

なにという言葉は、音になる前にレオナの口のなかに飲み込まれる。しかし、唇が触れいたのはほんの一瞬。離れた時に見たレオナの顔は実に穏やかで、ケイトはどうしようもないほどときめいてしまう。
二人は互いに名残惜しく思いながらも、自分の役目を果たすために各々の行くべき場所へ向かうのだった。


まさか、あんな大掛かりな騒動になるとはまだ思ってもいなかったが。
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