サマー・サマー・イリュージョン
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第一月曜日の放課後、毎月恒例の委員会の集まりがある。
今年度3回目の集まりだが、俺が出席するのは今回が初めてだ(第1回と2回は丁度ボーダーの任務が入ってしまい、代役を立ててもらった)。
俺が所属している図書委員の集会場所である図書室に着くと、既に何人かの生徒がクラス順に決められた席に座っていた。
自分の席を見つけると、その席から1つ空けた席に見知った顔を見つけた。
向こうも気付いたようで、一瞬驚いた顔をする。
「あれ?村上くん図書委員だっけ?」
「久しぶり忍野、今年も図書委員なんだな。」
去年図書委員で知り合った女子生徒・忍野 苑。
自分の席に腰掛けながら答える。
「過去2回はボーダーの任務で出れなくて代理に出てもらってたんだ」
「なるほど。じゃあ今年もよろしくだね」
「ああ、よろしく」
忍野は大人しそうな見た目で無口だと思われがちだが、案外気さくで話しやすい。
図書委員は前の年から連続で所属する人が多く、去年は1年生と俺を除くほぼ全員が図書委員経験者だった。そこで1年の時も図書委員だった忍野が俺を気にかけてくれて、そこから会うと話す仲になったのだ。
他愛もない会話をしていると間の席の生徒が来たので、会話は一旦打ち切りとなった。
そして間もなく委員会が始まり、前に立った委員長によりこの1ヶ月の貸出図書数の報告や月間目標の確認などが行われる。
去年と同じくあまり確認事項は多くないため、15分弱経った頃委員会の終了を告げられた。
ぞろぞろと生徒が教室を去っていく中、配られた資料をファイルにしまっている忍野に声をかける。
今日忍野に会ってから気になっていたことがあるからだ。
「忍野、何か困っていることがあるのか?」
「…え、私そんなふうに見える?」
忍野は困ったように笑った。
「なんか前より疲れた顔をしている気がしたから。何もないならいいんだ」
「村上くんは鋭いなぁ…。ちょっと寝不足なだけだよ、心配してくれてありがとね」
やんわりとした、しかし明確な拒絶だった。
窓から射し込む夕日が忍野の顔を照らす。
眩しくて表情はよく見えなかった。
本当は、疲れている顔をしている「気がした」のではなく、「確実に」昨年度会った時に記憶している表情よりも今の彼女は疲弊していた。
それは恐らく俺の副作用でなければ気付けないくらい些細な変化だ。
つまり、彼女自身何かしらの原因で疲弊していることを理解していながらそれを隠している。
寝不足だけが原因ではないだろう。
だが、彼女が俺に本当の理由を言わなかった以上、俺はそれ以上踏み込むことは出来ないのだ。
お互いの隠し事に土足で踏み込める程、俺と忍野は近くなかった。
(あと一歩が及ばない)