サマー・サマー・イリュージョン
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「忍野ってさぁ、友達いんの?」
「は?」
昼休みの終了間近、5分前着席した私は先程まで後ろの席で寝ていた男から突然かけられた声に振り返った。
この男は今なんと言った?
とでもなく失礼な言葉が聞こえたのだが。
そのかっちりとキマってるリーゼント毟ってやろうか??
「当真くんデリカシーって言葉知ってる?」
「ちょ、怒んなって。だってお前が誰かと話してるとこあんまし見た事ねぇんだもん」
だってとか、もんとか、180cm超えの男が言っても可愛くないからな。
机から飛び出ている長い脚(スタイル良すぎて腹立つ)を思いきり蹴っておく。
痛がっているが無視だ。
「失礼な。友達くらいいるよ、当真くんみたいに多くはないけどさ」
「例えば?」
「えっ例えば…中本さんとか、あとはC組の清水ちゃんとか…」
反発しておいてなんだが、改めて思い返すと自分で思っていたよりも友達と言える人数が少ない。
少し話す程度の人は結構いると思うのだけれど、友達と言えるのかどうか分からないラインの人ばかりだ。
「…そのくらいしかいないかも」
なんだか少し寂しい気もしたが紛れもない事実だし、望んでこの状況を作り出したのは他でもない自分だ。
黒板の方に身体の向きを戻しながら呟く。
「なら俺が1番仲良い友達かもな」
「え…」
顔だけ当真の方に向けると、彼はなんでもないみたいな顔をしている。
「…よくそんな恥ずかしいこと言えるね当真くん」
「お前今日あたり強くねぇ!?」
思わず可愛くない返事を返してしまったが、内心はかなり驚いていた。
確かに最近は彼と1番会話をしていたかもしれない。
彼にとっては大勢いる中の取るに足らない1人だとしても、私の中ではいつの間にか大きな存在になりつつあるというのか。
(少し、関わりすぎたかな)
ここにきて、欲目が出てしまったらしい。
関わりすぎて後々苦しくなるのは自分だ。
それでも関わり続けて、気づいてくれることを期待してしまう私はなんて狡い女なんだろう。
小さく吐いた溜息は授業開始の鐘の裏で溶けるように消えた。
(狭く浅くは自己防衛)