サマー・サマー・イリュージョン
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開け放たれた窓から入ってくる心地よいそよ風が眠気を誘う。
教室の中にカルキの匂いが漂う水泳の授業の次のコミュニケーション英語。
開始10分で既にクラスの半数が夢の中に旅立っている。水泳後の授業、しかも6時間目ということもあり、教師も見て見ぬふりをしてくれている。
かく言う俺もそろそろ限界が近い。
ぼやける視界の端で何かが揺れた。
(あ…)
忍野が寝ている。
眠気に逆らおうとしているのか、こくりこくりと揺れる度にビクッとして背筋が伸びる(またすぐに揺れ始める)。
そういえば忍野が寝ているところは初めて見るかもしれない。
席が前後になってから分かったことだが、忍野は真面目だ。
クラスの大半が寝るような退屈な授業でもこの女は絶対に寝ない。言うまでもなく俺はその授業で寝た。
なら何故彼女が起きていたと分かるのかといえば、授業終わりの彼女の要点が纏まった綺麗なノートを見れば一目瞭然だった。
そんな忍野が寝ているとは相当レアだ。
どうせあと数十分で帰宅できるし、この時間は眠気よりもレアな忍野を見ることを優先しよう。
いつも後ろ姿を見てはいたが、こんなにじっくり見ようと思って見るのは初めてだ。
水泳終わりの薄く濡れた黒髪がうねって華奢な背中に散らばっている。
髪の隙間からチラリと見える白い首筋を髪の毛から落ちた水滴がゆっくりと伝っていく。
(うわ、えろ…)
……って。
いや、違う違う。
違わないけど違う。言い訳をさせてくれ。
18歳男子たるものこれは当然の反応であって、いつも忍野をそういう目で見ているとかでは断じてない。むしろそういう目で見るなら国近とかの方が需要がある。
忍野は特別美人でもないし、気さくだがちょっと変わってる奴で……いや、もうやめておくか。変な目で見た上に無駄にディスるのは申し訳なさすぎる。
なんだか勝手に気まずくなってしまった。
やはり俺も寝てしまおう。
腕を枕にして横向きに頭をのせると、直ぐに眠気に襲われた。教師のそこまで発音の良くない英語をBGMに夢の中へと旅立ってゆく。
あまり覚えてないけど、忍野の夢を見た気がした。
(鉄壁の防御だって完璧じゃない)