サマー・サマー・イリュージョン
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忍野 苑という女について話そう。
*
あの女は変わってる。
普通の女ならビビるような態度をとっても全く動じないし、何より不快な感情を向けてくることが無い。
周りのボーダーの同い歳連中と同じように接しやすい部類に入るのだと思う。
だが、一度変な感情が刺さったことがあったな。
気付いて、だっけか。
その日初めて忍野に会った俺にはなんのことかさっぱりだったが、誰か気付いてやれる奴が近くにいればいいなとは思う。
だって、あの感情には僅かに寂しさが混じっていたから。
証言者:K
*
ああ、忍野は良い奴だよ。
初めて会った時、困っていた俺の事を助けてくれたんだ。
そんなに口数が多い奴ではないけど、話してみると案外気さくだ。
忍野とは会えば話す仲だが、彼女に対してどこか壁があるように感じる瞬間がある。
ここからは踏み込まないでくれ、というラインが口には出さずとも確実に存在しているのだ。
誰にでもそういうラインはあるのだろうけど、彼女はそのラインがかなり手前にあるように思う。
そのラインで彼女が何を守っているのか分からないが、あまりにも多くのことを秘密にするのは正直彼女自身の首を締めるだけのように感じてならない。
でも、俺は彼女を助けてやることは出来ない。
俺と忍野には壁がある。
証言者:M
*
忍野さんについては特に知らない。
1度しか会ったことないからな。
ただ、見た目も態度も地味目な女だったから、カゲと当真に挟まれて楽しそうにしている写真とのギャップには少し驚いた。
まぁカゲがあんなに気を許すくらいなんだから、きっと良い奴なんだろう。
俺は学校が違うから大して会う機会はないかもしれないが、またいつかじっくり話してみたいとは思うぜ。
証言者:A
*
忍野のことは彼女だと思っていたな、カゲの。
当真の嘘だった訳だが。
でも俺は思う、本当はこうなんじゃないかと。
カゲの彼女、と当真は嘯いたけれど実際は当真の方がそれに近い位置にあるんじゃなかろうか。
…なんて、ただの勘だ。
俺は忍野のことも、彼女達の関係も知らないから。
証言者:H
*
忍野は同じクラスの目立たない生徒だ。
俺は前後の席になって関わるようになったが、あいつは元々積極的に人と関わることをしない。
実際、忍野が自分からクラスメイトに話しかけるところはあまり見たことがない。
話してみると案外気さくな奴なのだから、少し勿体ない気もした。
良く言えば忍野は聞き上手だった。
毎日のように軽口を叩くようになり、俺が愚痴を零すことも多くあった。
忍野は程よい返事や相槌をしてくれるから心地よかった。
だけど、悪く言えば忍野は全くと言っていい程自分の事を話さなかった。
俺はあいつの事を、何一つ知らないことに気付いた。
忍野のことを知らない。
クラスに出席番号、気さくな奴で結構負けず嫌い、勉強と水泳が得意。
こんな表面的なことしか分からない。
何が好きで、どんな趣味があって、家族構成はどんななのか、何故社会のテストだけ苦手なのか、何も知らない。
俺は忍野のことを誰かに説明できる程、彼女の事を分かっていなかったのだ。
ミステリアスな女に興味を唆られる──とかそういう話ではない。
初めて会話した時からどこか変わった雰囲気の奴ではあった(放っておけないのも確かだ)だが、最近の忍野は目に見えておかしい。
何かに悩んでいることは確実なんだろうが、俺は未だに聞けないでいる。
証言者:T
(彼女に関する証言)