サマー・サマー・イリュージョン
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「はい、やめ!」
ペンを動かしていた手を止め、凝った肩をぐいっと伸ばす。
やっと長いようで短い50分間が終わり、教室内に集まったクラスがバラバラな生徒達はそれぞれ息をついている。
俺の隣の席にはこの教室に相応しくない女。
「どーだった?当真くん」
「…まぁギリいけるかな〜……多分。忍野は?」
「変なミスしてなければ満点かな。答え全部暗記するだけだったし」
覚えているだろうか?
俺と忍野は先週返却された期末テスト──それぞれ数学、社会──で赤点を取った。
俺は昨日まですっかり忘れていて、昨日の夜荒船に頼み込んで泣きそうになりながら勉強した付け焼き刃で再試に挑むことになったのだ。
なんとか最低ラインの点数は取れたと思う。というか、取れていなかったら荒船にボコボコにされる。
次々と生徒が小走りに退室していく(恐らく部活に所属しているのだろう)のを横目に、机の上の筆箱をだらだらと片付ける。
忍野も俺も部活には所属していないから、特に急ぐ理由はない。俺に関しては今日は再試ということで防衛任務をずらしてもらった。
「結果がどうであれ再試も終わったし、あと少しで夏休みだな」
「…ん、そうだね」
忍野は一瞬間を空けて返事をする。
「忍野は夏休みなんか予定あんの?」
「うーん…さぁ、分かんないな」
「あ、そういえば文化祭の準備の登校日とかあったよな。めんどくせぇ〜」
「そうだね」
「…忍野?」
かたん。
片付けを終えた忍野が鞄を肩にかけて立ち上がる。
「なに?…私、この後バイトあるからもう帰らなきゃ」
「…いや、なんでもねぇ。じゃあまた明日」
「うん、ばいばい」
ひらりと手を振って忍野はそそくさと教室を去っていった。
なんだ、あいつ。
夏休みの話題振った瞬間いきなり余所余所しくなりやがって、夏休み楽しみじゃねぇのかな?
よく分かんねぇけど、まぁいいか。
次会った時にでも聞いてやろう、俺が忘れてなければだけど。
(また明日が来るとは限らないと君は知っていた)