サマー・サマー・イリュージョン
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見られている。
めちゃくちゃ見られている。
24時間営業のコンビニ。
時刻は夜の11時を回った頃。
警戒区域付近という立地も相まって店内はガラガラであった。
夜のシフトは暇な割に時給が高い為かなり気に入っている。
だが、この時間に来店する客が0ということはない。
「いらっしゃいませ〜」
来店を報せるベルに反射的に口が動く。
来客は2人組の男子高校生のようだ。
制服を見るに片方は進学校の六頴館、もう片方は多分私と同じ学校かな(シャツにパンツというジャケット無し状態なので判断しかねる)。
こんな時間に違う学校同士でこのコンビニに来るということはかなりの確率でボーダーの人間だろう。
別に毎回こんな風に客をチェックしている訳ではないのだが、1時間ぶりの来店とかになってくるとつい見てしまうのは許して欲しい。
どうやら2人は買うものが決まったらしく、レジに向かってきた。
「お預かりします」
カゴをレジに置かれ、マニュアル通りの手順で会計を進める。
そしてふと目線を上げて、すぐに下げた。
(えっ…何、すごい見てない?目合っちゃったよ)
2人組の普通校の方(仮)がそれはもう穴が空くのではないかというくらい見つめてくるのだ。
レジの会計時にこちらを見てくる客もいるにはいるが、これは流石に見すぎだ。
もしかしてさっき私が見ていたことがバレてやり返されているのか…?
「は、849円になります」と会計を告げると共に、自分の気のせいなことを期待してちらりと見上げると、また目が合ってしまった。
バッと顔を下げる。
…気のせいじゃなかった。
本当になんでこんなに見られてるの。
というか隣の進学校(仮)も「そんなに見たら失礼だろ」とか何とか言ってくれ。そんな我関せずみたいに…。
差し出されたお金を精算し、お釣りとレジ袋を受け渡そうとした時、
「お前、」
「は、はい!!?」
話しかけられた!
「彼女だな、カゲの」
「…は?」
…………………は?
え、どういうこと。
じっと見つめられていきなり話しかけられたかと思ったら、カゲの彼女、とは?
私が固まっていると、進学校(仮)が「ああ、道理で見たことあると…」と勝手に納得している。
いやいや、意味がわからない。
お前と会ったことはないぞ。
「あの、一体どういう…」
「?あれ、違うのか?お前だろう、これは」
普通校(仮)がスマホをずいっと私の前に差し出した。
そこには、お好み焼きを焼く影浦くんとそれを横で褒め称える私、その手前でピースをしている当真くんが写っていた。
これはどう考えてもこの間3人で影浦くんの家でお好み焼きを食べた時のものだ。
確実に1人だけカメラ目線な当真くんの仕業だろう。
こんな写真いつの間に…。
というかカゲというのは影浦くんのことだったのか。
カゲの彼女………
「いやいや、彼女じゃないんですけど」
一体どこ情報だ。
隣に写っていただけで彼女には見えないだろうし。
すると、進学校(仮)が一言。
「なんだ、やっぱり当真の嘘じゃねぇか」
当真くん!!!!!!
「…完全にデマです、それ。すみません…」
「いや、悪かったこっちこそ。気になっていてな、グループに突然送られてきたから」
「えっ、グループ」
「ああ、同級生のグループチャットに当真が「カゲの彼女♡」って送ってきてな。カゲは否定していたが、こんな仲良さそうな女子二礼以外初めて見たから判断しかねたんだ」
当真くん…!!!!!!!
なんかもう全部当真くんの所為じゃないか。
個人ならまだしもグループで自分の写真が晒されているだなんて…。
明日学校で会ったら締めておこう。
「ええと、マジで悪かったな…」
「いや、大丈夫です…悪いのは全部あのリーゼントなので」
本当にこの2人に否はないのだが、「お詫びにこれを」と先程会計を済ませたばかりのプリンを袋から出してレジ台に置かれた。
「えっいや、結構で…」
「まぁ受け取っておいてくれ、えーと…忍野さん」
胸元の名札を見たらしい進学校(仮)が私の名を呼んだ。
それで彼の中では完結してしまったのか、「穂刈、そろそろ行くぞ」「ああ」とレジ袋とお釣りを受け取りお辞儀をして去っていった。
…なんだったんだ一体。
相手の名前は一切知らないのに一方的に名前と顔を覚えられてしまった。2人の呼び名は(仮)のままだ(まぁ片方は苗字で呼ばれていたから分かるのだが)。
というか、画像の削除をお願いするのを忘れた。
手元に残ったのは彼らが置いていったプリンだけ。
「……。」
一組の客の所為──というか当真くんの所為で濃かったシフトを終えた後、プリンは美味しく頂いた。
当真くんには是非この何倍ものプリンを奢って頂きたい所存である。
(夜のコンビニで邂逅を果たす)