一年目
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強すぎる力にされるがまま、私は地に足がつかないままでいた。
「うわっ!」
ギュンっと、直角に曲がりジグザグの階段に沿って引っ張られる。
嗚呼、また暴走してしまった。
私の術式は、呪力の強い方に必然と惹かれてしまう。
もちろん制御することは可能だが、つい最近まで一般JCだった私には容易ではない。
今も頑張って、術式を解除しようと奮闘している。
意識をそっちに向けていると、急に重力を感じ劣化した床に叩きつけられた。
解除できた、もしくは反応しなくなったって事は近くに呪霊がいる証拠。
肝心なところを案内しないカーナビの様な性質の私の術式は、この特徴だけ今のところ役に立ってる。
打ち付けられ痛む身体に無理をさせ、横になっていた身体を起こす。
同時に、くすんだ窓ガラスから覗く陽射しが途絶えた。
本能的に思った。
あ、こいつが親玉だ、と。
蛇に似た体躯で、部屋の端から端まで何度も折り返しているほど長い。
何度も繰り返すが、準一級の私の本来の実力は三級程度。
目の前のやつは一級。
これは……無理だ!
第一、腰が抜けてしまい立つことができない。
仮にも呪術師だと言うのに情けない。
「ゲコ」
そうだ、とも取れる相槌っぽい鳴き声。
振り向くと、親玉には劣るが通常サイズよりも遥かに大きいカエルがいた。
カエルは私を見ることもなく長い長い舌を出して、親玉に巻き付ける。
そして____食べた。
正確には丸呑みにした。
「ゲコ」
あ、今度はご馳走様に聴こえる。
いや、そんなことはどうでもいい。
コイツ、どっから来た?
「弦月さん、怪我はない!?」
脳内に疑問符しかないまま呆然としていると、カエルの後ろから現れた夏油くん。
どうやらこのゲコゲコは彼の呪霊のようだ。
「別に……」
釈然としないが、彼が来たことで安心した自分がいる。
差し出された手を取り、グイッと引っ張られ多少ふらつきはすれど立つことができた。
「__ありが、」
「うっわ、お前受け身出来てねぇじゃん」
ダッセ、と悪態をついたのは他でもない五条くん。
裏から回ってきたらしく、窓からの登場。
小馬鹿にした様子で私の足を指さす。
硬い木の床に打ち付けられたせいで、大きな痣ができていた。
さっきまで痛みを感じなかった筈なのに、怪我をしたと認識した瞬間痛み出す。
この現象、あるあるだと思うからなんか病名があってもいいはずだ。
腰を曲げ痛みを和らげようとさすっていると、反対側に進んだ硝子がやって来た。
「これぐらいならすぐに治せるよ」
反転術式が得意な硝子には、入学してから頼りっぱなし。
慣れた手つきで治療してくれた。
「さ、あの言い争ってるクズどもは置いていこうか」
知らない間に喧嘩を始めた男子に構わず、二人で仲良く補助監督さんの元に向かう。
後でちゃんとお礼言わないと。
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