テレビゲームと丑三つ時
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「新! 談話室のでかいテレビで桃鉄しよ!」
「二人で??」
ゴリゴリのパーティーゲームをたったの二人でする意味はあるんやろうか。
目の前には俺の唯一の同級生、瑞希ちゃん。
使い慣らされたSwitchと大量のお菓子が入ったスーパーの袋を持っている。
格好は部屋着なんやろう。
いつも着ている黒一色の制服を脱いで、適性サイズよりも遥かに大きいパーカーが一枚。
「上級生がいない時の下級生ははしゃぎまくるって相場では決まってんのよ」
彼女の言い分は分からんでもない。
俺も小学校の頃、修学旅行でいない六年生がいつも使ってた場所があって、その日だけ遊んだ記憶がある。
まぁ、明日は緊急じゃない限り任務も入ってへんしええかな。
自室からスマホだけ持って、先を歩く彼女に続く。
「準備するから飲み物用意して〜」
俺の顔も見ず、着々とゲームの準備を始めていた。
談話室に隣接しているキッチンの冷蔵庫からめぼしいものを探す。
「コーラ、サイダー、オレンジ。どれ?」
サイダー!と素早い返事。
あれは予め決めてはったな。
プシュッと炭酸独特の音を立てキャップを開ける。
めんどくさいから俺も同じのでええか。
棚からグラスを取り出して、なるべく同じ量になるよう注ぐ。
こぼさないよう注意を払ってソファテーブルに持っていくと、テレビはもうゲーム画面。
「はやくやるよ新社長」
「気ぃ早すぎんか瑞希社長」
「クソですわーーッ!」
叫び声と共にジョイコンをぶん投げる彼女。
勝者はなんとコンピューター。
いっちばんつまらんやつやぞコレ。
白熱していたせいで途中から確認するのを忘れていたのは時間。
今何時なんや……午前二時十三分!?
巫山戯て年数増やしたのがあかんかったか。
「流石にもう寝らんと不味いんちゃう?」
「確かに、私明日……と言うか今日任務だし」
「……は」
任務あるのにこんな時間までテレビゲームするやつおるん?
おったわ、ここに。
欠伸をした彼女はさっきまでキチンと座っていたソファに寝っ転がる。
もうここで寝ると言わんばかりだ。
「ちゃんと部屋戻らんとあかんよ」
俺と違って戦闘型の術式の瑞希ちゃんは、俺と比べて任務数は多い。
こうして遊ぶのも久しぶりなんやろう。
片付けぐらいは俺がしたろ。
そう思って飲み干されたグラス、空になった袋を音を立てないように片付ける。
つけっぱなしのテレビも電源を切って、わざわざ持ってきたSwitchも片付けた。
問題は完全に寝てしまった瑞希ちゃんをどうするか。
これは起きひんで……俺には分かる。
「しゃあないな……」
失礼しますよっと心の中で許可を取り抱き上げる。
寝ていたせいで強制的にお姫様抱っこ。
一度だけ訪ねたことがある部屋の前に着き、多少の罪悪感はあれど扉を開いた。
俺と違う女子らしい部屋。
ただ、世間一般的な女子の部屋には筋トレ器具は広がっとらん。
踏まないように部屋の奥へ行き、いつも寝ているであろうベットに彼女をおろす。
少し肌寒くなったせいか既に毛布が出ていたので、起こさないように体を隠した。
「これだけ見たら、ただの女子高生やな」
術式を持って生まれた俺たちは、世間一般に当てはまるとは到底思っていない。
せやけど、規則正しい寝息の彼女を見ると俺までただの男子高生になった気分になる。
「もし普通の男女やったら」
俺はここで手を出せているんやろうか。
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