序
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通常よりも太いストローを吸うと、ぽこぽことタピオカが上がってくる。
二、三粒入れたところで口を離し独特の食感を噛みしめながら、
そこそこの行列ができる店から出て周りを見渡す。
探していた人物はいとも容易く見つけられた。
ミニスカート、ダメージジーンズ、オフショルダー等々で着飾った世の女性に混ざる狩衣。
あそこだけ平安時代にタイムスリップしたかのように思われる。
「あの人ヤバくない?」
「確かにここ京都だけどさ〜」
やっぱり車で待ってて貰えばよかった。
女だらけの中に高身長の男がいるだけでも目立つのに、時代錯誤の格好ときた。
気にしてない人は皆スマホで自撮りに夢中になっているだけ。
「でもさ、あの人顔はカッコよくない?」
「あっわかる〜!」
「なんであんなカッコしてんだろ」
本人に聞かれてないと思って言いたい放題だな君たち。
確かに、決して派手ではないが整った顔立ちではある、と私も思う。
だが、今はそんなことどうでもいい。
今彼の元に向かえば私も注目の的となる。
それはできるだけ避けたい。
どうしようか、と足を止めてタピオカに集中する。
まぁ、舌鼓を打っていても解決策なんか出てくる訳が無い。
仕方ないなと軽い溜息をついて、気は進まないが注目の的に向かって歩いていった。
あと一メートルという所でようやく私の存在に気づいた彼は口を開いた。
「思ったより早かったな」
「最近は回転率が上がってるんだよ」
主な原因は平日で人が少ないことだけど。
制服の女たちはおそらく学校帰り、私服は大学生だろう。
普段「痩せた〜い!」なんてほざいてそうな奴等ばかり。
摂取カロリーと消費カロリーが比例してないだけだよ馬鹿。
心の中で悪態をつきながら歩き、少し離れたところにある黒い車に乗り込む。
「他にどこか寄るところはありませんか?」
「直帰で大丈夫です」
ストローを咥えた私の代わりに加茂くんが答える。
エンジン音と共に振動を始める車。
つい先程まで居た店を窓越しに眺め、数多の女どもと低級霊に別れを告げた。